授業で聴くキリンビール社長の経営観 – 早稲田大学

授業で聴くキリンビール社長の経営観

早稲田大学では、企業や公的機関、NPOなどの寄附により運営される寄付講座を年間20科目以上公開しています。早稲田ならではの幅広い人脈を活用し、第一線で活躍する実業家や政治家、クリエイターなどがゲストスピーカーとして登壇しています。

2019年11月20日、商学部設置科目、「株式会社カインズ寄附講座 マーケティングの革新1(担当教員:恩藏直人教授)」では、キリンビール株式会社 代表取締役社長 布施 孝之 氏を講師に招き、布施社長の経営観とキリンビールのマーケティングについて授業が行われました。

キリンビール株式会社 代表取締役社長 布施 孝之 氏

授業は、布施社長のここ10年のキャリアを辿ることで展開されました。2008年から2年勤めた大阪支社長時代について、「最初の1年は思うように結果を出せず、1年目の末には支社の従業員全員と面談し、お詫びしました。2年目に同じことをしていてはダメだと感じ、“新しいビールを飲むことで大阪中の人々を幸せにしたい“というコンセプトに基づき、主力の商品を絞り集中する戦略をとりました。現場の社員も自発的に頑張ってくれて、たとえば当時2年目の社員は1日で123件のお店を周るという難しい目標を達成しました。こうした若手の頑張りがベテランへ浸透することで、組織として同じベクトルへ動きだし、最終的にとんでもない力へと変化しました。そのような中、定年退職する社員から、「最後にすばらしい仕事ができました」との言葉をもらい、リーダーとは人生を幸せにできる素晴らしい仕事であると実感しました」と語りました。

2010年からは、キリングループの小岩井乳業の社長に就任。「まったく違う業界で実行しようと決めたことは、大阪支社長時代に知った、”全社員のパワーを最大限発揮させること”です。その矢先、2011年3月に先の震災が起こりました。色々な商品の供給が滞り、多くの困難に直面しましたが、有事の時こそ会社の社会的意義や存在意義を実感して、どこの会社よりもお客様のことを考える会社になろうと決意しました。そのため、お客様のニーズに合わせて商品の集中化、重点化を行い、利益率の高いヨーグルト商品の売り上げを130%増へと上げることができ、結果として社員のやる気もアップしました。企業の成長や変革の原動力は社員のマインドです。そうして頑張って働く社員を幸せに豊かにすることが自身の経営マインドになっていきました」

授業教室は約300人の学生でほぼ満員

そして2015年にキリンビールの代表取締役社長に就任し現在に至ります。「現在は”布施改革“と呼ばれる改革を進めています。従業員の豊かな人生のため、元気なキリンを次世代へつなぐことを考えています。もちろん、お客様のことを一番に考えていて、そのために現場が主役で本社はサポートする役目に周りたいと考えています。どの会社にも立派な理念があり、よく額縁などに飾っていますが、キリンでは、そうした理念を”“額縁から出そう”としています。理念は現場の社員全員からにじみ出てこそ本物ではないでしょうか」と、これまでのキャリアで得た見地から改革を進めています。

また、キリンビールのマーケティングの変革を3つ掲げており、「1.20ブランドから7ブランドへと投資するブランドの絞り込み、2.競合との比較による優位性ではなく、お客様基軸での判断、3.10年、20年後の社員に資産を残すブランド育成の強化を実行しています。CSV(Creating Shared Value:企業と社会の共通価値の創造)の考え方は、日本に昔からある近江商人の“三方よし”に近いと感じています。キリンのCSV経営では、お客様のことを一番考える会社として、世のため人のためになること、そして同時に儲けることを目標としています。お客様の豊かな食生活に貢献し世の中に笑顔と幸せをもたらしたいです」と語りました。

その後の質疑応答では、学生からの質問に答えました。人とのコミュニケーションで心がけていることはとの質問に、「コミュニケーションは受け手に100%権利があります。“伝える”と“伝わる”には違いがあり、リーダーとして違いを意識しています。また、多くの会議や打ち合わせでは、その場の空気感があります。その場の空気を大事に意識していくと、コミュニケーションにおいて、より豊かになっていくと思います。人1人の力は限られていますが、多くの人々が集まると大きなパワーを発揮できるのです」と答えました。

最後に学生へのメッセージとして、「リーダーとは、人を通して事を為す存在です。学生時代は勉強も大事ですが、人より謙虚だったり熱意があったり、EQ(心の知能指数)を伸ばしてください。リスクをとらない人は何もしない人。みなさんは早稲田生らしく、何にでもチャレンジしてほしい」と締めくくり、約300名の学生からの大きな拍手と共に授業は終了しました。

(左)株式会社カインズ 土屋裕雅会長、(右)恩藏直人教授
布施社長と講座担当の恩藏教授は商学部生時代のゼミ同期でもあります

寄附講座を開講している株式会社カインズの土屋裕雅会長は、寄付講座の意義として、「小売業を含む商業は、私たちにとって身近な存在でありながらも、知るほどに奥が深く興味深いビジネスです。しかしながら、その魅力に触れられる機会は、あまり多くありません。私どもの寄附講座では、ビジネスの第一線で活躍されている皆様から、商業の魅力を語っていただきます。本講座を通じて、受講生の皆様にとって、多くのメンターとの出会いが生まれ、未来の選択肢が広がる機会になることを願っております。」と述べています。

(広報課K)

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