「憧れを持ってもらえるような唯一無二のチームを目指したい」
スポーツ科学部 3年 千北 佳英(ちぎた・かえ)
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女子部の発足記者会見が行われた後、記念撮影をした思い入れのある大隈記念講堂前にて
2024年4月に始動した早稲田大学ラグビー蹴球部女子部(以下、女子部)。発足のきっかけとなったのは「早稲田でラグビーがしたい」という学生の強い思いでした。声を上げたのは千北佳英さん、國谷蘭さん(政治経済学部3年)、寺谷芽生さん(スポーツ科学部3年)、岡本美優さん(スポーツ科学部2年)の4人。その中の1人、現在女子部の主将を務める千北さんは、5歳からラグビーを続ける中で女子ラグビーの裾野を広げ選択肢を増やしたいと感じるようになり、女子部設立に向けた始動に尽力したそうです。そんな千北さんに、ラグビーの魅力や女子部発足の経緯、今後の目標について聞きました。
――ラグビーを始めたきっかけや魅力を教えてください。
5歳の時、元々プレーしていた父や兄に影響を受けて、世田谷ラグビースクールに通い始めました。実は小学校4年生までラグビーが嫌いで(笑)。男女関係なく試合に出るメンバーが選出されるので競争が激しく、弱気になることもよくあり、泣いて帰ることもありました。そんなとき、チームのコーチから「自信を持っていいんだよ」と言われたことで試合でも自分らしいプレーができるようになり、どんどんラグビーが楽しくなっていきました。
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世田谷のグラウンドでコーチから指導を受けている様子。世田谷ラグビースクールに通っていた小学校6年生の時には全国優勝を果たした(左から2番目が千北さん)
ラグビーの魅力は「One for All, All for One」という言葉に詰め込まれていると思います。これほどまでに誰かのために体を張ることもないと思いますし、プレーで痛い思いをしているからこそ、チームメイト同士で精神的に強いつながりを感じられます。また、グラウンドに入る時のみんなの勇ましさと、グラウンドを出る時のファミリーのような温かさのギャップも魅力です。他にも、ラグビーは飛ぶ力や投げる力、走る力や蹴る力など総合的な身体能力や考える力が必要で、突き詰めようと思えばどこまでも突き詰められるんです。そういった競技の奥深さも、これまでラグビーを楽しんで続けられた理由ですね。
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中学時代に東京都選抜として出場した、東日本大会で優勝した時の写真(右端から、小学生の頃試合をきっかけに仲良くなった國谷さん、千北さん)。中学生からは、東京都選抜チームと世田谷ラグビースクールで並行して練習をするようになった
――早稲田大学スポーツ科学部に進学した理由を教えてください。
実は他大学への進学も考えていたのですが、悩んでいた時に父から早稲田大学スポーツ科学部を勧められました。どんな学部か調べてみると、スポーツをさまざまな視点で学べることがとても楽しそうだと思ったんです。競技だけではなく勉強も頑張りたいという自分の人生の軸があるので、ラグビー以外にも視野を広げるために、早稲田大学を選びました。ビジネスの視点でスポーツを捉えることに興味があったので、現在はスポーツビジネスコースで勉強しています。
――入学前から女子部を作りたいと考えていたのですか?
考えていなかったです。ただ、大学でもラグビーを続けようと思ったときに、大学で女子ラグビーをやれるところは本当に少なくて、高校で辞めてしまう子がたくさんいることが課題だと感じていました。そもそも女子ラグビーにはプロがなく、社会に出たときは皆さん仕事をしながら競技を続けていくしかありません。
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インタビューを受ける千北さん
ですから、女子ラグビーの人口を増やすためには将来を見据えることができる選択肢を増やすべきだ、ということはずっと考えていました。そこで、プレーヤーとしても社会人としても活躍できる女性を輩出するようなチームが早稲田大学にできれば、大学でもラグビーを続けたい人が増えると思い、女子部を作りたいと考えたんです。
――では、どういった経緯で女子部は始動したのですか?
元々知り合いだった蘭と芽生も同じ早稲田にいることもあり、3人で、「女子ラグビー部を作りたいね」と入学後に話していたのですが、私たちよりも前に女子部を作りたいと思っていた校友の女子ラグビー選手がいたんです。その方や早稲田大学で女子ラグビーをしている7~8人に力を借り、早稲田大学ラグビー部出身で、現在女子部責任者でもある柳澤眞さん(2003年教育学部卒)とつながることができました。
今の女子ラグビー界に文武両道を実現できるチームを増やしたいこと、そのチームを早稲田に作ることでラグビーをする女子に新しい選択肢が増えること、大きな価値のある赤黒(※1)を着る機会すら女子は与えられていないことを、柳澤さんに何度も伝えました。その結果、私たちの思いが伝わって、柳澤さんがラグビー蹴球部や大学側と交渉を重ねてくださり、2024年の4月から女子部がスタートしました。私たちは勉強も競技も高いレベルで頑張れる、憧れを持ってもらえるような唯一無二のチームを目指しています。
(※1)早稲田大学ラグビー蹴球部で試合に出場する15人しか着ることのできない伝統ユニホーム。
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2019年9月、高校時代、横河武蔵野アルテミ・スターズユースに所属していた千北さん(右)と、別のチームに所属していた寺谷さん(左)との一枚。武蔵野陸上競技場で行われた交流戦の記念写真
――これまでの活動の中で印象に残っている試合や、出来事はありますか?
印象に残っている試合は、2024年5月に行われた「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024昇格大会」(※2)です。女子部で初めて勝利した試合で、すごく価値のあるものですし、本当にうれしかったです。
(※2)女子7人制ラグビー最高峰の大会である、「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」への出場権を懸けた大会。
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昇格大会で初勝利し、チームメイトと抱き合う千北さん(左から3番目)
また、初心者の部員4人も含めた女子部の初練習で、初めてタックルした時に痛くて泣いている部員がいたのも印象に残っています。普通に生活していて何かに思いっきりぶつかったり、転んだりすることってあまりないですよね。それでも「ラグビーをやりたい」と思って入部してくれて、その後も貪欲に練習に取り組んでいる姿が本当に刺激になっているんです。そういった部員がいるからこそ、このチームも成り立っていますし、オリンピック出場経験を持つ横尾千里ヘッドコーチ(2015年社会科学部卒)の丁寧な指導のおかげで、今では経験者と初心者の区別がつかないと周りに言われるぐらい上達しています。
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女子部メンバーとの写真。普段の練習場所、上井草グラウンドにて
――最後に、これからの目標をお願いします。
チームとしては、2025年に開催される「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2025昇格大会」で優勝して、2026年から太陽生命ウィメンズセブンズシリーズに参加することが目標です。もう一つは、大学日本一を決める「大学セブンズ(Women’s College Sevens 2025 第12回大学女子7人制ラグビーフットボール大会)」で日本一を目指したいです。
個人としては、日本代表に選ばれるチャンスがあればつかめるように日々努力していきます。主将としては強く引っ張っていくタイプではないのですが、試合中はとにかくみんなが頑張れるようにプレーでチームを鼓舞して、ピッチ外では全員がラグビーに集中できる環境を作れるような、縁の下の力持ちになりたいです。
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太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2024昇格大会にて、静岡エコパスタジアムでプレーする千北さん
第886回
取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
教育学部 3年 渡辺 詩乃
【プロフィール】
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部員の岡本さん(左)とシンガポールに行った時の一枚。世田谷ラグビースクールの頃から共にプレーし、幼なじみで妹のような存在だそう
東京都出身。田園調布雙葉学園高等学校卒業。趣味は旅行で、2024年7月にはシンガポールに行った。オフの日には家族とおいしい水を汲む目的で、富士山に行ったことも。部の公式ウェブサイトに掲載されている特技は片付けだが、部員には疑われているそう。
早稲田ラグビー蹴球部女子部公式Webサイト:https://wurfcwomen.com 公式X:@rugby_waseda 公式Instagram:@wurfcwomen