飲酒・薬物問題にどう向き合う? 早大人気サークル幹部の決意と学生部の願い – 早稲田ウィークリー

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飲酒・薬物問題にどう向き合う? 早大人気サークル幹部の決意と学生部の願い

サークルメンバーや友達との楽しい外食などで飲酒の機会も増える学生生活。飲酒は急性アルコール中毒などで搬送されるといった危険も伴うからこそ、どんな飲み会が行われているのか、気になるところです。また、違法薬物や危険ドラッグについては、人生を狂わせるほど怖いもの。過去には早稲田大学においても、学生が飲酒問題や薬物所持で厳しい処罰を受けたり、逮捕されたりした事案が発生しています。そこで今回は、早大公認サークルの中から放送研究会、和太鼓サークル・魁響、企画サークル・Walkin’と3つの人気サークル代表者が集い、飲酒・薬物に対する座談会を実施。飲酒事故を防ぐためのアイデアや、薬物を断る心掛けについて話し合いました。また、普段サークルに対する指導を行っている学生部から、飲酒や薬物について気を付けるべき点、大学における対応などを聞きました。イッキ飲みや急な多量飲酒が命の危険にまで及ぶこともある飲酒や、危険な薬物についてもきっぱりとNOと言えるようにし、楽しいサークル活動や学生生活を送りましょう。

INDEX

▼1.急性アルコール中毒での搬送者数は20代が最多! 各サークルが実践する飲酒事故を防ぐ工夫と心掛け
▼2.たびたび報道される「大学生の薬物所持事件」 薬物の誘いをキッパリ断るためには?
▼3.お酒の飲み方や薬物への危機意識を忘れずに、皆が楽しめるサークル活動を

1.急性アルコール中毒での搬送者数は20代が最多! 各サークルが実践する飲酒事故を防ぐ工夫と心掛け

面白い企画を立てて実行するWalkin’、和太鼓を勇壮に演奏するサークル魁響、各サークルの公演などの舞台を支える裏方を引き受ける放送研究会。この3つのサークルは、新入生対象には飲み会を実施せず、食事会などで歓迎しているといいますが、20歳を過ぎたら飲酒も楽しんでいるようです。人数もサークルの活動もさまざまですが、普段どのような飲み会をしているのでしょうか?

Walkin’ 幹事長 教育学部 3年 三村 泰雅 (みむら・たいが)
魁響 幹事長 社会科学部 3年 福田 涼馬(ふくだ・りょうま)
放送研究会 副幹事長 商学部 3年 清水 厚希(しみず・あつき)

(左から)三村さん、福田さん、清水さん

早大人気サークルと考える飲酒問題 無理な飲みをしない・させない一人一人の意識が大切

――サークルの飲み会の雰囲気について教えてください。

三村:週1〜2回の活動の後に、20人ほどのメンバー皆で飲みに行きます。活動では面白いとっぴな企画をしているものの、実はしっぽり飲みたい人が多くて。コールが聞こえてくるようなお店は避けるなど、居酒屋選びにこだわりがあります。

福田:練習後に4〜5人のグループで居酒屋に行くことが多いですね。単独公演後の打ち上げには、皆で行きます。飲み会では、お酒をどんどん頼む人もいれば全く飲まない人もいますよ。飲み放題でお酒を頼まない人には「ソフドリで元を取れ!」と言っています(笑)。

清水:放送研究会も、ワイワイ飲みたい人とそうでもない人で差がありますね。うちは500人規模のサークルなので、全体での飲み会は年に1度の合宿くらい。普段は、音響や照明といったチームごとに仲のいい5〜10人で飲んでいるのが現状です。

放送研究会(左)とWalkin’(右)の飲み会の様子。普段の活動後に参加したいメンバーで行き、飲める人は食事とともにお酒も楽しんでいるという。飲み会ではたわいない話でも盛り上がり、さらに仲が深まるのだそう

――皆が楽しめる飲み会づくりのため、工夫していることはありますか?

福田:イッキ飲みやお酒の強要って、「全体に合わせろよ」みたいな空気感から生まれると思うんです。それを助長しないためには、飲む人も飲まない人も孤立しないバランス意識が大事かなと。僕たちの場合は、最初は飲む人と飲まない人でテーブルを分けてスタートし、途中で両方が均一に混ざるように席替えしています

清水:過去の合宿では、お酒は自分で注ぐことをルールにして、かつ、お酒をある程度飲める人にはリストバンドをつけてもらうなど、無理な飲み方をしない・させないルールを作っていました。

放送研究会の合宿では大人数になるからこそ、お酒の場では目が届くように工夫をしているという

また、飲み会の場を冷静に見られる人がいると安心ですよね。例えば「お前も飲めよ」と言い出した人をやんわり制したり、ベロベロなのに飲みたがる人に水を渡したり…。合宿では、先代の三役が一切飲まずに周りを見てくれていました。

三村:それでいうと、僕らのサークルも三役の誰かが必ず飲み会の最後までいるのが暗黙のルールになっていますね。僕らは特に工夫などなくおのおののペースで飲んでいるんですが、勝手にベロベロになっちゃう子もまれにいて。そんなときは、三役や誰かが必ず最後まで面倒を見て、「よくないぞ」と注意しています。

――急性アルコール中毒による搬送者は20代が最多というデータも出ています。大学生の飲酒事故を防ぐには、どんな心掛けが有効だと思いますか?

出典:東京消防署資料から

福田:イッキ飲みをしたがる人は、調子に乗りやすくて目立ちたがりなタイプが多い印象です。その人たちに1番効くのが、興味を示さないこと。誘われても、「こっちで喋っとこうぜ」と無関心を貫くことで、会話に戻ってきてくれます。

面白いことを真面目に考える、をモットーに活動しているというWalkin’

三村:僕たちは、もし誰かがお酒やコールをあおってきたら「それ、おもんないよ(面白くないよ)」と言っています。すると「おもろくないか…」とシュンとしてやめてくれるんです(笑)。普段から面白い企画を出そうと頑張っているサークルだからこそ、効果的なのかもしれません。

清水:それいいですね(笑)。あとは勝手に飲んでつぶれてしまう人がいたら、周りが注意して止めてあげることも必要ですよね。合宿などでは、お酒の量以上に水を用意しておき、お酒の合間に意識して水を飲むようにするなどの工夫も大事だと思います。

2.たびたび報道される「大学生の違法薬物所持事件」 違法薬物の誘いをキッパリ断るには?

次のテーマは、危険な違法薬物について。違法薬物は良くないものと分かっていても、なぜ使用してしまうのか、使用しないためにはどうするべきか、話し合ってもらいました。

正しい知識を身に付けること、誘われたら縁を切るくらいの覚悟も必要

――学生が薬物に走ってしまう背景には、どんな要因が考えられるでしょうか。

三村:以前、知り合いの知り合いが違法薬物を使ったらしい、といううわさを聞いてとても驚きました。こういう広がりようを聞くと、身近な人がきっかけで手を染めてしまうこともあるのではないかと思います。

清水:確かに。例えば「痩せる薬です」という広告を見たら怪しむけれど、仲のいい先輩から勧められたら信じてしまう人もいそうですよね。身近な人からの紹介に加えて、そのときの悩みや精神状態も要因になるのではと想像します。

違法薬物はいけないもの、ということは分かっているはず。それでも手を出すというのは周りの環境もあるのかも、と話す福田さん

福田:「違法薬物は危ない」という認識はあっても、具体的な危険性はイメージしにくい気がします。売人は「合法な国もある」「言うほど危なくない」と言葉巧みに誘ってくるはずなので、知識がないと怖いもの見たさで引き込まれる人もいるのかなと思います。

――薬物の誘惑を断るには、どんな意識や工夫が必要だと思いますか?

清水:危険性に加えて、薬物の通称や見た目について学べる機会があるといいですよね。「ドラッグです」とストレートに言われなければ、薬物だと分からないこともありそうです。

一度手を出すと止めるのが難しいという違法薬物。どんな人からの誘いでも断ることが大事

三村:最近は高田馬場にある量販店でも、大麻草から抽出した成分で製造するCBD(カンナビジオール)の商品を見かけますよね 。CBDグミ、CBDコーヒーなど、商品は合法でも薬物を身近に感じやすくなっていると思います。僕自身は、信ぴょう性が明確でないものは信じないと決めています。

福田:自分を守る意味では、違法薬物の誘いを受けた相手とは縁を切るくらいの覚悟が必要ではないでしょうか。違法薬物を勧めるような人とはその先も付き合えないはずだと思います。

 

3.お酒の飲み方や違法薬物への危機意識を忘れずに、皆が楽しめるサークル活動を

座談会では、普段サークルに対する指導を行っている学生部学生生活課の城座課長に飲酒・薬物について、過去にあった事例や学生部での対応、またそれらが及ぼす影響について話を聞きました。

早大学生部から学生へ伝えたいこと 実例から考える飲酒事故や薬物乱用に対する対応

学生部 学生生活課 課長 城座 俊輔(しろざ・しゅんすけ)

城座イッキ飲みなど急な多量飲酒によって、早稲田大学でも学生が亡くなっている事例があることを知っていますか? お酒は、飲み方次第では命を落とす危険があります。

20歳未満飲酒や飲酒の強要が発覚すれば、学生個人には懲戒処分を、サークルには厳しいペナルティーを課すケースも。また、奨学金制度を利用している場合は受給資格を喪失し、返金義務が生じる場合もあり、家庭の経済に多大な負担を強いることによって学業の継続が難しくなることもあります。

次に挙げるのは、今までに早大のサークルで実際に起きた事例とその対応です。また、全ての公認サークルに「飲酒に関する誓約書」を毎年提出してもらっています。

※いずれの事例においても、サークル員全員の所属学部にて事実確認の面談・指導を行います。また、処分や指導内容を保護者等にも通知します。

【事例1】
飲み会での20歳未満飲酒が常態化しており、再三の指導にもかかわらず、違反行為を繰り返した。
→無期限のサークル活動停止。次年度のサークル公認資格継続を取り消し。

【事例2】
学生会館の部室に酒類を持ち込み、飲酒の上、館内で迷惑行為を働いた。
→無期限のサークル活動停止。次年度の部室利用を認めない。

【事例3】
合宿中に悪質な危険行為(罰ゲームでのイッキ飲みや過度な飲酒)を行い、サークル員が救急搬送された。
→無期限のサークル活動停止。

「飲酒に関する誓約書」

城座飲酒事故は自分だけでなく、家族、被害者、場合によっては遺族など多くの人の人生を狂わせてしまうのです。周りの人が悲しむ顔を今までも面談などで目にしてきました。私たちは皆さんを罰したいわけではなく、そのようなことを経験してほしくない、守りたいと考えています。

一方、違法薬物の場合は、日常生活に唐突に忍び寄って来るのが怖いところです。また、仲の良い知人に声を掛けられるケースが多いのですが、断固として拒絶する勇気を持ってください。興味や勢いで薬物に近づかないでください。違法薬物の所持や使用(※)は、人生への影響があまりに大きいものです。学内では退学を含む懲戒処分、学外でも逮捕という大きな代償を背負うことになります。それを学生生活だけでなく生涯意識し続けてほしいです。

(※)2023年12月、大麻取締法改正案が可決。大麻から製造された医薬品の使用が可能になった一方で、既に禁止されている大麻の所持・譲渡に加え、使用も禁止とされた。

学生として危険な飲酒や違法薬物にどう対応する? 安心・安全で楽しい学生生活のために考えよう

――今回の座談会企画を終えての感想や、今後のサークル活動に生かしていきたいことを聞かせてください。

三村飲酒事故を防ぐには、自分や誰かの人生に及ぼす影響を知ることが重要だと感じました。また、学生部の「学生を守りたい」という言葉も印象的でした。学生としてはペナルティーに目が向きがちですが、罰則の根底にある大学側の思いを再認識できました。

清水:サークルのメンバーを守るのは三役の役割だと改めて感じて、気が引き締まりました。それぞれの人生を狂わせることがないように、飲酒事故の危険性を頭に入れてお酒と上手な付き合い方をしていきたいです。

福田:もしもイッキ飲みやコールなど危ない場面に出会ったら、今回出てきた「おもんないよ」のような言葉で制したいです。これからも、和やかにおいしいお酒を楽しめる飲み会を継続していきます。そして、違法薬物には一切手を出さないと誓います。

今回登場したサークルの公開情報

Walkin’ 
X:@Walkin_PR
Instagram:@walkin_pr

魁響
Webサイト:https://sakigake-hibiki.tokyo/
X:@sakigake_hibiki
Instagram:@waseda.sakigakehibiki

放送研究会
Webサイト:http://www.whknet.com/
X:@whknetnow
Instagram:@whk_official

※上記サークルの情報を含む、早稲田大学公認サークルガイドはこちら

写真左:2023年、4年ぶりに復活したWalkin’の新歓名物企画、マグロの解体。骨はノコギリで切ったそう
写真右:2023年11月魁響の単独公演「Hibiki Festival 2023」。舞台衣装はおそろいの法被と鉢巻きで

2024年1月放送研究会主催「WHK FESTA」。企画から全て自分たちで行っている

取材・文:市川 茜(2017年文化構想学部卒)
撮影:番正 しおり

【次回フォーカス予告】4月22日(月)公開「ボディ・ポジティブ特集」

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