日常のささいなことからも、多くの発見を持ち帰ることができた
政治経済学部 3年 米納 千尋(こめの・ちひろ)
2021年8月、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、私はスウェーデンの第二の都市、ヨーテボリに飛び立ちました。「その土地のことを本当に理解するためには、実際にそこで暮らす必要があるのではないか」という考えから、1年間の留学を決意したのです。
ヨーテボリは、古い建築物と自然が共存する、小規模で親しみのわく街です。ヨーテボリ大学を留学先に選んだのは、ジェンダー平等への意識が高い国で、ジェンダー学を勉強したいという思いがあったからです。
スウェーデンは非常にリベラルな政治観を持つ国です。留学先のジェンダー学の授業やヨーテボリの「プライド・ウィーク」(LGBTQ+文化をたたえるプライド・パレードなどを行う期間)でのボランティア経験を通じて、スウェーデンのリベラルな空気を直接肌で感じることができました。特に「プライド・ウィーク」にはヨーテボリの街全体がイベントでとても盛り上がったのを覚えています。スウェーデンではマイノリティー、マジョリティーにかかわらず、誰もが自分らしく生活しているように感じました。
写真左:プライド・パレード参加者に騒音注意を呼びかけるボランティアをしました
写真右:プライド・ウィーク中、LGBTQ+文化を象徴するプログレス・プライド・フラッグが飾られたショッピングモールの様子
スウェーデンで暮らす中で新たに意識するようになったのは、移民の存在です。ヨーテボリは、スウェーデンの中でも移民が多い街だそうで、街中ではスウェーデン語だけでなくさまざまな言語が飛び交っていました。
スウェーデンは移民を積極的に受け入れてきましたが、近年はスウェーデン民主党という反移民派の右派ポピュリスト政党が勢いを増しています。友人たちが移民について議論するのを聞いて、社会が一枚岩でないことを知り、スウェーデン社会を理想視していた私はかなりの衝撃を受けました。
スウェーデン留学は私にとって非常に大切な経験になりました。大学の講義はもちろん、日常のささいなことからも、ジェンダーに対する意識の違いや移民問題など、多くの発見を持ち帰ることができたからです。今後は留学で経験したことを生かしながら、ゼミで日本とスウェーデンの比較研究を続けたいです。
~スウェーデンに行って驚いたこと~
スウェーデンは男女平等の意識が高い国ですが、その配慮は男女の枠のみにとどまりません。スウェーデンでは写真のように、トイレが男女共用になっている場合がとても多いです。
性自認が男女の枠に当てはまらない人々はしばしば、日本のような赤と青に区切られたトイレを利用することに困難を感じます。スウェーデンのジェンダーフリートイレは誰もが利用しやすく、多様性を積極的に受け入れる姿勢が見られます。また、トイレ自体も比較的きれいに保たれています。普段ボーイッシュな格好をしている私は、日本の女子トイレに入るときにけげんな目で見られることが多かったのですが、スウェーデンでは気軽にトイレを利用することができました。
スウェーデン王国・ヨーテボリはこんなところ
ヴェストラ・イェータランド県に属するスウェーデン王国の港湾都市で、県庁所在地。人口は約58万人。スウェーデン王国では人口第二の都市で、工業の中心。町の中心に運河が走っている。西海岸に面していて、海洋性気候のため夏場でも天候の変動が激しく、にわか雨などが多い。日本語ではイェーテボリ、イエテボリ、エーテボリなどとも呼ばれる。時差は日本より-8時間(夏時間は-7時間)。