こんな募集は要注意! 最近注目のスキマバイトで気を付けるべきポイントとは? – 早稲田ウィークリー

Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

こんな募集は要注意! 最近注目のスキマバイトで気を付けるべきポイントとは?

空いた時間に簡単な仕事でお金を稼げる「スキマバイト」。履歴書や面接は不要、仕事内容は比較的簡単、働いたその日に給料が支払われるなどのメリットがあるため、授業とサークル活動の合間に活用したいなど、大学生なら一度は考える働き方かもしれません。

一方、気軽に利用できることから、「安心して働ける環境なの?」という不安を抱く人も少なくないのではないでしょうか。実際、世間ではスキマバイト関連のトラブルが多く発生しています。今回は、雇用先からの不当な扱いや違法な闇バイトの可能性があるスキマバイトが存在することを理解するために、早大生が弁護士法人早稲田大学リーガル・クリニックに足を運び、小西泰弘弁護士と宮野絢子弁護士にお話を伺いました。学生はスキマバイトに対してどのように意識すべきなのか、トラブルの事例を踏まえながら考えましょう。

トラブルにつながるスキマバイトから身を守るには? 早稲田大学リーガル・クリニックにインタビュー

訪問するのはこちらの学生! スキマバイトのことをどう考えていますか?

法学部 1年 佐藤 大起(さとう・だいき)
社会科学部 3年 松平 萌里(まつだいら・もえり)

(左から)松平さん、佐藤さん。早稲田大学リーガル・クリニック入口にて

佐藤さん

自分の周りでもスキマバイトを始めた友人がいますし、私たち大学生にとって身近なものになっていると感じています。その友人からスキマバイトのメリットをいろいろ聞いたので、自分もやってみようかと思っていますが、単発バイトでも給料は募集時の条件通りにきちんと支払われるのか、軽い気持ちで応募したら実は闇バイトで犯罪に巻き込まれるのではないか、など不安な点があります。

松平さん

スキマバイトは履歴書や面接が不要で、スマートフォン一つで簡単に応募できるという手軽さから、学生の間で人気なのではないでしょうか。私も、授業やサークルの合間にアルバイトができることは、大学生としてかなり魅力的だと感じています。ただ、従来のアルバイトに比べて、その手軽さが一転して危険を生む可能性があるとも考えています。

所属弁護士のお2人にお話を伺いました!

早稲田大学リーガル・クリニック
小西 泰弘(こにし・やすひろ)弁護士

慶應義塾大学経済学部卒業、会社員を経て、早稲田大学大学院法務研究科修了。2023年に早稲田大学リーガル・クリニック入所。2024年より早稲田大学大学院法務研究科アカデミック・アドバイザー。

宮野 絢子(みやの・あやこ)弁護士

早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。刑事対応型の公設事務所である弁護士法人北千住パブリック法律事務所での勤務を経て、2024年に早稲田大学リーガル・クリニック入所。

(前列左から)宮野弁護士、小西弁護士

――スキマバイトは自分の都合の良い時間に働けるなどさまざまなメリットがありますが、トラブルも多発していると聞きます。どのような原因が考えられるでしょうか?

小西:トラブルの原因の一つとしては、労働条件の食い違いが考えられます。労働基準法上、スキマバイトであっても「労働条件通知書」を交付する必要があります。これは、雇用者が労働者に対して、給与や仕事内容などの労働条件を明示するための文書です。しかし、スキマバイトでは労働条件通知書が交付されないケースも一定数存在するようなので、仕事内容が事前に確認していたものと違っていたり、勤務時間や給料などの労働条件の齟齬(そご)につながったりしているのではないでしょうか。

また、スキマバイトの場合、企業側は社会保険の手続きをする必要がありません。そのため、使い勝手の良い労働力とみなされたり、スキマバイト以外の労働者と比較して思いやりのない対応をされたりすることがあるのかもしれませんね。

――スキマバイトのトラブルで、以下の3つの事例を聞いたことがあります。巻き込まれないためにはどのように注意するべきでしょうか? また、万が一巻き込まれてしまった場合はどうすればいいでしょうか?
<ケース1>
即日で給料をもらえる契約だったから働いたのに、なかなか支払われない。
どうすれば支払ってもらえるのかが分からない。

小西:スキマバイトにおける給料は、雇用会社が労働者に対して直接支払う場合と、スキマバイトを仲介するサービス運営会社が立て替え払いを行う場合があるようです。給料が支払われない場合、前者なら雇用会社に、後者なら雇用会社または運営会社に請求することになります。それでも支払われないときは、労働基準監督署に相談するか、弁護士に依頼して「内容証明郵便」(※)で未払い給与の支払いを督促したり、簡易裁判所に訴訟を提起する方法があります。しかし、スキマバイトの給料はそれほど大きな額ではないことが多いと思うので、弁護士に依頼する費用の方が高くなり、現実的な解決策とは言えない場合も多いと思います。

比較的規模の大きなスキマバイトサービスでは、立て替え払いにより、給料の即日払いを実現しているようです。そのため、大手のサービスの方が、未払い賃金が発生する可能性は低いのかもしれません。

(※)「誰に」「どのような内容の」通知を「いつ」送ったのかを郵便局が証明するという、郵便サービスの一つ。内容証明郵便自体に法的効力はないが、弁護士からの内容証明郵便であれば、訴訟などの法的手続きに移行する可能性もあることから雇用先も無視するわけにいかず、未払い給与の支払いを実現するのに役立つ

<ケース2>
募集要項にあった仕事内容が実際とは異なり、トイレ掃除など店の雑用をさせられた。
その日限りの就労だからか、雇用先から都合のいいように扱われたと思う。

小西:労働条件通知書を事前に確認し、労働条件の認識の齟齬をなくしておくことで、こうしたトラブルを回避することができます。しかし、先ほどもお話ししたように、通常のアルバイトに比べて、スキマバイトでは労働条件通知書が事前に送られていないケースも多いようです。まずは労働条件通知書の有無を確かめ、未交付の場合は雇用者に対して交付を求めることが必要です。

また、スキマバイトでは、労働条件通知書の仕事内容の記載が曖昧であったり、応募者を集めるために実際よりも募集内容を魅力的に表現していたりするケースもあります。現場に行ってみないと雰囲気が分からないのが、面接のないスキマバイトの難しいところです。当日働く前に雇用会社に問い合わせたり、少しでも不安を感じる際には応募をやめたりすることも考えましょう。

<ケース3>
SNSでの募集で、企業情報が明確に公開されていなかったが、指定された荷物を運ぶという簡単な作業で高額な報酬がもらえるのでやったところ、違法行為にあたる可能性が高いことが後で分かった。
自分のやったことが罪に問われてしまうのではないか、とても不安。

宮野:これは、いわゆる「闇バイト」に巻き込まれた事例ですね。闇バイトとは、短時間で高額の報酬を得られると募集し、特殊詐欺の受け子や出し子のような詐欺・窃盗などの違法行為に加担させるものを指します。今回のケースの場合、すでに違法行為に及んでしまっている可能性があるため、早急に警察や弁護士に相談すべきでしょう。近年の特殊詐欺は厳罰化の傾向が強く、初犯でも執行猶予が付かないケースが圧倒的に多いです。相談した結果、違法行為に該当すれば何らかの罪に問われる可能性があります。そのため、違法行為に加担してしまう前に、立ち止まることが重要です。

闇バイトに巻き込まれるリスクを避けるためには、高額な報酬をうたうバイトの応募や、SNSを通じて行われている募集には警戒心を持つようにしてください。また、仮に連絡を取ってしまっても、SNS上で知り合った相手に身分証や銀行口座の写真などの個人情報を安易に送ってはいけません。違法行為だと気づいて闇バイトをやめようとしたときに、身分証の住所などを知られてしまっていることによって、家族に危害を加えるといったような脅しを受けるケースもあります。また、自分が違法行為に及んでいなくても、教えてしまった口座情報が犯罪に使われて凍結されてしまうこともあります。

小西:おそらく最近の若者世代は、物心ついた頃からスマホを持っていて、SNSになじみがあるのだと思います。そのため、SNS経由でのアルバイト募集にも抵抗感がない。しかし、そのようなデジタル空間がリアルの場より悪いことをしやすくなっているのは間違いありません。自分は大丈夫と思って気軽に応募したら闇バイトだった、そうならないように注意してほしいです。

――スキマバイトへの不安や悩みがある場合、早稲田大学リーガル・クリニックでは早大生にどのような支援をしているのでしょうか?

小西:早大生からのアルバイトに関するトラブルの相談は昔から多いです。賃金の未払い、パワハラ、やめさせてもらえないなどケースはさまざま。もちろん事例によって支援できる範囲は異なりますが、一人で抱え込んで泣き寝入りする前に、一度相談に来てほしいですね。

宮野:早稲田大学リーガル・クリニックは早稲田大学に併設されている法律事務所ですし、何も接点のない学外の法律事務所に問い合わせるよりも、学生の皆さんの心理的ハードルは低いのではないかと思います。また、2カ月に1回程度、我々弁護士が早稲田大学保健センターに赴き、法律相談に応じる機会もあります。困ったことがあれば、ぜひ気軽に足を運んでください。

――最後に、スキマバイトに対してどのような意識を持つべきか、早大生へメッセージをお願いします。

小西:スキマバイトは、一見メリットが多い自由な働き方ですが、新しい仕組みであり、労働者の権利が守られているかというと、まだまだ不透明な点が多い状況にあります。応募する際は、十分に注意することを心掛けてください。

宮野:学内では経験できない機会を得られると期待して、アルバイトをすることがあると思います。ただし、お金を最優先にしてしまうと、闇バイトなどのトラブルに巻き込まれるリスクも高くなるでしょう。「楽して稼ぐことができる仕事」は違法かもしれないという危機意識を持ちながら、スキマバイトを利用することが大切です。

取材・文:仲里 陽平
撮影:番正 しおり

インタビューを終えて、どんなことを感じましたか?

佐藤さん

まずは自分の身は自分で守るという意識が非常に重要であり、少しでも「おかしい」と感じたら立ち止まる勇気を持とうと改めて認識できました。スキマバイトに対して漠然とした不安を抱いていましたが、今回のインタビューで正しいスキマバイトとの付き合い方が分かったので、無理のない範囲で活用しながら、大学時代にしかできないことにたくさんチャレンジしていきたいです。

松平さん

学生ができるスキマバイトへの危機管理には限りがあるかもしれませんが、今回、弁護士の方々から伺ったことを友人と情報共有するなど、実態を「知る」ことが大切だと思いました。また、働く際には労働条件通知書の確認を徹底することを心掛けたいです。もしトラブルに巻き込まれそうになった場合は、手遅れになる前に、早稲田大学リーガル・クリニックなど法的な相談ができる機関にすぐ相談することも重要ですね。

弁護士法人早稲田大学リーガル・クリニック

※クリックして拡大

法律版「大学附属病院」を目指してつくられた法律事務所。良質の法律サービスを提供する法律事務所として活動をしながら、学生の臨床法学教育を目的とした教育機会を提供する教育機関としての役割も担っている。所属弁護士の多くは早稲田大学における法曹教育に関与している。

〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目1番7号 早稲田キャンパス 28号館 4階
TEL:03-5272-8156
Webサイト:https://www.waseda-legalclinic.com/

【次回フォーカス予告】10月14日(月)公開「ダイバーシティイベント」

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる