新型コロナウイルス感染症の影響で、留学を含め海外への渡航が厳しい状況が続いていましたが、徐々に制限が緩和されつつあります。そんな今、海外留学を検討し始めている早大生も多いのでは? そこで今回、2021~2022年に海外留学を経験した早大生3人の座談会を実施。留学のきっかけや現地での経験、コロナ禍での留学で気を付けるべき点など、いまどきの留学に関するさまざまな情報を聞きました。併せて10月7、8日に留学センターが開催する留学フェアについても案内しています。ぜひ、海外留学を考える一助としてください!
迷ったら行くべし! 三者三様の留学ストーリー
教育学部 4年 石塚 文子(いしづか・ふみこ):米国・カリフォルニア大学アーバイン校
政治経済学部 3年 木口 桃華(きぐち・ももか):香港・香港中文大学
文化構想学部 3年 秋吉 正太(あきよし・しょうた):英国・グラスゴー大学
※いずれも2021年秋からの長期留学プログラム
留学に挑戦しようと思ったきっかけや、留学の目的を教えてください。
石塚:留学を決めたのは、受からないと思っていた早稲田大学に1年間の浪人生活を経て受かったことがきっかけです。自分では無理だと思えることにも挑戦してみようと思えるようになり、ずっと苦手だった英語を米国で学ぶことを決意しました。実は明確な目標がないまま日本を飛び出した私ですが、留学を経て「自分はこれから何に取り組みたいのか」を見つけようと思っていました。
秋吉:僕は、育ちは日本ですが生まれは韓国で、米国には親戚がいます。そうした環境から、夏休みなどを海外で過ごす経験はあった一方で、海外で「暮らす」のはどんなものだろう? という興味が昔からありました。また、高校生の頃から人種差別やヘイトスピーチに関心があり、自主的に学んでいたので、その一環として人権保護活動が活発な英国への留学を決めました。
木口:私が留学に踏み切ったきっかけは、高校1年生のときに参加したユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)主催の「日中青年会議」です。この会議で、中国や香港の高校生と互いの文化や歴史を話し合ったことで、国際問題の解決には直接対話して価値観を共有することが重要だと学びました。その後、会議の開催地だった香港で「水革命」という大規模なデモが勃発。香港の友人が悲しんでいるのを目にし、自分にできることは何か考えた結果、抗議者が集結して運動の中心地になっていた香港中文大学に留学し、現地の状況を知ろうと決意しました。
写真左:以前から家族で海外旅行をする機会が多く、海外を身近に感じていた石塚さん。高校生の頃、グアムで撮影した一枚
写真右:「日中青年会議2017」での参加賞授与式の様子。式では各々の特技を発表する時間があり、高校で少林寺拳法部に所属していた木口さんは型を披露したそう
留学準備を進める中で、不安なことはありましたか?
秋吉:留学の手続きを行った2020年秋学期時点では、コロナ禍で留学が中止になる可能性があったのが不安でした。
石塚:実は、私は2020年の春にコロナ禍による留学の中止を経験していて、同年秋にもう一度出願してやっと行くことができました。そのとき一番気掛かりだったのは、米国でアジアンヘイトが広まっていたこと。カリフォルニア大学アーバイン校を選んだのは、アジア系米国人の学生が多く、その中に紛れることで自分の不安を軽減できると思ったのと、アーバイン市が全米一安全な場所といわれているからです。実際に滞在中は暴力や犯罪に遭わずに済みました。
秋吉:僕も英国でのアジア人差別に関するニュースをチェックしていました。最終的に、世界で一番友好的な都市に選ばれたこともある英国・スコットランドにあるグラスゴーを選びました。
写真左:アーバイン校からの帰宅時の景色。石塚さんは、この夕日を横目に自転車を走らせていたという
写真右:秋吉さんが留学したグラスゴー大学には歴史ある建物が多く残っている
木口:香港の場合は社会情勢が全般的に不安定だったのと、ゼロコロナ政策を行っていた影響で、留学のビザが下りたのは渡航予定日のわずか3週間ほど前でした。
秋吉・石塚:え~!
木口:香港に到着してからはすぐホテルに隔離され、冷蔵庫も使えず、窓も開けられない生活を14日間送ることに…。やっと街に出ても、お店に入る際は逐一GPSを確認されました。最終的に留学先の大学で再度デモが起きて危険を感じたため、2022年2月末にやむなく途中帰国し、現地のオンライン授業を受講していました。社会情勢やコロナ対応に対する不安は正直ずっと消えなかったですね。
石塚:大変だったね。米国はそもそも隔離が無く、その点は楽だったものの、コロナ関連の情報を事前に手に入れるのになかなか苦労しました…。
秋吉:そうそう。「現地でコロナにかかった場合、どのような対応をするか」について、留学前に大学にレポートを提出した(※)よね。そのおかげで心構えができたと思う。ただ、僕は日本の風邪薬を持って行き忘れてすごく困ったので、留学先には必ず薬を持参するようにしてほしいです!
(※)2022年秋出発の留学では同様のレポートを実施した。今後の実施は未定。
木口:私も同じくレポートを作成したけど、情報を集めるのが大変で。現地校の日本人教授や同じ大学に留学予定の日本人学生同士で連携しながら準備を進めました。
留学先ではどんなことを学びましたか?
秋吉:僕が留学したグラスゴー大学にはヨーロッパ各地から学生が集まっていて、20人いたゼミ仲間のうち15人ほどが英国以外の出身でした。だから歴史問題一つ取っても、育った場所や環境によって視点や意見が全く異なり、ゼミのディスカッションを通して異文化を肌で感じました。また、住んでいた寮にはスペイン、ドイツ、イタリアからの留学生がいて、各国の料理や食事のマナーを教わることができたのも留学ならではの学びだったと思います。
写真左:帰国直前に寮の仲間と撮影した集合写真(前列右から2人目が秋吉さん)
写真右:イタリア・ミラノでの一枚。グラスゴー大学で出会った親友と共に二人旅を楽しんだ(左が秋吉さん)
石塚:私は美術館が好きなこともあり「Art of Japan」という授業を履修しました。講義の中では日本のプリクラ文化がアートの枠組みで語られていることに驚き、日本美術史を米国の視点から学ぶ面白さを感じました。
また、以前から人種問題に関心があり、「なぜ肌の色の違いで差別する人がいるのか」が全く理解できずにいました。そこで、留学中は人種に関する授業を多く履修したり、アジア人というマイノリティとして実際に米国で生活を送ることで、人種差別が起きてしまう原因の一端を知ることができました。
秋吉:自分がマジョリティではない環境に身を置くことで見えてくるものがあるよね。日本独特の文化の良さに気付く一方で、日本と世界との共通点を見つけたりとか。
木口:中国本土から来た教員が増えたことで、もともと興味のあった香港の政治制度を学ぶのは難しいと判断し、政治学ではなくビジネスを専攻しました。「Design Thinking and Business」という授業では出身地が異なる学生とチームを組んで新規事業の立ち上げに挑戦し、アプリ制作や運用も実施。「ここまでするんだ!」という驚きがありましたが、香港の学生は実践を徹底して行う授業に慣れていて、学びへの本気度も感じました。
写真左:お正月に留学生を招待して、おせちパーティーを実施。日本の正月文化を紹介した(右手前から2人目が木口さん)
写真右:香港の夜景を背景に友人と(左から2人目が木口さん)
留学を経て、それぞれどのようなところが変わった・成長したと思いますか?
木口:多様性を理解する力が上がったと感じます。日本では、常識から少しでも外れると変人扱いされることがありますよね。「陽キャ」「陰キャ」など周囲に勝手にカテゴライズされることも多い。でも、世界に飛び出せばこのカテゴライズには意味がないし、そういう見方を排除したときに仲良くなれる人は人種に関係なく存在するものだと思えるようになりました。自分の価値観をきちんと主張し、その上で人種や年齢関係なく人と仲良くなる術を身に付けることができたと思います。
石塚:私もあらゆる意見に対し、柔軟性が持てるようになりました。というのも、自分の常識が相手の常識ではないと感じるきっかけになった授業があって。その授業ではストレスを感じたときの発散方法を「Healthy」と「Unhealthy」に分けるという課題があり、私は「怒り」による発散を「Unhealthy」としました。これに対して先生は「感情を素直に出すことはHealthyじゃないか?」とおっしゃったんです。発言にハッとしたと同時に、その考え方自体がすてきだと思いました。自分の常識から外れたものを排除せず、受け入れていく柔軟性を磨いていきたいと感じた瞬間でした。
秋吉:僕は日本を離れて初めて、日本の本や映画といったエンタメが自分にとって大切なものだと気付き、誰かの心のよりどころとなるようなコンテンツを生み出したいという目標ができました。新しい環境に置かれたからこそ、自分が人生を懸けて何を成し遂げたいのかを客観的に考えることができたんです。それと、海外に住むというのは案外難しくないことに気付き、英国に住むという選択肢ができましたね。
写真左:ニューヨーク・ブルックリン橋にて。石塚さんは冬休みを利用し、友人と1週間ニューヨークを楽しんだ
写真右:プレミアリーグ・トッテナムの試合観戦を現地で楽しんだ秋吉さん
木口:私は逆です! 帰国したら日本の便利さに気付いてしまって…。若いうちは香港やシンガポールなど海外でビジネススキルを上げつつも、老後は日本に住みたいと思っています(笑)。
石塚:それ、すごく分かる!
木口:帰国して日本の良さを享受したときに、日本語ネイティブとしての強みを生かしていきたいと思ったんです。香港では至る所に日本のチェーン店があって、日本の文化が受け入れられていることを実感しました。日本文化の理解が世界中で一層深まるよう、日系企業の中でグローバルにものを発信していく人材になりたいと考えるようになりました。
最後に、留学に少しでも興味を持っている早大生に向けてメッセージをお願いします!
木口:留学を迷っているなら、絶対に行った方がいいと思います! 留学先では友達がたくさんできなかったり、思っていた自分になれなかったりすることももちろんあります。それでも、行かなければその選択が正しかったかどうかも分かりません。大学生活を有効活用して、ぜひチャレンジしてみてください。
石塚:私も、行かない後悔より行った後悔の方がいいと思います。正直、留学は大変なこともたくさんありますが、経験すること全てがありがたく、成長にもつながります。楽しくなるかは自分次第です。日本にいるだけでは得られない経験は確実に自分のためになりますよ。
秋吉:迷っている方は、「行かない方がいい」理由を自分の中でいくつか挙げてしまっているのだと思います。でも、それらは意外と自分で解決できたりする。自分が後悔しない選択をして、行くと決めたならいかに素晴らしい留学にするかを考えてほしいです。どんな有名な大学に留学して授業を受けても、それを自分に還元できるかは本人次第。ぜひ、自分にとって有意義だったと断言できるよう努力してほしいです!
取材・文:萩原あとり
撮影:石垣星児
10月10日(月)に、2023年秋留学のWeb出願が解禁されます!
留学センターが提供する長期(1年間)留学プログラムは、秋出発のパターンが多く用意されています。10月10日(月)12時~21日(金)17時は、留学申請に必須であるWeb出願の登録期間です。最新のスケジュールを基に、余裕を持って準備を進めましょう。
2022年秋の留学フェア
開催日:2022年10月7日(金)、8日(土) ※オンライン開催
協定大学による説明会の他、留学経験者から構成される「学生留学アドバイザー」によるトークイベントも開催予定。各企画の詳細や参加における注意点は留学センターWebサイトでご確認ください。
【次回フォーカス予告】10月10日(月)公開「キャンパス紹介特集」