早稲田の学生街③ 変わりゆく早稲田古本屋街 – 早稲田ウィークリー

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コラム

早稲田の学生街③ 変わりゆく早稲田古本屋街

大学史資料センター 嘱託
教育学部 非常勤講師 望月  雅士

1991 年に総合学術情報センターに移るまで、早稲田キャンパス内の2号館が図書館だった。当時の図書館は閉架式のため学生は書庫に入れず、蔵書カードを一枚一枚 めくって書名を探し、図書受付のカウンターで本を借りるシステムになっていた。そればかりか、今と違って館外貸し出しもできず、学生は借りた本を図書館内 で読むしかなかった。

【写真①】店頭には格安本が並ぶ。その中から掘り出し物を見つけるのが楽しみだった。(1988年頃の写真)

【写真①】店頭には格安本が並ぶ。その中から掘り出し物を見つけるのが楽しみだった。(1988年頃の写真)

でも学生からすれば、そもそもどのような本があるのか、未知の本を書架から手に取り一冊一冊捲ってみたかった。また、家でボリューム のある本とじっくり格闘したかった。そうした当時の早稲田の学生の不満を解消してくれたのが、早稲田通りの古本屋街だった。

高田馬場駅から大学へと通じる早稲田通り、西早稲田商店会とワセダグランド商店会のえんじの旗が街路にゆらめく界隈には、かつて小さな商店が軒を連ねてい た。なかでも古本屋は40軒近くが点在し、独特の看板と佇まいでひと際目立った(写真①)。インターネットのない時代、本探しに古本屋は欠かせない存在だった。新刊書店と違って、古本屋巡りにはどこか宝探しの感があり、図書館にもない本を見つけたときは、人知れず「知」を独占したような気分になった。ほ とんど新刊に近い本を半額程度で売る店では、その場で買わないと翌日には後悔が待っていた。店内のいたるところに「テレビは文明の敵だ」の貼紙をしている 店もあった(写真②)。立ち読みしながら、必死に内容を暗記する強者もいて、それを睨みつける店主の顔もあった。

【写真②】アカデミー書房のガラスドアに「テレビは文明の敵だ」の貼紙が見える。(1988年頃の写真)

【写真②】アカデミー書房のガラスドアに「テレビは文明の敵だ」の貼紙が見える。(1988年頃の写真)

古本屋と古本屋の間には、魚屋、八百屋、豆腐屋をはじめ、さまざまな個人商店が立ち並び、この界隈に暮らす人々の生活感を漂わせていた。しかし昭和が終わ りを迎え、日経平均株価が4万円に近づいた頃から、この街は徐々に変わっていく。「テレビは文明の敵だ」の貼紙も、魚屋や八百屋の掛け声もいつしか消え て、跡には高級マンションとオフィスが林立し、チェーン店の鮮やかな看板が目につくようになった。今、この界隈の古本屋は全部で20軒余り。この春、古く からの古本屋がまた一軒、格安弁当屋へと様変わりした。

1283号 2012年7月12日掲載

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