後藤春彦教授
本格的な人口減少・少子高齢社会の到来を受けて、開発から時間の経過した住宅地はオールドタウン化が進行し、大都市圏郊外では、将来、負の遺産となるような住宅地の発生が危惧されています。こうした状況の中、国土交通省では、郊外市街地を「計画開発による公共施設整備率の高い、都市の貴重な資産」と位置づけ、「成熟社会に対応した郊外住宅市街地の再生技術の開発』事業に2018年度から取り組み始めています。また、民間の住宅事業者や鉄道事業者が中心となって、郊外型住宅団地再生のための実証実験が始まっています。
一方、テレワークの普及により、自然や歴史文化の豊かな大都市圏郊外に新たな住まいを求める動向も注目されます。スプロール化による無秩序な開発を繰り返すことなく、これを郊外再生の契機にしたいと考えています。
本リサーチ・ファクトリーでは、郊外市街地を再生する技術とし て、ものづくり技術(機能的価値)、コトづくり技術(意味的価値)に加え、コミュニティづくり技術(規範的価値)を駆使して、共有価値創造(CSV)を目指し、空間技術、環境技術、生活技術、コミュニケーション技術を組み合わせた「次世代住宅地モデルの開発」と「交流拠点モデルの開発」を行います。
さらに、性能評価指標を構築し、住宅市街地の新たな付加価値創造と維持再生にかかる技術の基準化を行うことにより、「市街地維持再生指針(案)」を策定します。
現在、首都圏近郊を社会実装フィールドとして、地域のブランディング(既存ストックの保存再生とまちの文脈位育成を通じた共有価値(CSV) の創造)を行い、競争力の獲得と社会課題解決の両立を目指します。
具体的には、以下のテーマに取り組みます。
(1) 次世代住宅地モデルの開発
戸建て住宅地を対象として、地域課題と居住者ニーズの把握、次世代住宅地モデルの開発、次世代住宅地モデル導入による効果の検証と評価指標の開発を実施します。
(2) 交流拠点モデルの開発
大規模住宅団地を対象として、コミュニティ実態の把握、「健康」をテーマとした新たな交流拠点の開発、交流拠点設置の効果検証と評価指標の開発を実施するとともに、コミュニティ活動運営の実態調査とその分析を実施した上で、団地における交流拠点の継続的な運営のしくみをモデル化します。
(3) 市街地維持再生認証システムの確立
首都圏郊外の社会動向シミュレーション、各種ガイドラインの提示、評価システムの構築を実施します。