世界では今、持続的社会の実現に向けて、有益な高付加価値製品・サービス・事業の創出が求められています。そのためには、大学と企業の枠を越えて、有機的に技術協力を行うオープンイノベーションの推進が欠かせません。
早稲田大学は、“世界で輝くWASEDA”を目指し、下記の項目からなるオープンイノベーションエコシステムの実現に取り組んでいます。
1) 産学連携を通して企業研究者・技術者の皆さんと、大学教員・学生が協力し、社会から要請される困難な問題の解決を目指し、高付加価値製品を共同開発する
2) 上記共同研究を通して、産業利益の一部を次の共同研究に投資していただき、博士課程を中心とした学生への支援も含め、社会ニーズを理解した高度即戦力人材を育成する
3) 上記のような研究の経験をベースとして、トップレベルの論文・知財を創出する
4)産学連携・知財創出、創出した知財をベースとしたベンチャー起業及びアクセラレーションの全ての過程において、研究者(教員・学生)が本来の研究に専念できるよう作業環境をシェアすることで成功確率を高める
こうした産学連携の取り組みを実践するため、2018年10月に設立した当機構では、社会課題解決に資する8つのリサーチファクトリーを設置し、様々な角度から研究を行ってまいりました。これらの研究は時に領域を横断し、社会ニーズオリエンテッドな新事業創出を加速させ、企業間連携によるコンソーシアムや文理融合による大型プロジェクトの創生へと発展しています。当機構は、こうした取り組みを通してさらなる研究大型化や新規領域の形成、異分野融合型エコシステムの構築を推進しています。
早稲田大学は、人文社会系、理工系の広範な学問分野をカバーする総合大学です。その秀でた専門性を活かすことで、これまでにない新たな研究分野へと裾野を拡げ、企業の課題に応える提案が積極的に実施できます。そのためのハブとなるのが当機構です。今後も、企業が思いも寄らない大胆な提案を実施し、大学と企業が組織対組織という関係性の中で真のイノベーションを生み出す互恵的な関係を築きながら、社会価値の創造を図ってまいります。
私たちが最終的に解決を目指す課題は、「人を中心としたあるべき未来の社会を模索し、如何に築いていくか」ということ。この課題解決のためには、企業と大学の異なるカルチャーを橋渡しする組織づくりが求められます。当機構は、これまでの4年間の成果をベースに、さらなる進化・発展を図ってまいる所存です。
機構長
早稲田大学理事
( 研究推進部門総括・産学連携担当)
リサーチ・イノベーション・センター統括所長
1993 年早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了、博士(工学)。2006 年より早稲田大学理工学術院教授。2016 年早稲田大学先進理工学部長兼研究科長。2020 年リサーチ・イノベーション・センター研究戦略センター所長。2022 年早稲田大学理事(研究推進担当)。
専門は電気工学。内閣府総合科学技術会議評価専門調査会「太陽エネルギーシステムフィールドテスト事業」評価検討会委員、経済産業省産業構造審議会保安分科会電力安全小委員会委員、保安・消費生活用製品安全分科会産業保安基本制度小委員会委員長、日本太陽エネルギー学会理事等を歴任。
日本の大企業の多くは、自社で研究開発部門を持ち独自に競争力を高めてきました。そして「技術立国日本」の一時代を築きました。しかし現在はプレーヤーの多様化、グローバル化、製品価値変化、デジタライゼーションを背景に、求められる開発スピードが一層加速しているのに対し、少子高齢化、働き方改革、社会構造の変化で、日本企業の国際競争力は低下を続けることが予想されます。解の一つとして、従前の完全自前主義から脱却し、異種の知や発想を含むオープンなイノベーションキャパシティを取り入れ変革していくことがあげられます。
そのような背景から、当機構は民間企業を対象に、競争力強化に資する競争領域の共同研究を、組織対組織で実行していくことをミッションとして設立されました。SDGs や社会課題解決に資する事業を推進する企業の皆様とのオープンイノベーション拠点を目指すべく、それらに意欲的な教員を擁する研究所が活動中です。企業に寄りそった共同研究を進めるため、各研究所には企業経験を有するクリエイティブ・マネージャーをおき、大学と企業との連携深化を図っています。更に、企業のニーズを引き出すために、企業の技術者と大学の研究者、URA、クリエイティブ・マネージャー等とのディスカッションを通じ、真に求められる研究テーマと体制を絞り込む「プレ・ ラボラトリー」と称する活動も実施中です。
当機構は設立以降、理工系のみならず人文・社会科学系の分野にも領域を拡大し、共同研究案件の大型化を目指しております。これまでの活動を更に拡充するとともに以下の点を念頭に今後の活動を推進して参ります。
■ 組織対組織で取組むべき大型研究課題の創出とこれを実現するための戦略立案
■ 個々の企業では対応しにくい案件の企業間連携並びに協調領域創出と競争領域の仕分け
■ 異技術分野の組合せや人文・社会科学系分野を合わせた文理融合型共同研究の提供
技術立国日本を再構築するためには、大学と企業が連携してオープンイノベーションを推進し迅速かつ効果的に革新的な製品やサービスを市場に投入することが必要です。早稲田大学オープンイノベーション戦略研究機構は早稲田大学の総合大学としての強みを生かし、新たな社会の課題に真摯に取組み、常に進化し続けています。
引続きよろしくお願い申し上げます。
副機構長・統括クリエイティブマネージャー。
1981 年 3 月早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了(電気工学専攻)、同年 4 月三菱電機株式会社に入社。電子システム事業本部鎌倉製作所にて人工衛星の開発に従事。1998 年4月宇宙通信株式会社に出向し取締役衛星運用本部長として衛星通信放送事業者におけるロケット・衛星調達と衛星運用を実施。
2002 年4月より三菱電機にて国内外の衛星・地上システムの開発を推進。鎌倉製作所副所長、役員理事・宇宙システム事業部長として宇宙事業をとりまとめる。この間、日本の通信・観測・気象・測位衛星インフラの構築並びに海外への衛星システム輸出に貢献。2017 年4月より三菱スペースソフトウエア株式会社常務取締役営業本部長、取締役社長、三菱電機ソフトウエア株式会社常務取締役経営企画室長に就任し、ICT を基盤技術とした宇宙・防衛・通信・ライフサイエンス・公共エネルギー等の顧客へのソリューション提供及び会社経営を実施。
2024 年 4 月より現職。