【在学生座談会】教職大学院に進学し、教育現場で必要な実践力を養う – 早稲田大学 大学院教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)

Graduate School of Education (Professional Degree Program)早稲田大学 大学院教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)

【在学生座談会】教職大学院に進学し、教育現場で必要な実践力を養う

早稲田大学では、高度な専門性を有する教員を養成する「大学院教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)」を設置し、実践的な教育能力を高めるためのプログラムを提供しています。教員免許状を取得した学部新卒者を対象とする2年制コースには、出身大学、教科、学校種問わずさまざまな学生が所属します。6人の在学生に、教職大学院の学びや魅力について語り合いました。

【参加者】

2年制コース2年 

田代 かれん(日本女子大学 家政学部卒業)、藤平 和樹(明治大学 文学部卒業)、植村 優里香(早稲田大学 人間科学部卒業)

2年制コース1

柴崎 勇矢(早稲田大学 教育学部卒業)、大津 智紗子(早稲田大学 教育学部卒業)、今野 創太(法政大学 文学部卒業) 

※学年など情報は20213月時点のものです。

理論を実践へと高める 教職大学院のカリキュラム

教職大学院のカリキュラムについて教えてください。

植村 早稲田の教職大学院には、1年制コースと2年制コースがあります。私たち学部新卒者、いわゆるストレートマスターが選ぶのは、主に2年制コースです。1年制コースは、教育委員会から派遣をされたり、教育現場を休職して学びに来る現職の教員の方々のために設置されています。

藤平 カリキュラムは、「理論と実践の往還」という理念のもと、生徒指導、学級経営、学校経営、キャリア教育などの講義が必修、さらに分野別選択科目で理論を深めていきます。その上で、実際の教育現場に赴く「学校臨床実習」で実践的な能力を養います。他にも、グループワークや模擬授業などの実践的教育が充実していることも、早稲田の教職大学院の特徴です。

▲早稲田大学 人間科学部から進学した2年生の植村優里香さん。教科は英語。今春より都立高校で勤務予定

 

学校臨床実習の内容について教えてください。

植村 学校臨床実習は、1年次・2年次でそれぞれ約5週間(期間は選択可能)、学校現場で実習します。1年次は、教員としての資質・能力をバランス良く学ぶのが目的。2年次は1年次の学びを発展させ、自分で設定したテーマに向けて1年間準備をして臨みます。

大津 学部での教育実習は、比較的「やりたいことにチャレンジする」というニュアンスが強いです。評価も教科指導が主になります。一方、教職大学院の学校臨床実習は、校務や部活、道徳など教科以外の授業を行ったり、職員会議や学年会議に参加したりと、教育現場の仕事全般を体験します。ここまで現場に密着した実習は、早稲田の特徴だと思います。教員は実に仕事が多く、効率の重要性や、生徒一人一人を見ること、学年担当全体の連携の大切さも感じました。

田代 学校臨床実習の特徴は、自分で見つけた課題をテーマに取り組むことです。実習前から何度も学校を訪問して実態を見つめ、現場の先生と相談しながら課題を設定します。また、5週間の実習が終わった後も、内容を発表する機会があり、2年次では実習校の先生や教育委員会を招いての報告もあります。1年間を通じて「設計」「実践」「振り返り」を繰り返すサイクルも、学部時代との大きな違いでした。

藤平 実習は、教職大学院の教授が担当についていただき、どの課題をどのように取り組んでいくかを密に話し合いながら進めます。実習中、担当の教授が実習校に来て、授業などを見て改善点を指摘してくれることもあります。

植村 学部にもサポート体制はあると思いますが、人数が多いため個別に手厚く指導するのはなかなか難しいんですね。また、学部の場合は出身校で実習を行うことが多いため、地方だと教授も足を運びづらいという事情もあります。教職大学院の連携協力校は主に都内なので、緊密な連携ができるのでしょう。

▲明治大学 文学部から進学した2年生の藤平和樹さん。教科は社会。今春より中学校にて勤務予定

 

学校臨床実習以外の実践指導は、どのようなものがありますか?

藤平 授業ではグループワークが豊富です。例えば、「荒れている学校を改善するためには?」という課題に対し、プレゼンテーションをするために少人数のグループに分かれて話し合いを行います。

植村 話し合いは、教務主任、生徒指導主任など、仮の役割を与えられ、ロールプレイング形式で行います。現場に近い設定で行うことで、より実践的な学びを得ることができます。

藤平 グループワークに参加する履修生は、学校種や教科もバラバラ。1年制コースにいる現職教員の方々も参加するので、現場目線の意見もいただけます。実際に教育現場での経験がない私たち学部新卒者にとっては貴重な経験です。

田代 実践的な教育力という点では、模擬授業も勉強になりました。自分たちで指導案や教材を作成して授業をするのですが、終了後に全体で集まってフィードバックやプレゼンを行います。やって終わりではなく、「その授業の中で得られたことは何か」を全員でまとめるので、より良い授業を追究できました。

 

海外の大学との連携はありますか?

田代 私は、1年次(2019年度)に、海外研修プログラムでアメリカの教育視察に2度行きました。キャリア教育やアクティブ・ラーニングに力を入れた小学校、中学校、高等学校の授業を視察しました。大学も訪れ、現地の大学院生とディスカッションをしたり、日本の教育を紹介する時間もありました。

植村 日本のキャリア教育というと、入試や就職を主目的とした、いわゆる「出口指導」に偏ってしまいがちです。アメリカの学校では、「働くこと」を強く意識した教育がされていたので、非常に参考になりました。

 

教科指導は行われますか?

今野 教職大学院は、教員としての資質そのものを高めることを重視しているため、教科別の指導は基本的にありません。教科指導は、履修生が自主的に運営する「分科会」で補填できます。授業時間外に有志で、科目に分かれて集まり、教職大学院の教授が参加してくれることもあります。

田代 それぞれの専門教科や道徳、ICTなどの分科会があり、積極的に参加しています。例えば、私は社会科の分科会に参加したり、生徒主体の柔軟な授業づくりを目指して「学びのユニバーサルデザイン」についての学習会を企画したりしました。

植村 特に近年必須となった道徳教育は、どのように展開していくかが教育会全体の課題になっており、そこをみんなで話し合ったりもします。教職大学院には、道徳教育専門の教授もいるので、深い議論をすることが可能です。

 

▲日本女子大学 家政学部から進学した2年生の田代かれんさん。今春より都内の区立小学校で勤務予定

 新型コロナウイルスの影響とICTの活用

新型コロナウイルスの影響を受け、授業にどのような変化がありましたか?

植村 グループワークに割くことができる時間が減り、授業はオンライン化されたので、書籍や論文をよむような、自分の学ぶべき理論を深める時間を増やすことができました。どうしても細かな話し合いをする時間が減ってしまのですが、ZoomGoogle ドキュメントなどを活用してコミュニケーションができるように取り組んでいます。机間指導の方法を互いにチェックし合うような、テクニカルな部分はオンラインに不向きなので、その辺りも解決していきたいですね。

藤平 授業のオンライン化には良い点もあります。今後普及するであろうICTを使った授業を、現場に出る前に知ることができました。私立の学校で導入が進んでいるGoogle Classroom なども把握できたので、来年から教壇に立つ際にも安心できました。

田代 地方や海外にいる外部の講師を招致できる点などもオンラインの強みです。教職大学院にはシンポジウムを履修生が企画するプログラムがあるのですが、登壇するゲストの幅も広がりました。

柴崎 2020年度を振り返っても、オンラインでもやれることは意外と多かったように思います。学校臨床実習も5週間しっかりと行いました。自宅が早稲田から遠いのですが、Zoomなどが普及したことで、逆に集まれる時間が増えたと思います。

大津 教授も私たちに「どのようなオンライン授業が円滑か」と問いかけながら指導してくれました。オンライン授業自体が新たな試みなので、先生と履修生が意見を交わしながら進める空気は良かったと思います。

▲早稲田大学 教育学部から進学した1年生の大津智紗子さん。中学校・高等学校の数学を志望

 

教員になる前に現場を知ることの大切さ

早稲田大学の学部から、教職大学院に進学した理由を教えてください。

植村 人間科学部に通っていた学部時代、民間企業の就職活動と教育実習を同時に行っていました。教育実習で生徒から相談を受けた時、どのようにアドバイスをするかわからず、「このまま教員になっていいのだろうか」と感じ、4年生の時に教職大学院への進学を決めました。高校の教員免許しか持っていませんでしたが、教職大学院では中高両方の免許が必要(※当時の推薦入試では必要だったが、現在では小中高いずれかの教員免許状取得見込で出願が可能) なので、推薦入試 でなく一般入試で受験しました。一般入試は4年生から準備すると結構大変なのですが、内容が類似する教員採用試験の勉強もしていたので、比較的負担は少なかったです。

柴崎 教育学部で4年生の6月頃まで就職活動をしていて、教員採用試験は受けていませんでした。アルバイト先にいた教職大学院の修了生の話を聞いて興味を抱き、ゼミの先生に頼み込んで7月に教育実習を終えてすぐに推薦 入試の願書を提出。ギリギリのタイミングで間に合い、入試も先生が手厚くサポートしてくれました。早稲田には教育学研究科もあるので、どちらに進むか迷ったのですが、学部の教育実習ではどこか“若さ”だけに頼っていて、「このまま教壇に立つのは恥ずかしい」と感じたので、もう一度実践的な力を身につけたいと教職大学院を選びました。

大津 私は教員志望でしたが、学部4年生の時には就職も考えていました。教員の道を選んだ時点で大学院への進学も決めたのですが、教職大学院の存在を知ったのはその時です。教育学部だったのですが、生徒とコミュニケーションをする能力が足りないと思い、担当である数学の大学院ではなく、教職大学院を選びました。当時を振り返ると、学部卒業の段階ではまだまだ知識不足で、現場に立ってもうまくいかなかったと思います。

植村 教職課程の授業は卒業単位に含まれないものも多いので、民間への就職も視野に入れると、どうしても履修が少なくなってしまいます。進路の選び方が難しいので、民間就職と教員で迷っている人は、まず教育実習の担当の先生に相談すると良いと思います。私も先生に相談して教職大学院を勧められました。

▲早稲田大学 教育学部から進学した、1年生の柴崎勇矢さん。中学校・高等学校の国語を志望

 

他大学から早稲田の教職大学院に進学したきっかけを教えてください。

今野 高校生の時から教員になりたいと思っていて、教員免許を取得できる大学だけを受験しました。学部入学当時は、4年間で卒業して教員になろうと思っていたのですが、在学中に海外に1年間留学したいと考え、教育学をイギリスの大学で学びました。実際に海外に出てみると、自分にはまだまだ知識が足りないと実感し、帰国した4年生の夏に大学院に進むことを決意。「理論と実践の往還」という理念に惹かれ、早稲田の教職大学院を選びました。進学後は、多岐にわたる教員の授業以外の仕事をしっかりと学ぶことができたので、進路選択は正しかったと実感しています。

田代 幼少期から小学校の先生を目指していて、大学では幼児教育と小学校の教育を学びました。4年生で教員採用試験を受け、そのまま教員になろうと思っていたのですが、6月の教育実習で「このまま本当に教壇に立って良いのだろうか?」と不安になり、早稲田の教職大学院への進学を決めました。入学時には先輩が歓迎パーティーをしてくれたり、みんなで食事をしたりして、内部進学者の人たちとも分け隔てなく関係を築くことができました。

藤平 もともと歴史を教えたかったので、専門的に教えられる高等学校の志望だったのですが、大学4年生の時に受験した教員採用試験がうまくいかず、進路を迷っていました。そうした中、たまたまボランティアで小学校に行く機会があり、教科指導と生活・進路指導を行う中で、教科以外の部分に教育的意義を感じたんです。4年生の11月のことだったのですが、先輩に相談して教職大学院の後期日程で受験をし 、ギリギリで滑り込みました。

▲法政大学 文学部から進学した1年生の今野創太さん。中学校・高等学校の英語を志望

 

校種・教科の異なる履修生と教育能力を高め合う

早稲田大学の教職大学院の良いところは、どこだと思いますか?

藤平 私立大学の中では人数が比較的少ないのが早稲田の教職大学院。そのため、情報交換など、履修生同士の密なコミュニケーションが可能です。

植村 他大学では、教職大学院の中で教科ごとのコース制となっているところもあります。早稲田の場合そのような区分けがなく、教科の垣根を超えて、幅広い学生とともに学べる環境になっています。

田代 ゼミのようなくくりもないので、志望する学校種が異なる人が同じ授業を受け、コミュニケーションをすることも特徴です。模擬授業やグループワークで、立場の異なる人の意見を聞くことができます。

今野 教科や学校種が異なる履修生に出会えるのは魅力的です。私は英語志望のため、学部時に教職の大学院か、英語学系の大学院か、どちらに進むか迷っていました。学部が文学部だったので、教育そのものを深めたいと教職大学院を選んでいたのですが、専門領域の大学院では出会えない多様な人々から刺激を受けています。

大津 早稲田は、指導する教授のバリエーションが豊かだと思います。クラスのくくりがないことで、幅広い教授の知見を学べます。

今野 そもそも教育学部を設置していない私立大学が多い中で、早稲田は珍しい存在ですよね。教育学部がある大学は、必然的に教育系専門の教授が集まります。そこも良い点です。

藤平 校長など、一度現場を経験された上で研究職についている先生も多いように感じます。実践的な指導を受けられるような知見がそろっているんですね。

植村 実習の形式も、大学院ごとにかなり違うようです。教科を教えることにフォーカスしている大学院が多い中で、早稲田は教科指導に加え、職員会議や学年会議に出席の機会が与えられることもあり、校務や学級経営を含む教員の資質を高められます。教員の仕事は幅広く、授業だけでは生徒への理解が深められない部分が多いので、総合的な実践力を高められたことは、必ず将来役立つと思いました。

※当座談会は、撮影時のみマスクを外すなど、十分な新型コロナウイルス感染症予防の上実施しました。

 

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