2023年4月期決算のJ-REITの収益性について分析しました。
・NAV倍率
2023年4月期は米連邦準備理事会(FRB)が近く利上げを停止して、早期に利下げを開始するとの見方などから投資家心理が改善したことから、東証REIT指数は1,800ポイント台を回復し、月初は2月以来の高値まで上昇しました。ただ、米雇用指標が市場予想を下回ったことを受け、景気減速懸念から投資家心理が悪化し、売りに押されました。その後はもみ合いが続きましたが、FRBによる利上げの長期化観測が後退し、投資家心理が上向いたことから買いがやや優勢になりました。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ長期化への警戒が後退したことや、割安感からの買いも入り、月末にかけて再び上昇し、東証REIT指数は年初来高値に迫りました。
いちごオフィスリート投資法人はスポンサーによる自己投資口の取得やスターアジアとのバトルに参加しようとする投資家の影響で投資口がえらいことになっています。決算説明会資料の中でも、いち
ごオフィスのさらなる成長に向けた支援ならびに投資口価値の向上に対しスポンサーとして力強いコミットメントを示す的な表明がありますが、スポンサーがJ-REITに依存するビジネスモデルであるため「スポンサー」としての信頼性は薄いと思っています。
・含み益
含み益は順調に増加傾向にあるようです。特に2023年4月期は純粋に鑑定評価額が増加した物件が多いようです。NTT都市開発リート投資法人、積水ハウス・リート投資法人、スターツプロシード投資法人、トーセイ・リート投資法人等レジテンスを保有しているためレジデンス物件を中心にキャップレートが低下しているため含み益は緩やかに増加しています。キャップレートとは運用物件の資産価格と資産から得られる純収益の比率で、還元利回りと呼ばれます。 計算式は「キャップレート=年間の純収益÷不動産価格」となります。 キャップレートが下がっているということは不動産価格は上昇します。(低い利回りでも高い不動産価格でも不動産投資したいというニーズがある)このキャップレートを見ていると不動産の需要はこれからも続くと思ってしまうんですよね。それがレジデンスからやがてオフィスビルにも波及してくると感じてしまうのです。ですが、実際オフィスビルの場合はリーシングに中々結びついていないのでキャップレートはあくまでも参考程度が良いと思います。
星野リゾート・リート投資法人は、スポンサーの星野リゾート運営物件の好調な運営実績と、星野リゾート以外の運営物件の足元の需要回復が反映され、不動産鑑定評価額等は全体的に上昇しました。
ケネディクス・オフィス投資法人は2023年4月期のリーシング注力物件をポルタス・センタービル、KDX武蔵小杉ビル、KDX東品川ビルに絞っており、それぞれ稼働率は上昇しています。ポルタス・センタービルは約666坪の解約により、2022年9月の稼働率は71.8%に低下する見込みだったもののテナントニーズの掘り起こしに注力たことで約582坪の埋め戻しに成功し、稼働率は87.1%まで回復しました。KDX武蔵小杉ビルは、2022年9月の約720坪の解約により、稼働率は81.7%に低下しましたが、約194坪をリースアップし、稼働率は86.6%まで回復しました。2023年5月末に360坪の解約が生じるものの、フロア分割等テナントニーズに柔軟に対応し、2023年6月に90.2%、2023年10月に94.4%まで回復する見込みとなっています。KDX東品川ビルは 2023年5月の約667坪の解約により、稼働率は一時的に69.0%に低下していましたが、テナントニーズに柔軟に対応することにより、1フロア約163坪の早期埋め戻しに成功し、2023年6月に76.6%まで回復しています。共通して「テナントニーズ」に上手く対応できたということなのですが、テナント候補も買い手市場なのをいいことに調子のいいことを言ってきているオフィス賃貸のマーケット状態だというのが最近の状況ですね。テナントに寄り添うことはケネディクスのキャラクターでは無いので合併の負ののれんを利用してこれらの物件はとっとと売却する可能性もありそうです。
同じくオフィス系のトーセイ・リート投資法人では全体の稼働率は96.4%と、前期末比で△0.2ポイント低下し、オフィス稼働率は、分割対応や増床ニーズの取り込みにより、前期末と同じく94.6%で着地しました。住宅稼働率は、3月のテナント入替等の要因で前期末比△0.2ポイントの97.2%、商業施設は飲食店等の退去により前期末比△2.3ポイントの97.7%となっています。
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