写真家がおすすめする、秋〜冬の北海道の絶景7選|特集|【公式】北海道の観光・旅行情報サイト HOKKAIDO LOVE!

写真家がおすすめする、秋〜冬の北海道の絶景7選

写真家がおすすめする、秋〜冬の北海道の絶景7選

北海道では次の季節の足音がもうそこまで聞こえています。北国だからこそ、秋・冬の北海道ではさまざまな絶景と出会うことができ、ぜひ写真に撮っておきたいものです。そこで夏に引き続き、これからの季節におすすめの絶景スポットを、北海道でプロカメラマンとして第一線で活躍する岸本さんにお聞きしました。 防寒対策をしっかりして、カメラと一緒に、まだ見ぬ北海道の絶景を見に行きましょう!

選んでくれたのはこのお方!札幌在住の写真家、岸本日出雄(きしもと・ひでお)さん

<プロフィール>

北海道網走国定公園サロマ湖のある佐呂間町出身。株式会社札幌コマーシャルフォト代表。(公)APA日本広告写真家協会会員、日本写真芸術学会会員、日本自然科学写真協会会員、北海道豊頃町観光大使(ジュエリーアイス)

北海道の大自然とそこに棲む野生動物、野鳥などの生命力と美に魅了され「命、一瞬の輝き」をテーマに国内外に発信している。2018年に発表した写真集「ジュエリーアイス」が海外で好評を博す。ロンドンワールド展(審査員特別賞)、スイスローザンヌなどで展示されるほか、マルタ共和国芸術祭に招聘される。ジュエリーアイスポスターが日本観光ポスターコンクールにて3年連続入賞。

赤岳銀泉台・層雲峡の紅葉

「日本一早い紅葉が見られることで知られる紅葉の名所」と岸本さんが太鼓判を押すのが、大雪山系・赤岳の登山口である銀泉台の紅葉。「年によって変動はありますが、例年9月15日から22日が紅葉のピーク。この約一週間が勝負です。この期間を逃すと山に霜が降り、色味が悪くなります」と教えてくれました。標高1,517mのところにある銀泉台は、断崖と紅葉とのコントラストが美しく、見る人を圧倒します。

紅葉時期は銀泉台まで車で行くことはできず、大雪レイクサイトの臨時駐車場からシャトルバスで移動します(約35分)。下車した後は、森林パトロール事務所から赤岳の登山道に入り、登山道を進みます。30分ほど歩くと写真のような紅葉しない針葉樹の緑が残る中に、ダケカンバやウラジオナナカマドなどが紅葉した一枚の絵画のような美しい絶景に出会えるといいます。


そこから15分ほど歩くと、さらに深みのある風景が広がります。赤と黄色、オレンジ、緑の配色がよく、思わず見入ってしまう美しさ。「ここは僕が銀泉台で一番好きな場所で、勝手に"紅葉の赤い滝"と呼んでいます。真っ赤な紅葉が滝のように流れ落ちて見えます」と岸本さんは独自の着眼点でその魅力を切り取ります。紅葉を楽しむにはこの銀泉台〜第一花園までがおすすめとのことです。


岸本さんおすすめの時間帯は、早朝の6:00ころ。条件が合えば雲海がかかったこんな写真も期待できそうとのこと。「眼下に広がる雲海と紅葉の様子は、この時期にしか撮影できない貴重な風景。実際に見ると本当に感動しますよ!早起きしてぜひシャトルバスの始発に乗っていきましょう」。登山道は滑りやすい場所もあることから、トレッキングシューズがおすすめです。


銀泉台の帰りに立ち寄ってほしいのが、大雪レイクサイトから車で約20分のところにある層雲峡温泉。岸本さんは「銀泉台と合わせてぜひ撮影しておきたい絶景スポット。温泉街のそばには層雲峡の象徴の一つである柱状節理(ちゅうじょうせつり)といわれる断崖の峡谷があります。それを自生する木々が紅葉し、峡谷全体が黄金に輝く美しい写真を撮ることができます」と、その理由を話します。銀泉台と同様、早めに秋を満喫するためにぜひ行っておきたいおすすめの紅葉スポットです。

能取湖のサンゴ草

山を彩る木々と一味違う紅葉を味わえるのが、網走市街の北に広がる能取湖(のとろこ)。8月下旬〜9月中旬頃、湖に広がる紅葉の姿を楽しむことができます。湖を紅葉に染める正体は「サンゴ草」という植物。「能取湖は日本一の規模を誇るサンゴ草の群生地として知られています。サンゴ草が湖面を燃えるような真紅で彩る様子は、秋ならではの絶景ですよ」と、岸本さんは嬉しそうに教えてくれます。

能取湖サンゴ草群落は、卯原内(うばらない)・能取・美岬・平和の4つの地区があり、中でもおすすめなのが、最大規模である卯原内群生地。国道のすぐそばにあるためアクセスも良く、敷地内には木製の遊歩道が設置されており、散策しながら紅葉を楽しむことができます。「周辺に高い山や建物がないため空が広く、湖の青とサンゴ草の赤が織りなすヴィヴィッドな写真が撮影できます」と岸本さんはいいます。 


サンゴ草は、アッケシ草という一年草。北海道指定天然記念物に指定されている希少な植物です。葉が無い植物で、普段は緑色ですが秋になると茎が紅葉するためこのような真っ赤に色づきます。高さ15cm〜30cmでサンゴに似ていることから、サンゴ草と呼ばれています。遊歩道からは、このように至近距離からサンゴ草を撮影することができます。

 

能取湖は海と繋がっており、紅葉が終盤を迎える10月ころには、サンゴ草が大潮により沈んで見えにくくなるといいます。そのため、ベストシーズンは9月20日前後。 時間帯によってその表情が異なり、鮮明な写真を撮りたいときは昼間、幻想的な写真にしたいときは早朝や夕暮れ時に行くと岸本さんは教えてくれました。水場ということもあり蚊が多いので、虫除けスプレーを持参して散策を楽しみましょう。 


「サンゴ草は一時期、土壌改良の影響などから育成不良に陥りましたが、地元と学官の再生事業の取り組みにより、現在は見事に復活し、年々紅葉のスケールも多くなっていると思います。年々美しさが増すサンゴ草をぜひ楽しんでほしいですね」と話す岸本さん。真っ赤な絨毯のように広がる美しい姿を毎年楽しめるよう、見る人・撮る人がルールを守って楽しみたいものです。

ニセコの紅葉

新千歳空港から車で約2時間の場所にあるニセコエリア。ニセコといえば、冬の白銀の雪山がイメージされますが、紅葉に色づくニセコパノラマラインや神仙沼など、雪に覆われる前のニセコも大自然が残る景勝地で、紅葉スポット・絶景が点在します。岸本さんも「リゾート地でありながらも、手付かずの自然も楽しめる貴重な場所」と、秋のニセコの魅力を語ります。

ニセコイワオヌプリとアンヌプリというニセコの山の間を通る道道58号倶知安ニセコ線(通称エコーライン)は、手つかずの自然が楽しめるドライブコース。9月中旬から色づき始め、下旬ころに紅葉のピークを迎えます。「車で走っているととても気持ち良い道。色づいた木々のコントラストが山肌を美しく彩りますよ」と岸本さんはいいます。ニセコアンヌプリゴンドラを利用すると、標高1,000mの展望台から羊蹄山、洞爺湖等の雄大な大パノラマが楽しめます。


走行していると見えるのがニセコの名峰の一つ、アンヌプリ。岸本さんは「登山道が整備されているので、登山初心者も多く挑戦する人気の山。モミジやナナカマド、ダケカンバなどが鮮やかに色付き、赤や黄色の木々が緑の山を美しく染めます。近くには五色温泉郷もあり、紅葉鑑賞後にゆっくりくつろぐのもいいいですね」と岸本さんもおすすめ。紅葉を眺めながら温泉でほっと一息入浴も秋らしく季節の楽しみです。

紅葉ポイントが多数存在するニセコで、岸本さんおすすめのもう1つの場所が共和町の標高約770m地点の高地にある神仙沼。「神様や仙人が住むような場所」という由来からその名がつけられたといいます。「紅葉が美しいことで知られ、ダケカンバやモミジなどの紅葉が素晴らしいです。晴れた日はきれいな沼が水鏡となり、紅葉と青空が写り込んだ神秘的な写真が撮影できることも。まさしく神や仙人も惚れ込む場所ですね」と岸本さんは笑顔で語ってくれました。


神仙沼には木で作られた遊歩道が設けられており、ゆっくりと秋色に染まる沼の散策が楽しめます。「撮影に適した紅葉のピークは9月下旬ですが、ここの紅葉は終わりかけも素晴らしく、晩秋には全体的に色味の落ちた黄褐色の風景も撮れます。早朝、気温が低ければ、薄氷が張った水面とそこに浮かぶ枯れ葉といった繊細な様子を撮影するのもいいですね。

上富良野の秋〜冬

夏のラベンダー畑が有名な富良野エリア。秋の黄金色に輝く景色や冬の野生動物(キツネ)など、夏とは一味異なる富良野の顔も見逃せません。岸本さんのおすすめは上富良野地区。夏が終わり、落ち着いて大自然の魅力を間近で堪能することができます。岸本さんも「秋から冬、そして真冬を迎える自然風景とそこに住まう野生動物のありのままの姿を見てもらえたら」と、その魅力を語ります。

層雲峡や赤岳銀泉台と同じく、紅葉が早いことで知られる十勝岳温泉。上富良野市街から車で約30分の場所にあり、近くには世界的にも有名になった「美瑛・青い池」もあります。十勝岳温泉は、9月上旬頃には紅葉が始まり、9月末から10月上旬にピークを迎えます。荘厳な山々を彩る紅葉は、緑の山に突如落とされた絵具のように鮮やかに輝き、岸本さんも毎年のように撮影に行くほどお気に入りの場所の一つです。


1枚目の写真とこの写真を撮影した場所は、十勝岳温泉にある「凌雲閣」。北海道最高所の温泉地にあり、写真や登山好きの人のために施設の一部を開放しているといいます。「ここから山々を大パノラマで眺望できます。紅葉を望む露天風呂もあるので、撮影後は温泉を堪能するのもおすすめ」と岸本さんは楽しみ方をアドバイス。「10月後半になると初雪が降るため、紅葉と雪が混じった絶景も。秋から冬へ移る自然の姿に感動することでしょう」。


上富良野をはじめ、冬の北海道は各地でキツネの姿を見ることがあります。「白銀の大地に太い尻尾をたくわえたキツネはとても絵になります。凛としていてかっこいいですよ!野生のキツネは人を警戒してすぐ逃げるので、見つけたらすぐに撮影すると良いでしょう。望遠レンズがあると、距離がある場合でも撮影できます」と岸本さんはいいます。


さらに「もしキツネが近くに寄ってきても、落ち着いて撮影しましょう。撮影できたらラッキーですが、ワイドレンズで表情を切り取るといいですね」と教えてくれた岸本さん。「野生動物への餌やりは近年、問題になっています。かわいいからといって触れ合うのではなく、写真を撮ることで楽しんで欲しいですね」と優しい目で語ってくれました。

ジュエリーアイス(豊頃町)

岸本さんの代表作の一つとして知られるのが、海辺に突如宝石のようにきらめく氷が出現する「ジュエリーアイス」。1月中旬~2月末、道東の豊頃町大津にある十勝川河口付近の砂浜に現れるこの氷の宝石は、神秘的な表情で見るものに感動を与えてくれます。「何度行っても、何度撮っても、それぞれの氷に新しい美しさが宿る。毎回さまざまなおもしろさがあります。自信を持っておすすめしたい場所です」と岸本さんも太鼓判。

十勝川を覆いつくす氷が太平洋に流れ出し、河口の大津海岸に打ち上げられる氷の塊が、太陽の光を受けて美しく輝く自然現象、それがジュエリーアイスです。ジュエリーアイスの観光大使も務める岸本さんは「荒波にもまれるうちに角が取れて、透き通ったクリスタルのような氷になります。流氷と似ていますが色が異なり、白い色をした流氷に対してジュエリーアイスはクリスタルのような透明色が特徴です」とジュエリーアイスの魅力を教えてくれました。


夜明けと共に河口付近には、大小さまざまな大きさの氷塊が並びます。朝日に照らされて、海岸に打ち上げられた透明な氷がきらきらと輝く様子を楽しめます。岸本さんはこの美しさに魅せられて今年で10年。カメラマンの仲間とともに多くの人にこの素晴らしさを発信しようと思い、毎年さまざまな表情を切り取ってきたといいます。こうした取り組みもあり、2011年には米紙ニューヨーク・タイムズに掲載され、世界的にも注目されるように。


ジュエリーアイスそのものに焦点を当てた写真のほかにも、波打ち際にあるという特性を生かした写真も撮れるという岸本さん。「スローシャッターで切ると、力強く押し寄せる波のゆらめきと、ガラス細工のように繊細なジュエリーアイスの対比がおもしろい写真が撮影できます」と岸本さん。カメラ・写真好きの人はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。


岸本さんが「奇跡に撮れた一枚」と称するのがこの一枚。浜辺を歩いていると、光のプリズム効果によって虹色に輝くジュエリーアイスを発見し、急いで撮影したといいます。「ジュエリーアイスは高い透明度のため、光の当たる角度によってさまざまな色が出ます。また、時間によってその色が変化するのでおもしろいですよ」と話す岸本さん。運が良ければこのような一枚も狙えるかもしれません。奇跡の一枚を探しに、ぜひジュエリーアイスに会いに行きましょう。

更別村の霧氷

とかち帯広空港から車で約10分。十勝南部に位置する更別村の勢雄(せお)地区で見られるのが、凍てついた平野部一面に輝く真っ白い霧氷です。1月から2月にかけての厳冬期、氷点下20℃以下になる寒い朝に霧氷が発生し、周囲の木々を白く彩り幻想的な世界を創出するといいます。岸本さんも「一般的に冬山で見られる霧氷ですが、平野部で手軽に見られます。一面すべての木々が凍ったノスタルジックな絶景は一見の価値がありますよ」とおすすめします。

小川の水面から立ち上る水蒸気が氷となり、白色や半透明の結晶が木々に付着することから出現するという霧氷。こうした気候条件と植生が重なるのは珍しいといいます。「自然のアート作品のような霧氷を求めて訪れるカメラマンも多いです。天気がよければ、朝焼けの赤と霧氷の白のコントラストのある一枚も期待できます」と岸本さんは話します。


この霧氷の撮影は夜が明ける30分前から、太陽がのぼった30分間くらいの間がベストという岸本さん。「この時間以降は太陽光や気温の上昇で、霧氷は溶けて消えてしまいます。限られた貴重な時間でしか見られない絶景ですが、この儚さも魅力の一つかもしれません。実際に見ると "しばれる"(北海道弁で厳しい寒さの意味)のも忘れるほど、川霧と霧氷の美しい世界が待っていますよ」と教えてくれました。


太陽が登ったあとは、こんな白一色に染まる写真も。凛とした木々の佇まいに、思わず息を飲んでしまいます。「風があるとすぐに消えてしまうので、無風の日を選ぶとよいでしょう。車で行く方が多いと思いますが、外はとても寒いので、外気温と車内の温度差でレンズが曇らないように、撮影前に早めにカメラを外に出しておくことをおすすめします」というアドバイスも。


太陽が低いうちは、このように木々と太陽のコラボレーション感のある写真も楽しめます。「撮影時間としては限られていますが、さまざまな霧氷の表情が見られる場所です。ジュエリーアイスのスポットである豊頃町大津とは車で1時間弱の場所にあるので、合わせて訪れでもいいかもしれません」と話す岸本さん。それぞれの絶景と出会えることを期待しながら、冬の絶景めぐりを楽しみましょう。

鶴居村のタンチョウ

岸本さんが冬に撮るのが、国の特別天然記念物に指定されているタンチョウ。道東エリアを中心に多く見られますが、岸本さんは鶴居村で撮影することが多いのだとか。「鶴がいるから鶴居村。鶴居村の村鳥になっています。名前の通り、たくさんのタンチョウが集まります」と岸本さんは鶴居村で撮影する理由を教えてくれます。村では寒さの中でのびのびと生きるタンチョウたちの姿を見ることができます。

鶴居村でタンチョウが見られるポイントは数箇所あり、そのうちの一つが音羽橋。タンチョウのねぐらとなっており、朝晩多くのタンチョウたちが身を休めます。タンチョウはキツネなどの外敵から身を守るために水場で休息することが多く、この音羽橋は最適な場所と岸本さんは教えてくれました。川の水温が低いため、一本足で休むのも特徴だそう。音羽橋はそんなタンチョウたちを脅かすことなく、リアルな姿を見られる貴重な場所といいます。


おすすめの時間帯は早朝か夕方という岸本さん。「厳冬期の早朝には、川霧に浮かぶタンチョウの姿が幻想的な一枚が撮影できます。給餌場へ向かって元気に飛び立つタンチョウの姿も。また、夕方は給餌場から戻ってくる姿を収めるのに最適」と話します。さらに、タンチョウたちのためにゴミは持ち帰りフラッシュは使用しないのがお約束と教えてくれました。


タンチョウは頭上に裸出した赤色の部分があるのが大きな特徴。「繁殖期のいわゆる"求愛ダンス"も見られますが、二羽がふざけあっているだけということもあります。じゃれあうタンチョウのかわいい姿を見ると思わず笑顔になりますよ」と、岸本さんは楽しみ方のコツを教えてくれました。


朝、餌を求めて音羽橋を飛び立ったタンチョウたちが向かう場所の一つが、(公財)日本野鳥の会が運営している「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」。ここへ行くと、タンチョウたちが餌をついばみ、のびのびと遊ぶ様子が見られます。「タンチョウの鳴き声はカッカッカッですが、外気温が低いと鳴く時に出る息が白息となって現れますので、その姿を写真にすると、呼吸を可視化したような面白い写真になります」と教えてくれました。

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