トライアンフの「ストリートトリプルRS」を試乗インプレ!現在トップクラスのファンスポーツモデル
- 掲載日/2022年06月20日
- 取材協力/トライアンフ モーターサイクルズ ジャパン
取材・文・写真/小松 男
Moto2レーサー直系のエンジンを持つスポーツモデル
2008年、当時トライアンフがラインナップしていたフルカウルスポーツモデル、デイトナ675のネイキッドバージョンとして登場した初代ストリートトリプル。すでにトライアンフのフラッグシップストリートファイターモデルとして人気を博していたスピードトリプルの弟分的な存在という立ち位置ではあったが、むしろ操る楽しさはストリートトリプルの方が大きく、今もなお幅広い層に支持されるロングセラーモデルへと成長した。
トライアンフの中間排気量のトリプルエンジンは、世界最高峰ロードレースに準ずるMoto2クラスにおいて2019年から公式採用されており、ストリートトリプルにはその直系のエンジンが搭載されている。その中でもエンジンパフォーマンスを引き上げられ足まわりにグレードの高い装備がもたらされた最上位モデルとなるストリートトリプルRSを今回は紹介する。
ストリートトリプルRS 特徴
幅広いライダーにお薦めしたいネイキッドスポーツの完成形
ストリートトリプルRSは、2017年に行われたストリートトリプルのフルモデルチェンジでラインナップに加わった。2020年にはマイナーチェンジが施され今に至っている。グレード的な解釈をするとスタンダードモデルにあたり排気量が抑えられていた”S”、そのRSと排気量を同じとしながらも出力が抑えられた”R”、そしてフラッグシップグレードの”RS”となり、現在はSの販売は行われておらず、日本向けローダウン仕様とされたRと、今回のRSのみとなっている。
このことを側面から見てみると、昨年初頭にトライアンフのロードスターセグメントには、ボトムアップモデルとしての意味も持たされたトライデント660が新たに加わっていることが分かる。このことにより、ストリートトリプルのスタンダードパートを賄っていたSグレードがラインナップから省かれたと考えていただいて間違いはないだろう。
さて肝心のストリートトリプルRSなのだが、Moto2エンジン開発チームによってアップデートされたという765ccトリプルエンジンは最高出力123馬力、最大トルク79Nmを発生、これはRと比べ5馬力、2Nm高い数値となっている。さらにリアサスペンションにはオーリンズ製のフルアジャスタブルショックがセットされているほか、ブレンボ製フロントブレーキキャリパーも上位グレードが採用されている。これらの装備からも、より上質なスポーツライディングに特化した仕上がりとされていることが分かる。それでは実際に走らせ、テストを行っていくことにする。
ストリートトリプルRS 試乗インプレッション
刺激的な乗り味と、毎日乗りたくなる心地よさ
ストリートトリプルRSは、カラースキームからしてスポーツ度の高い印象を受けるものだ。車体に跨ると、日本市場に向けたローダウン仕様とされたRと比べて45mm高い、825mmのシートであるものの、スリムで軽量な車体なので足つき性に関しては気になることはない。イグニッションキーをオンにすると、フルカラー5インチTFTディスプレイが目を覚まし各部のキャリブレーションを行う。RグレードはLCDディスプレイが用いられているので、走り出す前から両者の違いを感じさせてくれる。
エンジンを掛けて発進する。相変わらずトライアンフのミドルトリプルエンジンはサウンドが良い。吸排気、エンジン、すべての音が心地よく体に響いてくるのだ。環境性能も意識したセッティングであることも要因のはずだが、ゼロスタート時のクラッチが繋がる一瞬だけ、エンストを誘う回転の落ち込みが感じられた。しかしそれもクラッチワークの慣れでカバーできるもの。それに走り出してしまえばクイックシフターのおかげで、レバー操作は基本的に行わないで済む。
低中回転域でのトルクもしっかりしているので市街地でも扱いやすい。軽量であり鋭く倒しこめるので、交差点一つパスするのも楽しく思えてしまう。首都高速から中央自動車道を繋ぐ高速道路のステージでは、1万2000回転からのレッドゾーンまで一気に突き抜けるような力強さをダイレクトに得られ、それには官能的な印象を受けるとともに、サーキットでも是非走らせてみたいと思わせてくれた。
ワインディングロードではゆっくり走らせても、スピードを上げても決まったラインをトレースできる上、どのように走らせても楽しくそして気持ちが良い。フロントフォークを立ててセットすることが多いストリートファイター系ネイキッドスポーツは、急なフロントの切れ込みなどトリッキーな動きをするモデルも中にはあるのだが、ストリートトリプルRSはそれをみじんも感じさせないどころか、強烈な旋回性能を持っており、特に足まわりの動き、アスファルトを食らいつく接地感は格別なものがある。トータルバランスの良さに脱帽するほどである。
私は直近1年半の間に、ストリートトリプルR、トライデント660、さらにスピードトリプルRR、RSとトライアンフのロードスターシリーズのテストを行ってきた。その上で今回のストリートトリプルRSを考えてみると、プレミアム感の強いライトウエイトスポーツモデルとして、そして公道をメインに使用することも踏まえて、最も完成しているモデルになっていると思えた。もちろん好みの面もあるだろうし、ライディングスタイルによっては他のモデルの方が、より扱いやすいと感じるライダーもいるかもしれない。価格面に関してもこれほどの仕上がり、そして装備でありながら146万5000円というのはお買い得感すら持つ。私は全方位死角なし、これぞスポーツバイクの決定版として人に薦めたいと思う。
ストリートトリプルRS 詳細写真
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