自然と親しむ
天川村の自然
奈良県と三重県にまたがる大台ヶ原・大峯山・大杉谷は、人が自然と共生しながら“持続可能な暮らし”を目指すモデル地域であるとして「ユネスコエコパーク」に認定されています。世界自然遺産が、手つかずの自然を守ることを原則とする一方、ユネスコエコパークは生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)を目的とする取り組みです。
「ユネスコエコパーク」には「核心地域」「緩衝地域」「移行地域」の3つのゾーンがあります。
「核心地域」は多様で美しい生態系が保たれている、原生の自然が息づく地域です。“水”を生み出す水源の地であり、かけがえのない“命が始まる場所”
「緩衝地域」は「核心地域」を取り囲むように設定された地域で“緩衝”の役割を果たします。ハイキングや登山を通じて自然の営みを考えるきっかけとなります。
「移行地域」は人々が自然の恵みを受けながら、ざまざまな社会活動を営む地域です。昔から続く林業、古くから地域に伝わる保存食、今なお信仰に支えられる温泉街、自然の営みをいただく知恵とたくましく暮らす人々の姿は“本当の豊かさ”を問いかけます。
ここ天川村は、山岳・清流・渓谷など、美しい大自然に恵まれ、村全体がユネスコエコパークに指定されています。
峻山名峰の連なる山岳、清らかな河川、深い渓谷など、美しい大自然に恵まれた天川村は、面積の約1/4が吉野熊野国立公園に指定されています。
なかでも「近畿の屋根」と称される大峯山脈は、近畿最高峰の八経ヶ岳(1,915m)を擁し、日本百名山に数えられています。
この山脈から流れ出す清流により天川村は「水の郷百選(国土交通省)」に選ばれるとともに、洞川湧水群が「名水百選(環境省)」に選ばれています。
100万年前ごろまで陸上に広がっていた大平原がしだいに隆起し、約2,000mも上昇しました。その証として山上ヶ岳や弥山、狼平には大平原の名残の平らな地形が残っています。
洞川地区では海底から押し上げられた石灰岩石によって鍾乳洞やミネラルを多く含む名水が生まれました。弥山・八経ヶ岳付近は氷河期の生き残りである針葉樹のトウヒやシラビソの原生林、
国の天然記念物に指定されているオオヤマレンゲ自生地が広がるなど、特異な植生がみられます。
泉の森
樹齢300年を越える御神木の奥にある洞穴から湧き出している清水です。洞川地区では昔から村の入口の鬼門に守護神をまつって疫病や悪人が村へ入るのを防いでおり、 表鬼門にあたる泉の森には大聖権現の社や六地蔵と不動明王の小祠もあり、守護神として祀られています。洞川では古くから「神の水」とされ、大切に守られてきました。
神泉洞
洞窟の間を流れるこの清水は、水源も流れていく先も定かではありません。その神秘的な美しさにより「神の泉」として、村人の信仰の対象となっています。 現在は関係者によって管理されており、一般の方が立ち入ることはできません。
地中探検気分で夢の宮殿へ
鍾乳洞
洞川地区には大小の洞窟があります。いずれも石灰岩地帯にあって、岩石の割れ目にしみこんだ水が、長い年月の間に少しずつ石灰岩を溶かし大きく広がってつくりあげたものです。
自生地は国の天然記念物に指定
オオヤマ
レンゲ
オオヤマレンゲのオオヤマとは「大峯山」の意味であり、別名を「天女花」といいます。深山幽谷に舞う弥山のご祭神とされる弁財天女を思わせる芳香のある花を咲かせるところからこの名があります。 1928年(昭和3年)に弥山・八経ヶ岳周辺一体で国の天然記念物に指定されました。近年、鹿の食害で絶滅に近い状況になりましたが、防鹿柵を設置して保全に取り組んでいます。