経済社会開発
ECONOMIC AND SOCIAL DEVELOPMENT
多くの人は国連を平和と安全の問題に結びつけて考えるが、実際には国連の資源の大部分は「一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の条件」を促進するという国連憲章が定めた誓約の実行に振り向けられている。国連が行ってきた開発努力は世界の何百万という人々の生活や福祉に大きな影響を与えてきた。こうした国連の努力を導いてきたのが、世界のすべての人々の経済的、社会的福祉が確保されてはじめて恒久的な国際の平和と安全が達成されるとの信念であった。
1945年以来地球規模で多くの経済的、社会的変化が起こった。その方向性や形態は国連の活動から大きな影響を受けてきた。国の開発努力を支援し、それに必要なグローバルな経済環境を育てるには国際協力は欠かせない。国連はコンセンサス達成のためのグローバルな中心的機関として、そうした国際協力のための優先順位や目標を設定してきた。国連は、一連のグローバルな会議を開催し、国際的な課題に関する重要な、新しい開発目標を策定し、促進するための場を提供する。国連は女性の地位の向上、人権、持続可能な開発、環境保全、良い統治のような問題を開発のパラダイムに組み込む必要を説いてきた。これまでの年月に、開発についての世界観が変わった。今日、持続可能な開発が住む場所に関係なく人々の生活を改善するための最善の道であるとの合意が見られる。すなわち、繁栄と経済の機会、より大きな社会福祉、環境の保護を促進する開発である。
2000年のミレニアム・サミット(Millennium Summit)で、加盟国は「国連ミレニアム宣言」を採択した。宣言は、2015年までに達成すべき測定可能な八つの目標を掲げた行程表に具体化された。「ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs」として知られるものである。開発目標が目指していることは、極度の貧困と飢餓を撲滅すること、初等教育の完全普及を達成すること、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントを促進すること、幼児死亡率を下げること、妊産婦の健康を改善すること、HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病と闘うこと、環境の持続可能性を確保すること、開発のためのグローバル・パートナーシップを発展させること、である。
「ポスト2015年開発アジェンダ」について勧告する目的で2012年に設置されたハイレベル・パネルは、2000年以降の成果を検討した。極度の貧困にある人々の数は5億人少なくなり、毎年300万人の子どもたちの命が救われている。ハイレベル・パネルはまた、広範にわたる人々との協議も行った。120カ国の5000の市民団体、30カ国の250人の最高経営責任者(CEO)、それに農業従事者、移住者、貿易業者、若者、宗教的奉仕活動グループ、労働組合員、アカデミックス、哲学者、その他大勢の人々である。2013年5月、同パネルは、経済成長、より良い政策、MDGs に対するグローバルなコミットメント、これら三つの組み合わせによってかつてないほどの発展を可能にすることができたと報告した。新しい開発アジェンダは、実際的には貧困、飢餓、水、衛生、教育、健康管理に焦点を当てながら、ミレニアム宣言の精神とMDGs の最善を引き継いで前進させるべきであるとの結論をパネルが述べた。2015年9月、世界の指導者は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」による17項の「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」を採択した。「2030アジェンダ」は2016年1月1日に公式に施行された。2030年までにすべての人のために貧困を終わらせ、地球を守り、繁栄を確保するという国連にとっての新しいコースである。その他、2015年に採択された三つの合意もグローバルな開発アジェンダの中で重要な役割を果たす。すなわち、開発資金に関するアディスアベバ行動目標、気候変動に関するパリ協定、仙台防災枠組みである。