ネパールの母子保健に関する指標の多くは、この20年ほどで大きく改善しています。2000年には出生1000人当たり79人だった5歳未満児死亡率は、2021年には出生1000人当たり27人にまで低下しました。同様に、妊産婦死亡率も、2000年の出生10万人当たり504人から2020年には174人に減少しています。しかしながら、低カースト層や遠隔地の農村部、都市部の貧困地域の子どもたちの最大28%が予防接種を受けていないなど、保健サービスへのアクセスの公平性にはいまだ課題が残ります。
気候変動による気温上昇と降雨量の増加は、マラリア、デング熱、チクングニア熱、日本脳炎といった蚊媒介感染症の蔓延を引き起こします。そうした病気の多くは人口の大部分が暮らすタライ平野や丘陵地帯で流行していますが、温暖化によって蚊の生息域が高地に広がることで、より多くの人々がリスクに晒される可能性があります。豪雨がもたらす洪水もまた、下痢など、汚染された水が原因で生じる水媒介感染症のリスクを増大させています。