健康学部とヨーロッパ学術センター(TUEC)、デンマーク・VIA大学が11月18日にオンラインで、「QOLヘルスセミナー」を共同開催しました。本セミナーはTUECの50周年を記念し、2020年度からQOLと健康に着目したテーマで毎年開かれています。5回目の今回は、「栄養的ストラテジーによる健康向上:デンマークと日本における事例」をテーマに実施し、約65名が聴講しました。
初めにTUECのヤコブ・スキュット・イエンセン事務長がセミナーの概要を説明。健康学部の菅野和恵学部長が開会のあいさつに立ち、「日本では若い世代の欠食や食事をスナック菓子で済ませるといったニュースが話題になり、高齢者の家族や介護者が食事のメニューに悩んでいるといった話も聞きます。健康と栄養の問題に対し、多くの情報を交換し、皆さんにとって実り多いセミナーになることを期待しています」と語りました。続いてVIA大学栄養健康学科のトリネ・ベントセン准教授とメッテ・イバーセン准教授が「デンマーク市政による高齢者訪問看護サービスとしての栄養実戦:推奨vs現実」をテーマに講演。「デンマークの在宅介護サービスでは国家レベルで栄養に関する推奨事項が決められており、体重の増減があった場合は栄養リスクの重要度を評価するスクリーニング検査も行われています」と説明。一方で、経済面や推奨事項の強制力の弱さ、携わる人々の知識を共有できるプラットフォームの不足といった課題を挙げ、国家による勧告や介護従事者のスキルアップの必要性を訴えました。続いて健康学部の安田純講師が「生涯を通した骨格筋のキーマンとなる戦略的タンパク質摂取マネジメントについて」と題して講演。毎食時に若年者では体重1kgあたり0.24g(体重60kgの人は14.4g)、高齢者では0.40g(体重60kgの人は24.0g)のタンパク質を摂取すると筋肉量の維持が期待できるといった研究成果を説明し、「タンパク質摂取はタイミングも重要」と語りました。また、植物由来の食べ物のみを摂取するベジタリアンやビーガンダイエットについても触れ、「温室効果ガスの排出量を大幅に削減できて環境にやさしい反面、体内で生成できない必須アミノ酸であるリジンの摂取量が少なくなるため、必ずしも健康にいいとはいえない」と説明しました。
講演後には、ヤコブ事務長の司会で質疑応答が行われ、「1日の食事の内、朝食のタンパク質摂取量が最も少ないとありましたが、簡単に摂取する方法はありますか?」「子どもや高齢者がプロテインバーやドリンクを摂取することについて」などさまざまな質問が寄せられ、3名の講演者が回答しました。