海洋学部の秋山教授らがまとめたマダコの養殖に関する論文が日本水産学会論文賞を受賞しました

海洋学部水産学科の秋山信彦教授、大学院地球環境科学研究科(博士課程)の鈴村優太さんらの研究グループがこのほど、日本水産学会論文賞を受賞。3月30日に東京海洋大学品川キャンパスで開催された春季大会で、表彰状を授与されました。この賞は、同学会が発行する論文誌『Fisheries Science』 と『日本水産学会誌』に掲載された報文の中から、特に優れたものが選出されます。

受賞した論文は、「マダコ用シェルターの適正間隙及び適正配置方法の検討」です。食材として古くから日本で親しまれているマダコは海外からの輸入量が多い一方、近年では欧州などでも広く好まれるようになり価格の高騰が進んでいます。その養殖方法に関する研究はさまざまな機関で進んでいますが、マダコは飼育時に小さな隙間があると逃げ出してしまうほか、狭いスペースで複数の個体を入れると共食いするため、同一水槽に大量に飼育することができません。多種多様な海洋生物の養殖手法の開発に取り組む秋山教授と鈴村さんら研究グループでは、大量飼育するためのマダコのシェルターを開発してきました。ポリ塩化ビニル製の板(PVC板)を用いて、マダコに適した板の向きと隙間の幅を調べた結果、板を縦にすることで、マダコのシェルターとしての利用率が上がることや、同一間隙を複数個体が排他的行動をとらずに利用することを明らかにしました。その結果、水槽からの逃亡や共食いがほぼなくなりました。

学会大会で表彰状を受け取った鈴村さんは、「権威ある学会から名誉ある賞を頂き、研究を支援して下さった皆さんに心から感謝しています。幼い頃から海洋生物に興味があり、子どものときに両親に『タコを飼いたい』と頼みつづけていた時期もありました。そのときの思いは今も変わらず、好きなものを思う存分突き詰められる環境に身を置くことができて幸せです」と笑顔で話します。秋山教授は、「今回の学会大会中に、シンポジウムにて本研究に関する講演をしましたが、会場には多くの研究者が集まるなど注目度の高さを実感しました。マダコの養殖には多くの課題がある中で、学生とともに一歩一歩着実に前進しています。さらなる成果を出し、社会実装へとつなげることで日本の食文化の発展に寄与していきたい」と語っています。