医学部と健康学部では4月17日と5月8日に、学術交流協定を締結している昭和薬科大学との共同による「多職種連携チーム医療演習」を初めて実施しました。この授業は、医師、看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師を目指す学生が各職種の役割を理解するとともに、それぞれの職種の特性を生かしながら連携してチーム医療を実現するための知識や技能、態度の修得を目指すものです。医学部医学科5年次生と同看護学科4年次生、健康学部健康マネジメント学科3、4年次生、大学院健康科学研究科の大学院生、昭和薬科大学薬学部薬学科6年次生約360名が、各学科の学生が混在した10名程度のチームを編成。WEBビデオ会議システム「Zoom」のブレイクアウトルーム機能を用い、2日間にわたって多様な視点から患者の事例について討議しました。
演習に先立ち、医学部の川田浩志副学部長(医学科長、内科学系血液・腫瘍内科学)、城生弘美副学部長(看護学科教授)、健康学部の中野いずみ学部長補佐(同学部の堀越由紀子教授が代読)、昭和薬科大学医療薬学教育研究センター長の廣原正宜教授があいさつ。川田副学部長は、「多岐にわたる複雑な問題を抱える患者さんに対して良質な医療を実践するためには、多種類の専門職によるチーム医療が不可欠です。ぜひ積極的に議論してください」と語りかけました。
学生たちは教員をファシリテーターとして、あらかじめ指定された事例について討議。患者の病態や診断、治療、ケアをはじめ、患者の希望や家族状況、経済状況といった心理的、社会的、倫理的問題などについても意見を交わし、チームとして目指す方向性を決定して発表しました。最後にファシリテーターが優秀な討議・発表をしたチームを選び、表彰しました。
医学科の中川暁子さんは、「他学科の医療へのアプローチや着眼点に刺激を受け、医学科の学生は社会福祉制度、薬学科の学生は治療法など専門外の領域についても積極的に調べ、議論を深めることができました。また、専門知識を生かすとともに足りないところを補い合うという多職種連携が患者中心の医療につながることも実感しました。今後は、よりチーム医療を意識しながらクリニカルクラークシップに取り組んでいきたい」とコメント。看護学科の手塚美緒さんは、「在宅療養を希望する独居・高齢のがん患者さんの事例でしたが、看護の視点から患者さんの希望優先を提案し、最終的には“患者さんが自分らしく生きられる治療や支援”で方針がまとまりました。各専門職の意見に真摯に耳を傾けるとともに自分の意見をしっかりと述べて議論をつくし、本人や家族に納得してもらえる方向を見出していくことの大切さを学びました」と話していました。
メディカルサイエンスカレッジ(伊勢原教育計画部)の濵田昌史部長(医学部医学科専門診療学系耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授)は、「厳しい現実ですが、医療に結果は保証されていません。だからこそ、患者さんや家族の意向を尊重しながら多職種が連携し、最善の方法を求めて努力し、話し合い、方針を決定していく過程が非常に大切です。今回はソーシヤルワークを学ぶ健康学部の学生の参加により、さらに議論の質が高まったと感じています。新型コロナウイルス感染症の拡大によりオンラインで実施しましたが、将来、過疎地と都市部を結んだ遠隔による多職種連携も想定される中、その先取りとなる演習にもなりました。今後も対面とオンラインによる授業のそれぞれのメリットを見極めるとともに、昭和薬科大学の先生方や学内の教職員と協力しながらさらに質のよい教育を提供し、社会に貢献できる医療者を育成していきたい」と語っています。