大学院農学研究科1年次生の山下泰斗さんがこのほど、「令和6年度『阿蘇』世界文化遺産登録推進若手研究」に採択されました。「阿蘇」の新たな学術的価値を見出し、国内外に発信することで世界文化遺産登録に向けたさらなる機運向上につなげようと、熊本県や阿蘇市などからなる「阿蘇世界文化遺産登録推進協議会」が主催するものです。
山下さんはこれまで、阿蘇地方で放牧される「あか牛」と呼ばれる熊本系褐毛和種の研究に取り組んできました。あか牛は全身褐色系の毛色が特徴ですが、畜産農家の間ではまれに生まれる淡色個体のほうが霜降りの量が優れていると言われてきました。山下さんは松本大和准教授(農学部動物科学科)の研究室に保管されている300頭のDNAサンプルと、肉の霜降り等級「BMS」のデータを分析し、淡色個体の霜降り量が通常個体に比べて優れていると証明。この研究成果をまとめた論文は今後、『Animal Science Journal』に掲載される予定となっています。
今回はこれらの研究成果を生かして「淡色化が熊本系褐毛和種の肉質に及ぼす効果に関する研究」と題したテーマで採択。科学的根拠の解明に向けて、代謝に関わる「褐色脂肪組織」や筋肉に関する遺伝子、皮下脂肪の形成にかかわる遺伝子などを分析。「霜降り量を高める遺伝子を見つけられれば、屠畜前に毛根を調べて肉質を判断できる可能性があります。肉質のよい個体をかけ合わせていけば、生産者の所得や消費者の満足度が向上し、観光振興にもつなげられるかもしれません」と山下さん。現在は、研究を進めながら来年1月に提出する成果論文の執筆にも取り組んでおり、「最終的には英文でジャーナルにも投稿したい」と意欲を見せています。