抗生物質生産菌が自身の生産する抗生物質で死滅しないメカニズムを解明 | ニュース | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学

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抗生物質生産菌が自身の生産する抗生物質で死滅しないメカニズムを解明


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薬学部の渡辺賢二教授、橋本博教授、佐藤道大准教授、原幸大准教授のグループは、抗生物質生産菌が自身の生産する抗生物質で死滅しないメカニズムを解明しました。本成果は、化学分野において最も権威のある国際化学雑誌『Journal of the American Chemical Society』(Impact Factor: 16.383) 電子版に12月5日付けで掲載されました。

抗生物質となる天然物はそれらの生合成に必要な酵素遺伝子群が多くの場合、ゲノム上に遺伝子クラスターとして存在しています。抗生物質を生産する生物はその分子を構築する遺伝子クラスター内に生産者自身が死滅しないよう耐性遺伝子と呼ばれる酵素遺伝子を含んでいます。この耐性遺伝子が同時に標的タンパク質である場合があります。今回解明したプリン生合成酵素(PPAT)といった生物に共通なタンパク質を標的とする阻害剤分子を生産者が創り出す場合、当然生産者自身も死滅します。他者としての生物に存在するタンパク質と僅かに異なるタンパク質をこの抗生物質を生合成する遺伝子クラスター中に生産者だけが持っていることを今回見出しました。すなわち、抗生物質生産者だけが自己と非自己を区別できるタンパク質を持っていることになり、生産者以外の他の生物に対しては抗生物質として切れ味鋭い生物活性を示し、死滅させることができるのです。抗生物質はこの耐性遺伝子を遺伝子クラスターの中心に据え、生存競争において他者に対する武器として進化の過程で創り上げてきたと考えることができます。標的タンパク質遺伝子を抗生物質生合成遺伝子クラスター内に見出すことが出来れば、生物活性を試験することなく、さらに言うと抗生物質の化学構造がたとえ不明であったとしても生物活性の予測を可能にすることを意味します。

抗生物質耐性タンパク質およびプリン生合成酵素PPATの抗生物質結合様式

〈掲載された論文〉
Uncommon arrangement of self-resistance allows biosynthesis of de novo purine biosynthesis inhibitor that acts as immunosuppressor
Michio Sato, Sakurako Sakano, Miku Nakahara, Yui Tamura, Kodai Hara, Hiroshi Hashimoto, Yi Tang and Kenji Watanabe
関連リンク:American Chemical Society https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.3c09600




(2023年12月6日)

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