研究プレスリリース 転写因子が結合する塩基配列の新たな基盤データを構築 | 医療・健康 - TSUKUBA JOURNAL
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転写因子が結合する塩基配列の新たな基盤データを構築

研究イメージ画像 (Image by majcot/Shutterstock)

 ヒトの遺伝子発現を制御する転写因子が結合する塩基配列の基盤データ「MOCCSプロファイル」を新たに構築し、転写因子が細胞の種類ごとに特異的な結合配列を持つことを明らかにしました。また、これを応用し、遺伝的変異が転写因子のDNA結合に与える影響を評価する方法を確立しました。

 ヒトの身体を構成する多種多様な細胞の特徴は、遺伝子発現の違いによって現れます。このような遺伝子発現の制御は、ゲノム上で特異的な塩基配列と結合する転写因子によって成り立っており、細胞の種類ごとに転写因子が結合する配列(転写因子結合配列)を明らかにすることは、それぞれの遺伝子発現の制御メカニズムの解明に重要です。しかしながら、これまで、転写因子の種類や細胞の種類に横断的な共通性や多様性といった、転写因子結合配列の全体像は明らかになっていませんでした。


 本研究では、大規模なヒト転写因子の結合部位に関するデータを用いて、転写因子結合配列の新たな基盤データ「MOCCSプロファイル」を構築し、転写因子および細胞の種類横断的に、転写因子結合配列の解析を行いました。その結果、解析した約半数の転写因子は、細胞の種類ごとに特異的な結合配列を持つことが明らかとなりました。さらに、MOCCSプロファイルを応用して、一塩基多型(SNP)が転写因子のDNA結合に与える影響を予測する指標を開発し、転写因子・細胞型の観点から疾患関連SNPが転写因子結合に与える影響を適切に評価できることを示しました。


 今回構築したMOCCSプロファイルは、エピゲノムのデータ等と組み合わせて、細胞型特異的な遺伝子発現制御メカニズムの理解につなげたり、がん細胞に生じた体細胞変異が転写因子の結合に与える影響度の評価など、多方面での活用が期待されます。


PDF資料

プレスリリース

研究代表者

筑波大学医学医療系
尾崎 遼 准教授

掲載論文

【題名】
Transcription factor-binding k-mer analysis clarifies the cell type dependency of binding specificities and cis-regulatory SNPs in humans.
(転写因子結合k-mer解析は、転写因子結合配列の細胞型特異性と、ヒトの一塩基多型の影響を明らかにする)
【掲載誌】
BMC Genomics
【DOI】
10.1186/s12864-023-09692-9

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