「不動正宗」は当初、刀剣鑑定や研磨などを生業としていた「本阿弥家」の分家における初代当主「本阿弥光二」（ほんあみこうじ）が所持していた短刀です。そして「豊臣家」の2代関白を務めていた「豊臣秀次」（とよとみひでつぐ）が、500貫で譲渡を受けたのち、「徳川家康」に授け、豊臣政権において政務を担っていた「前田利家」に贈られました。
その後、「加賀藩」（現在の石川県金沢市）初代藩主「前田利長」（まえだとしなが）が、父・前田利家が亡くなった際に、その遺物として徳川家康に献上。これ以降、「徳川家」に代々伝来した1振です。
鎌倉時代末期に作刀されたと鑑せられる本短刀の制作者は、鎌倉幕府のお抱え工として高い評価を得ていた「相州正宗」。正宗は、無銘の作が大半で、在銘作は数振しか存在しないため、正宗の有銘刀である本短刀は、非常に貴重な作品だと言えます。
本短刀の号「不動正宗」は、その刀身に「不動明王」の彫り物が施されていることが由来。また、鎌倉時代に制作された多くの短刀と同様に、刀身が刃先側に反る「内反り」になっています。
