2023年の展示情報・へし切長谷部と日光一文字_サムネ

福岡県福岡市にある「福岡市博物館」では、ゲーム「刀剣乱舞」でも人気キャラクターとなっている名刀「へし切長谷部」と「日光一文字」が毎年1月、2月に展示されています。2023年(令和5年)の展示は、へし切長谷部が1月5日(木)~2月5日(日)まで、続いて日光一文字が2月7日(火)~3月5日(日)までです。福岡市博物館が所蔵する2振の華やかな名刀に、2023年(令和5年)も引き続き魅了されること間違いないでしょう。へし切長谷部と日光一文字の展示情報と見どころをご紹介します。

2023年(令和5年)へし切長谷部の展示情報

へし切長谷部の展示期間と刀の概要

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へし切長谷部

福岡市博物館」では、例年1月に福岡市博物館が所蔵する国宝の名刀「へし切長谷部」の展示が行われています。2023年(令和5年)の展示は、1月5日(木)~2月5日(日)の1ヵ月間。

へし切長谷部とは、2014年(平成26年)の大河ドラマ「軍師官兵衛」の主人公となった天才軍師「黒田官兵衛」(くろだかんべえ:黒田孝高[くろだよしたか]とも)が「中国攻め」の策を提言した際に、織田信長から褒賞として贈られたとされる日本刀です。

異説では、黒田官兵衛の嫡男「黒田長政」(くろだながまさ)が織田信長から拝領したとも、織田信長から拝領した豊臣秀吉から受け取ったとも言われ、へし切長谷部の(なかご:日本刀の持ち手で、柄に収める部分)には、「黒田筑前守」(くろだちくぜんのかみ:黒田長政のこと)という所有者の名前を彫った受領銘(ずりょうめい)が切られています。

へし切長谷部は、京都で活躍した「相州伝」(そうしゅうでん)の刀工「長谷部国重」(はせべくにしげ)の手によって、南北朝時代に作刀された日本刀。相州伝とは、鎌倉時代に相模国(現在の神奈川県)で創始された日本刀の主要な刀工伝派「五箇伝」のひとつ。

相州伝の日本刀は「折れず、曲がらず、よく切れる」と言われ、多くの武将達から高い人気を誇りました。

また、へし切長谷部には、黒田家の家宝として、桃山風の華麗な「金霰鮫青漆打刀拵」(きんあられさめあおうるしうちがたなこしらえ)が伝来。福岡市博物館が所蔵する黒田家の家宝「安宅切」(あたきぎり)の拵の写しとされています。

へし切長谷部
へし切長谷部など、様々な「名刀」と謳われる刀剣を検索できます。

名刀・へし切長谷部の見どころ

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皆焼

へし切長谷部の見どころは、何と言ってもその美しい皆焼(ひたつら)の刃文です。皆焼とは、日本刀の刃のみならず、刀身一面に「飛焼」(とびやき)、「湯走り」(ゆばしり)などの働きが現れている、華やかで躍動感がある刃文の一種。

へし切長谷部の皆焼は、銀色にキラキラ輝く粒子「」(にえ)が強く付いており、砂流し(すながし)や金筋(きんすじ)といった細かく華やかな刃文の働きが見られます。地鉄(じがね)部分もキラキラした沸が付いており、照明の光に照らされると、まるで宝石のように輝いているところが見られるでしょう。

へし切長谷部のもうひとつの見どころは、その「姿」(すがた)にあります。へし切長谷部の姿は、刃長が64.8cmあり、茎に近い刀身の幅が3㎝、鋒/切先(きっさき)に近い刀身の幅が2.5㎝ほどで、刃長に比べて身幅が広く、大鋒/大切先となるなど、力強く豪壮な体配が特徴的です。

これは、へし切長谷部が、元々大太刀(おおだち)として作刀された名残。へし切長谷部は今でこそ打刀ですが、大きく磨上げ(すりあげ:刀身を短く切り詰めること)られており、茎には作者銘ではなく、日本刀の鑑定家「本阿弥光徳」(ほんあみこうとく)により「長谷部国重 本阿(花押)」という金象嵌銘(きんぞうがんめい)が施されています。

また、へし切長谷部は刀身が薄く反りが浅いという特徴を持ち、南北朝時代の日本刀の特色が色濃く表れている点も見どころのひとつ。姿を鑑賞することで、へし切長谷部の辿ってきた歴史を垣間見ることができるのです。

2023年(令和5年)日光一文字の展示情報

日光一文字の展示期間と刀の概要

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日光一文字

福岡市博物館は、1月に行われたへし切長谷部の展示を終えると、例年2月には、備前国(現在の岡山県)の刀工一派「福岡一文字派」の手による名刀「日光一文字」が展示されます。

2023年(令和5年)の展示は、2月7日(火)~3月5日(日)の1ヵ月間です。日光一文字も国宝に指定されている太刀で、1590年(天正18年)に行われた「小田原征伐」において、黒田官兵衛が豊臣秀吉に便宜を図って仲介したことから、小田原の戦国大名「北条氏直」(ほうじょううじなお)より贈られました。

「日光」という号(ごう:日本刀の愛称)は、元々は「日光二荒山神社」(栃木県日光市)に奉納されていたことが由来。その後、戦国時代初期の戦国大名「北条早雲」(ほうじょうそううん)が日光二荒山神社より本太刀を譲り受け、後北条氏の宝刀として扱われていました。

日光一文字には、北条氏直より贈られた際に収められていたという、葡萄模様蒔絵(ぶどうもようまきえ)の刀箱が付属。この刀箱も日光一文字と合わせて国宝に指定されており、福岡市博物館で、日光一文字と共に鑑賞することができます。

日光一文字
日光一文字など、様々な「名刀」と謳われる刀剣を検索できます。

名刀・日光一文字の見どころ

217_名刀「日光一文字」の見どころ
重花丁子乱れと蛙子丁子

日光一文字の見どころは、その華やかで荘厳な刃文にあります。日光一文字を作刀した刀工一派・福岡一文字派は、「重花丁子乱れ」(じゅうかちょうじみだれ)と呼ばれる、丁子の実が重なり合ったような、華やかで動きのある刃文を焼くことで知られる一派。

日光一文字の刃文も華やかな重花丁子乱れで、オタマジャクシに似た刃文「蛙子丁子」(かわずこちょうじ)や飛焼などが混ざり、足(あし)、葉(よう)などの働きがしきりに入った華麗な刃文をしています。

日光一文字は、福岡一文字派の作刀のなかでもとりわけ美しいとされる傑作と名高い1振なのです。

もうひとつの見どころは、地鉄です。地鉄とは、刀身のひときわ高くなった稜線「鎬筋」(しのぎすじ)と刃文の間にある部分を指します。ここは、「鍛え肌」と呼ばれる肌模様など、日本刀の素材である玉鋼の様子が鑑賞できるのです。

日光一文字の地鉄は、木材の板のような「板目肌」(いためはだ)という肌模様をしており、キラキラした地沸(じにえ:地鉄に付いた沸)が細かく付き、「映り」(うつり)が現れています。

映りとは、刀身を光にかざしたときに刀身が1色に見えず、白や黒になっているような部分が見える変化のこと。日光一文字を鑑賞する際、一方向だけでなく、角度を変えて照明のあたりを変えながら地鉄を鑑賞すると、様々な働きを見ることができます。

福岡市博物館の基本情報

施設名 福岡市博物館
開館時間 9時30分~17時30分(入館は17時まで)
所在地 〒814-0001
福岡市早良区百道浜3丁目1-1
休館日 毎週月曜日、年末年始
※月曜が祝休日にあたる場合は翌平日
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで
料金 一般:200円(150円)
高大生:150円(100円)
中学生以下無料
※()内は20人以上の団体の料金。
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳(以上の手帳を提示された方の介護者1人を含む)及び、特定疾患医療受給者証・特定医療費(指定難病)受給者証・先天性血液凝固因子障害等医療受給者証・小児慢性特定疾病医療受給者証、福岡市・北九州市・熊本市・鹿児島市民で65歳以上が確認できる物をご提示の場合は無料。
交通アクセス 市営地下鉄「天神駅」徒歩7分
市営地下鉄「博多駅」 徒歩13分
西鉄バス 「博物館北口」、「福岡タワー南口」、「博物館南口」、「福岡タワー」(TNC放送会館)下車 徒歩約5分
駐車場 あり
公式サイト http://museum.city.fukuoka.jp/