地曳いく子『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社・2015年) - 真面目でなぜ悪い

地曳いく子『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社・2015年)

この本は洋服の手放し方と買い方の本である。

 

私は「おしゃれが大好き」とも「おしゃれには興味ない」ともいえないが、思春期から会社員を辞めてフリーランスになるまで、洋服にはずっと悩まされてきた。

いかり肩で、骨ばった部分もあるが、自分があまり受け入れきれていない「女性的な」体の部位も目立つ。周りの女性はみんな華奢で、「女性的な」洋服を着ても浮かない。自分に自信がない割に自己主張は激しかったから、派手な洋服やちょっと変な服を着れば自信が持てると思い込んでいた。

が、会社員を辞め、フリーランスになり、自分に自信を持てるようになったら、好きな洋服の系統が決まってきたことに気づいた。それと同時に「それなりに洋服あるけど、着てないものあるな」ということにも。

そして今、ちょうど不要なものを捨てて、整理整頓に努めている真っ最中。「そういえば昔、洋服に関する本で良さそうな本があった気がする……」と思い出したのがこの本だ。

 

本の出だしから、心に響いた。

所詮ファッションは眼の錯覚と思い込みの自己満足
引用元:地曳いく子『服を買うなら、捨てなさい』p.3

思春期の頃の自分に読ませたかった。周りと見比べて、自分だけなんか体型が変に思えたり、「女性らしさ」から脱したい気持ちと、でも自分が女性であることを認めざるを得ないことに悩んでいた気持ちでごっちゃになって、洋服に苦しんでいた頃の自分に。

先の言葉には“所詮”とついてる。“思い込みの自己満足”とある。全員が全員、自己満足を着ているのだから、何着たって良かったんだよ……。

 

「あ〜、わかる」と思ったのは、“バリエーションの呪い”という言葉。

バリエーションの呪いとは、「女子は、毎日違う格好をしなければいけない」という、恐ろしく、根深く、理不尽な思い込みのことです。考えてみてください。男性なら、毎日同じスーツでも誰も何とも思わないはず。なぜか女子だけが、極力同じ格好をしないように、毎朝、鏡の前で多大な苦労を強いられているのです。

引用元:地曳いく子『服を買うなら、捨てなさい』p.18

今でこそ、みなさんご存知スティーブ・ジョブズや「ミニマリスト」といった存在もあいまって、毎日同じ服を着ていることに疑問を抱かれにくくなったけど(この本が2015年刊行だから、この本の影響もあるのかもしれないけど)、むか〜しはなんか違う着こなしを“しなければならない”感があった気がするのだ。

この本を読んだ私に限定されることではあるけど、ファッションについて妙に悩んでいた頃の自分に伝えてあげたい言葉がこの本ではちょくちょく出てきて、私はそのことに心動かされた。

 

なお、この本について、私が感じたのは「自分に似合う少数精鋭の服だけを着ていきましょうね!」というメッセージ。

本文中に“「おしゃれな人」とは「ダサいものを着ない人」のことです”、“似合わなくなったダサい服を手持ちから排除するだけで、誰でもおしゃれの底上げができます”ともあるけど、いっぱい持ってるとか、なんでも着こなせるとか、〇〇のブランド持ってるとか、そういうのは、著者が定義するおしゃれではない。

そして、「いらないものは捨てる」「どうでもいいものを買わない」という洋服に限らない、モノを買う・持つ上で重要なことを著者は述べている。

「痩せたら着る」「旅行先で着る」などの「いつか着る」ものの購入は一切勧めない。「今」使えるもの、「今」着るものだけを選び、買うことを勧める。

考えてみたら、至極当然のことでもあるけど、不思議なことにこれがあんまりできてなかったんだな〜とクローゼットを整理しながら思った。

 

今、私は、この本で紹介されている理想的なワードローブの数よりは多い洋服を持っているけれど、この本を読んだおかげで、首元がヨレヨレになったり、年を重ねて似合わなくなったりした時に潔く処分できそうだな、と自信が持てた。

 

本の帯にもあるけど、この本は「何を捨て、何を買えばいいのかがよくわかる」本である。ファッションで悩んでいる人だけでなく、「なんか自分、買い物下手だな」って感じている人にも何かヒントになる本なのではないかな、と私は思う。