出典元:映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』公式 (@terminator_JP) | Twitter
※序盤からネタバレあり。ネタバレNGな人は鑑賞後に読んでいただけると幸いです。
サラ・コナーの物語だった
(↑)『ターミネーター2』でのサラ・コナー。
『ターミネーター』『ターミネーター2』を監督したジェームズ・キャメロンが製作総指揮を務めた『ターミネーター:ニュー・フェイト』。
映画評論家・町山智浩の著書『〈映画の見方〉がわかる本 ブレードランナーの未来世紀』でジェームズ・キャメロンについての項目があるんだけど、ざっくり説明すると「彼は強い女性を描くのが好き」って書いてある。
で、本作を観て思った。
彼にとって『ターミネーター』シリーズは、サラ・コナーの物語なのだと。
『ターミネーター』シリーズといえば、アーノルド・シュワルツェネッガーの印象が強いが、彼が描きたかったのは、運命に巻き込まれた女性の物語なのだと。
重要視されていたキャラクターの死
わたしがまず「おおっ!」と声を挙げてしまったのはジョン・コナーの死だった。
ジョン・コナーは『ターミネーター』の世界において、機械VS人間の人間側を率いる重要な人物である。
『ターミネーター』では、人間側の指導者となるジョン・コナーを生まれてこさせないために、彼の母となるサラ・コナーが狙われる。
『ターミネーター2』では、生まれてしまったジョン・コナー抹殺のため、サラとジョンが狙われる。
本作では『ターミネーター2』の後の世界が描かれる。平和な時間を過ごすサラとジョンだったが、突如として現れたターミネーターがあっさりとジョンを撃ち殺した。
突然のことに驚いたが、この時点で「この映画の主役はサラなんだ」って思った。これがCMで何度も何度も繰り返されていた「正統な続編」という言葉の正体である。
他の続編は、シュワちゃん演じるターミネーターやジョンが中心に描かれていた。
違うんだと。
彼が描きたかったのは、ある運命に巻き込まれ、肉体的にも精神的にも強くならざるを得なかった女性の人生であり、シュワちゃんの映画ではないのだ。
リンダ・ハミルトンの演技
サラ・コナーを演じたリンダ・ハミルトン。『ターミネーター2』の彼女はだいぶかっこよかったが、本作ではかっこよさに拍車がかかっていた。
淡々と敵に銃弾を撃ち込み、トドメを差すためにためらいなく敵に近づき、口は悪いが、しっかりと相手と向き合う姿がかっこいい。
彼女の運命に巻きこまれたくはないが、彼女にだったら守られたい。
重たい銃器を重たいまんま扱う演出もかっこいい。アクションSFなどでよくある、銃を軽くバンバン撃つ描写はなくて、一発一発が重い。リアリズムに徹した描写が最高にかっこよかった。
そんなかっこいいババアと化したリンダ・ハミルトンだが、かっこいいだけではない。
中盤、サラ・コナーに敵の襲来を伝えていた謎の人物の正体が、ジョン・コナーを殺害後、隠居生活を送っていたターミネーターだと判明する。
最愛の息子・ジョンを殺した相手なわけだから、気が動転しブチ切れるサラ・コナー。
だがターミネーターは、ジョン殺害の任務後「人間」として世界に溶け込み、妻と息子をもち、ジョンの殺害に複雑な思いを抱いていた。
ターミネーターは「サラに生きる希望を持たせるべき」と考え、未来からの情報を彼女に与えていたのだ。
「…心中複雑だよ!!!」とターミネーターの行いに突っ込みたくなったが、その後リンダ・ハミルトンが見せた表情がとてもよかった。
あんなにかっこよかったサラ・コナーが、ターミネーターとの対面後、最愛の息子を失い失望した母親の顔になっていたからだ。
力なくうなだれ、現実をどう受け止めるべきか考えているサラの顔は、息子を失ったことをいまだ受け入れられないまま年をとった女性の顔だった。
この落差が、この後のシーンでのサラの強さの源になる。
陳腐な表現で申し訳ないが、この「ガチ凹みサラ・コナー」の表情にとてもハッとさせられた。
サラ・コナーの魅力は強さだけではない。弱さも彼女の魅力なのだ。
彼女の心情をしっかり表現したリンダ・ハミルトンに脱帽である。
リンダ演じるサラ・コナーを観るだけでも価値がある
『ターミネーター:ニュー・フェイト』は本国アメリカではこけたらしい。
個人の見解だが、『ターミネーター』という世界観そのものが、コンテンツとして古くなってしまったからだと思っている。現代はもう、あの世界観以上に「未来」してるからね。
だけど、わたしはこの映画が好きだった。
『ターミネーター2』でシュワちゃんが担っていた役柄は、マッケンジー・デイヴィスがグレースという役で引き継いでいた。未来からやってきて主人公を守る女性。グレースの強さと弱点は、物語の展開をハラハラさせ、とても魅力的だった。
『ターミネーター2』で人々を魅了した敵T-1000。ロバート・パトリック版もイ・ビョンホン版もどちゃくそかっこよかったが、本作のRev-9も魅力的な悪役だった。
演じたガブリエル・ルナの、筋骨隆々すぎず、狡猾すぎず、だが一度ロックオンしたら見逃してくれない感じが、まさにターミネーターの敵役だった。
骨格土台と液体金属が分かれる描写、ほんと最悪♥(ほめ言葉です)。
とにもかくにも、賛否両論あるだろうが、わたしはジェームズ・キャメロンのサラ・コナーに対する意地を感じられただけでも十分楽しめた。
エンタメとしては申し分ないと思ったっす。
では。
◆本日のおすすめ◆
『ターミネーター』シリーズといえば、やっぱりこれだよね!
町山さんによるジェームズ・キャメロン論が面白いのでぜひ。