マイナ保険証を「解除」する人が語る「頭にきた」やり口 5000億円をバラまいた普及策が裏目に?:東京新聞デジタル

マイナ保険証を「解除」する人が語る「頭にきた」やり口 5000億円をバラまいた普及策が裏目に?

2024年11月15日 06時00分 会員限定記事
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<シリーズ 検証マイナ保険証>
12月2日からマイナ保険証に一本化されるのを前に、利用登録を解除する動きが全国で起きている。東京23区では、東京新聞が確認しただけでも2週間弱で265件の解除申請があった。マイナ保険証の普及を急ぐあまり、国民の理解や納得をおざなりにしたツケが回った格好だ。
解除申請した人には、国が5000億円以上投じた「マイナポイント」につられて登録した人も少なくない。なぜ今、解除に踏み切ったのか。それぞれの理由に耳を傾けた。(福岡範行、小寺香菜子)

〈主なトピック〉
・カネ頼みが裏目に
・「今になって後悔」
・薬局の声かけにキレた
・相次ぐ解除に厚労大臣は…

◆「ポイント7500円」につられて

「役所でマイナ保険証の登録解除の申請をしました」
11月6日、東京都内の80代女性から東京新聞にメールが届いた。
この女性が、マイナンバーカードと健康保険証をひも付けたのは、国のマイナポイント第2弾事業の時期。7500円分のポイントを配ることで登録者の増加を狙った普及策だ。

マイナポイント事業のときに利用登録したマイナ保険証の解除を希望する男性。紛失への不安などが理由だという(一部画像処理)

国は、このポイントによる普及策に5106億円かけていた。2014~24年度に国が投じたマイナ保険証関連の事業費のうち6割を占める巨額キャンペーンだった。

◆なくす不安「持ち歩きたくない」

「ポイントにつられたというのが本音です」と女性は明かした。
しかし、マイナ保険証を使ったことは、一度もない。歯科と整形外科に通うとき、窓口に出すのはいつも現行の保険証だ。
女性が解除をしたのは「不安を感じたから」だという。「暗証番号を忘れそうになるし、最近ではバッグを置き忘れて保険証を再交付したことがあり、マイナ保険証を持ち歩きたくない」と語る。
岐阜県の男性(74)は、11日から市役所で受け付けが始まったと聞くと翌日、解除を申し込んだ。

◆「政府のやり方が気に入らない」

ポイント目当てで登録したが、「紙の保険証廃止に政府のごり押しを感じた」という。

マイナンバーカード普及のため行われたマイナポイント事業

窓口で解除の理由を尋ねられると、「政府のやり方が気に入らないから」と答えた。市職員が困った顔をしたので申請書の理由の欄には「マイナンバーカードに不安がある」と書いた。
男性は「国民の言うことも願いも、一切聞かない政府の姿勢が不満です」と話す。

◆老人ホーム「管理が難しい」

埼玉県内の30代女性は、老人ホームに入所する父親のマイナ保険証を解除した。父親はポイントをもらえるからと登録していたが、老人ホームから「個人情報の管理が難しいから、できるなら(保険証代わりになる)資格確認書の方がいい」と言われたという。
今になって登録解除が起きているのは10月28日になって、ようやく国が解除の仕組みを整えたからだ。マイナ保険証を使うかどうかは任意なのに、いったん登録をすると解除できなかったことから、国会などで批判されていた。
厚労省は11月12日、受け付け開始から8日までに全国で792件の解除申請があったことを明らかにした。

◆解除「解禁」後、都区部で265件

東京新聞は独自に東京23区の状況も調べた。
対象は、各区役所が窓口になっている国民健康保険と後期高齢者医療保険の加入者。11月7日までの解除申請の件数を尋ねた。
国保では23区のうち12区で受け付けており、合わせて210件あった。後期高齢者医療保険では8区で計55件だった。
申請を受け付けている区によると、解除理由は「マイナンバーカードを持ち歩きたくない」「紛失が心配」という答えが目立った。「資格確認書がほしい」「制度を信用できない」「利便性を感じない」という声もあったという。

◆使い方も分からず「登録を後悔」

まだ申請を受け付けていない健保や自治体も多く、解除の件数は今後さらに膨らむだろう。
実際に東京新聞には、「登録を解除したい」という声が多数届いている。その多くは冒頭の女性のように、マイナポイントにつられて登録した人だった。
宇都宮市の80代男性もその一人だ。
「税金を少し戻してもらおうと、マイナポイントで登録したけれど、後悔の気持ちもあります」と打ち明けた。マイナ保険証は使い方すら分からず、一度も使っていない。

◆「納得と共感」に裏切られた

解除への気持ちに傾いたのは政府への不信感だ。「納得と共感」を掲げる石破茂首相には一時、期待したが、一本化の方針を変えない姿に「石破さんも国民を見ていない」と失望したという。
マイナポイントを受け取った横浜市の60代男性も解除する予定で、「直近の投薬情報が見られず、あまりメリットを感じない」と話す。

◆ウソだとすぐバレる勧誘文句

強引な普及策が、かえって反発を強める事態にもなっている。
マイナ保険証の利用を増やした病院や薬局に、見返りとして「支援金」を支給した普及キャンペーンへの反動だ。投じた予算は約200億円。キャンペーンが本格化した今夏、病院や薬局の窓口では、強引な声かけによって患者とトラブルになる事態も起こった。
愛知県一宮市の自営業男性(49)は、薬局での声かけを理由に解除を決めた。今年の夏ごろから、たびたび薬局で「マイナンバーカードを持っていますか?」と利用を強く勧められるようになり、嫌気がさしていた。
とどめは11月初めに薬局で、現行の保険証を出したときに受けた言葉。すぐに嘘だと分かる勧誘文句だった。

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