ここでは、「健康食品」を安全に利用するために必要な心構えの12ヶ条を紹介します。なお、この12ヶ条は東京都食品安全情報評価委員会での検討を受けて、都が都民の皆さまにお知らせするものです。
「健康食品」と一般の食品は、法令上では明確な区別がありませんが、安全性に関しては、一般の食品と「健康食品」を同じように考えられない場合があります。一般に食品は、多くの人が食べてきた経験(食経験)があるもので、食経験により培った安全な食べ方があります。 一方、「健康食品」には、なじみのない動植物や鉱物など、食経験のないあるいは乏しい素材が使用されているために、安全性に関して食経験を参考にすることができない場合があります。また、錠剤やカプセルなどに加工する際に行われる濃縮や抽出で、食材の性質が変化することにより、元の食材の食経験が参考にできない場合があります。
食品には、3つの機能(働き)があると言われています。(出典:食品機能の系統的解析と展開(文部省特定研究))
一次機能: 生命を維持するための栄養面での機能
二次機能: 味や香りなど嗜好面での機能
三次機能: 身体の機能を調節するための生理的な機能
これらの機能はすべて、健康を維持するための健全な食生活にとって大切なものです。つまり、単に栄養を摂るということだけでなく、味や香りを楽しみ、食べることを楽しむことも健全な食生活のために必要なことなのです。また、身体に必要な成分には未知のものもあると考えられるため、「健康食品」から一部の栄養成分などを摂取することだけで、健康を維持することはできません。これらのことから、健康の維持・増進のためには、「主食、主菜、副菜を基本とするバランスのよい食事」をとることが重要といえます。「健康食品」は、食生活で十分に摂取することが難しい栄養成分などを補給する、食生活に対する補助的な役割のものと考えるべきです。
バランスのよい食事については「とうきょう健康ステーション」をご覧ください。
食品は健康の維持に対して一定の働きがあると考えられます。「健康食品」も同様です。しかし、「医薬品」のように病気や身体の不調を治療するものではありません。「健康食品」の有用性に関して、過大な期待をしないようにしてください。
栄養補給を目的に「健康食品」を利用している人は多くいますが、ほとんどの栄養成分は、日本人の平均的摂取量からみると、「健康食品」からの摂取分を除いても、ほぼ必要な量に達しています。栄養成分は必ずしも多くとればよいというものではなく、「健康食品」を摂ることがメリットにならないこともあると考えられます。「健康食品」を利用する前に、食生活を振り返って自分自身に足りない栄養成分があるか検討してください。以下に栄養成分が不足している可能性のある人の例を示します。これらに当てはまる人は、食生活の見直しや改善を心掛けましょう。(なお、運動量などにより個人に必要な栄養成分量が異なるため、栄養士等に栄養指導を受けることが有効です。)
食生活の改善や見直しが必要と考えられる人の例
栄養成分が不足しがちな人 |
不足する栄養成分 |
朝食を食べない人 |
栄養成分全体が不足しがちになっています。(「都民の栄養状況」より) |
一日2回以上外食をしている人 |
ビタミンが不足しがちになっています。野菜の摂取不足が原因と推察されます。(「都民の栄養状況」より) |
食事量を減らしている人 |
ダイエット等で食事の量を減らしている場合は、栄養成分が全体的に不足しがちになっています。 |
食事の内容が偏っている人 |
好き嫌いが多く、食事の内容が偏っている人は、栄養成分の摂取量も全体的にバランスが悪いと考えられます。 |
高齢者などで、食べられる食事の量が減ってしまった人 |
栄養成分が全体的に不足しがちになっていると考えられます。 |
妊娠を計画している女性 |
葉酸は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減と関係があり、妊娠を計画している女性はの葉酸の摂取が目標となっています。必要な葉酸を摂取するには、食事にかなり工夫が必要です(食事摂取基準)。 |
女性 |
女性が平均的に摂取する栄養成分のうち、カルシウム、鉄及び食物繊維は摂取目標量を満たしていない状態が続いています(国民栄養調査)。 |
ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養成分は、人の身体における生理作用について多くのことが分かっていますが、「健康食品」に使われている食材や成分には、現段階では、人の健康に対する機能がはっきり分かっていないものが多くあります。そうした中で、テレビ、雑誌、インターネットなどでは、特定の食材や成分に、健康に役立つ機能があるとする情報が様々に取り上げられています。こうした健康情報は、「試験管内での実験」や「マウスなどの動物を用いた実験」で確認された結果をもとにしている場合がありますが、食品の有用性を評価する場合には、こうした実験結果を「人間が摂取した場合」に直接あてはめることはできません。このため、健康情報を参考にするときは、批判的な目を持って、科学的な信頼性を検討する必要があります。例えば、次の3つのポイントについて確認できない健康情報は、科学的な根拠に乏しく、信頼に足るものとは言えません。(なお、保健機能食品に表示されている情報は、これらの3つのポイントを満たしているものです。)
科学的な信頼性の有無を見極める3つのポイント
1 具体的な研究を行った結果であることが示されていること
具体的な研究結果でない場合、科学的な根拠がない情報かも知れません。(例)専門家と称する人がテレビで発言した。有名人や使用した人が効果を語った。
2 研究は、ヒトを対象としていること
ヒトを対象とした研究でない場合、人間には当てはまらない情報かも知れません。(例)試験管(ビーカー)を使った実験結果、動物実験の結果
3 学術誌で論文として報告されていること
論文として報告されたものでない場合、科学的な評価を行うにはまだ情報が足りないかも知れません。(例)一般的な書籍に書かれている情報
ポイントが3つとも当てはまる場合、一定の科学的評価が行われた情報として、少しは参考にできます。
ただし、研究の方法や規模が十分でない場合や報告の数が少ない場合などは、本当に正しい結果かどうか分からない場合があります。また、効果があるとされる成分が入った「健康食品」に同じような効果が期待できるかどうかは、製品毎に試験をしてみなければわかりません。(「健康・栄養情報の信頼性を評価するフローチャート」(東北大学大学院医学系研究科 坪野吉孝監修)を参考)
「健康食品」には、法令に定められた表示をしなければなりません。また、その他にも、製品のラベルや広告には事業者の判断で様々な情報が書かれています。製品を購入する際には、次の「製品表示・インターネット広告等のチェックポイント」ような観点から、情報が適切に示されているか否か確認してください。
製品表示・インターネット広告等のチェックポイント
ア 製造業者や販売者などの名前や原材料の表示はありますか?
これらは製品に表示することが法令で義務付けられているもので、食品に対する責任の所在や製品の特徴を示す重要な情報です。
イ 表示や広告に、お客様相談窓口などの連絡先が書かれていますか?
製品に関する苦情や相談の窓口が示されていることは、事業者が食品の品質や安全性について、利用者に対して責任を持った対応をすることを示すものです。
ウ 栄養成分やその他の含有成分の量などについて表示がありますか?
カロリー、栄養成分、その他含まれている成分の量などの情報は、自分がどのような成分をどの程度摂取するのかを把握するために重要です。グルコサミンなどにはアレルギー原因物質である「えび・かに」を原料にしている製品があります。アレルギーのある方は「健康食品」を使用する前に製品の表示でアレルギー物質が含まれているか確認することが必要です。
エ 利用時に必要な情報が提供されていますか?
「健康食品」を安全に利用するためには、適切な摂取方法や摂取量、使用する際の注意点などを知る必要があります。
オ 安全性や品質について不適切な説明をしていませんか?
「食品だから安全」という表示や広告が見受けられますが、「食品である」ということだけでは、「健康食品」の安全性を説明する根拠とはなりません。
(不適切な事例)
事例 |
不適切である理由 |
天然成分だから毎日摂取しても安心です。 |
「天然成分」が健康被害の原因となることもあります。
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特許取得「痩身用食品」成分配合 |
製造方法に関する特許であり、痩身効果に対する特許ではありません。 |
カ 表示や広告に、科学的な根拠が不明確な情報を使用していませんか?
「効果のあった人がいる」、「有名人が推奨している」といった広告が見受けられますが、このような説明は、食品の有用性に関する科学的な根拠とは言えません。また、動物実験やビーカーを使った実験の結果は、必ずしも人間に当てはまるものではありません。
(不適切な事例)
事例 |
不適切である理由 |
実在するモデルの氏名を示して、その実話を元に作ったと称する体験文 |
科学的な根拠がない情報かも知れません。 |
モデル業界でもウワサになってます! |
科学的な根拠がない情報かも知れません。 |
最近、個人輸入やインターネットオークションで入手した「健康食品」による健康被害が報告されています。「健康食品」を個人輸入する場合、利用しても安全かどうかの確認は、基本的に購入者自身が行わなければなりません。海外で購入した「健康食品」には日本で規制される医薬品成分が配合されていたり、安全性の確認ができないものもあるので注意が必要です。また、インターネットオークションは、誰でも簡単に出品でき、安全性に問題のある製品が流通していた事例もありました。このため、個人輸入やインターネットオークションで「健康食品」を入手しようとする際には、含まれる成分を問い合わせる等十分に情報を収集し、情報が確認できない場合や安全性について疑わしい点がある場合には、購入を見合わせる必要があります。
個人輸入の注意点については「医薬品、健康食品の個人輸入に注意!」をご覧ください。
栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品といった保健機能食品制度の範囲内で、食品に一定の機能(「おなかの調子を整えます」等)を表示できる場合があります。詳細は消費者庁のページをご覧ください。
「健康食品」には、抽出や濃縮などの加工により特定の成分を多量に含有するものがあり、これらを過剰に摂取することで健康に悪影響を及ぼす可能性があります。商品に表示されている摂取目安量の範囲で利用してください。「カルシウム」「グルコサミン」「コラーゲン」「酵母」などのように多くの「健康食品」に含まれる成分や、また「プエラリア抽出物」のような一般的に人体に強い作用(女性ホルモン様作用)を及ぼす可能性があるといわれている成分については、複数の「健康食品」を一度に利用すると、気づかないうちに同じ成分を重複して摂取してしまうことがあります。それぞれの製品の含有成分を確認し、過剰摂取とならないよう注意しましょう。
「健康食品」の適切な利用のためには、製品の表示に関心を持ち、何をどれだけ摂取しているか、自分自身で把握することが大切です。「健康食品」を利用して、身体に不調を感じたとしても、「健康食品」との関連を証明することは簡単ではありません。そのため、何を、いつから、どのぐらい利用しているかということが、「健康食品」に関する相談を受ける医療関係者にとって、とても重要な情報になります。特に、複数の「健康食品」を利用している人、医療機関において治療を受けている人は、日ごろから、「健康食品」の利用状況について記録をとるようにしましょう。
「健康食品」を利用した人の中には、「下痢をした」、「湿疹が出た」、「肝機能が低下した」等の体の不調が報告された例もあります。「健康食品」を利用していて体調不良を感じたら、すぐに利用をやめて、医療機関を受診してください。また、体調不良と「健康食品」との関連が疑われる場合には、医師と相談のうえ、保健所などの行政機関にも連絡してください。
都内保健所の連絡先一覧は、東京都保健医療局のページをご覧ください。
現在、薬を飲んでいる人や治療を受けている人が「健康食品」を利用する際には、次のことを守ってください。
「健康食品」の一部では、病気を悪化させたり、治療に悪影響を及ぼしたりする場合のあることが報告されています。「健康食品」を利用する際には、医師や薬剤師などに利用状況を伝え、助言を受けてください。その際、利用している「健康食品」の種類、利用期間、摂取量などを明確に伝えてください。
(病気や治療に対する影響の例)
「健康食品」は、病気や体の不調を治すものではありません。「健康食品」の有用性を過度に期待して、自分の判断で治療を中断することのないようにしてください。
問合せ先:東京都健康安全研究センター企画調整部健康危機管理情報課食品医薬品情報担当
電話:03-3363-3472
FAX:03-5386-7427
メールアドレス:S1153803<at>section.metro.tokyo.jp
※<at>を@に置き換えてメールをお送りください。