何年か前の出来事ですが、とてもよく知っている取引先の方から退職のご挨拶メールを頂きました。
わたしはその方の退職は分かっていたので、挨拶のメールの文面に、驚くことはありませんでした。しかし、メールの宛先にびっくりしました。
その方からのメールの宛先はTo(宛先)に誰の指定もありませんでした。そして、たくさんの会社のドメインが記載されたメールアドレスが、CCに記載されていました。
その方は、日ごろから付き合っていた、社外の関係者の個人情報(メールアドレス)を外部に漏らしてしまったのです。
おそらく、その方はCCではなく、BCCにメールアドレスを入れようとしたはずです。しかし、メールの操作を誤ってCCに入れてしまったようです。
メールの誤送信は、どの会社でも多く発生する情報セキュリティインシデントです。メールアドレスそのものは、正しい設定でも、TO/CC/BCC の設定を間違えれば、取引先メールアドレスの漏洩とみなされます。
わたしは会社のオペレーション業務のとりまとめをしている関係で、社外へのメール送信は日常的にあります。
電子メールを送るのはパソコンが使える人なら誰でもできますが、たくさんのメールアドレスの宛先をミスなく、正しく送り続けるのは、かなり神経を使います。
メールの誤送信でよくある失敗は、先にあげた BCC に入れるべきメールアドレスを CC に入れてしまうほか、オートコンプリートによるミスが想定されます。
オートコンプリートは、文字入力を補助する機能の一つです。電子メールでは、過去の入力履歴を参照して次の入力内容を予想し、候補を表示してくれます。メール送信に際、宛先のメールアドレスの先頭の部分を入力するだけで自動的に全部の文字列が入力される便利な機能です。
オートコンプリートは、メール送信だけなく、認証作業でも使われます。ブラウザには、Webサービスを使うにあたって一度入力した ログインID、パスワードが保存され、自動的にログイン画面に入力される機能があります。これもオートコンプリートです。
オートコンプリートはとても便利な機能ですが、この機能で表示されたメールアドレスをよく確認せず、間違った宛先を指定して送信してしまうというインシデントが起こりえます。
オートコンプリートの使用にあたっては注意が必要です。
多くのメーラーでは、オートコンプリートの機能を無効化することができます。
Gmailのデフォルトの設定は「新しいユーザーにメールを送信すると、そのユーザーを [その他の連絡先] に追加して次回からオートコンプリート機能で入力できるようにする」となっています。無効化するには、gmailの設定 → 全般 → 連絡先を作成してオートコンプリートを利用 を「手動で連絡先を追加する」に設定する。に変えます。これで送受信したことのあるメールアドレスが自動的に連絡先に登録されなくなります。
ところで、取引先にメールを送信するような、オペレーション業務は、「出来て当たり前」という意識が社員全員の頭のなかの共通認識としてあります。
その為、万が一オペレーションでミスをすると、インシデント扱いとなり、業務改善を要求されますが、ミスをしないで業務を正しくやり続けても、あまり評価されない場合が多いと思います。
これはオペレーション業務の抱える構造的な課題だと思います。
オペレーションのミスは、内容によっては、社会からの信用を著しく傷つけます。それほど、会社にとって重要な役割であるにも関わらず、評価されないのは不幸です。それでは、実際にオペレーション業務をやっているメンバーの仕事に対するモチベーションはあがりません。
オペレーションを統括するリーダーは、実際にオペレーションを担うメンバーに対して、定期的なフィードバックを行うことで、メンバーの仕事に対するプライドや自信を育成する必要があります。
その為に、オペレーションのミスをした場合には、メンバーの自覚を促すための改善的な指導を行うことで、再発を防止する取り組みが必要です。
対して、オペレーションミスを一定期間しなかった場合は、いまのやり方が正しいことをキチンと伝える必要があります。自分の仕事が正当に評価されていると、感じるような言葉をかけることが重要だと思います。