下記は内閣府(男女共同参画局)ホームページに掲載されている、OECD(経済協力開発機構)が2020年にまとめた生活時間の国際比較データです。
同ホームページでは、日本と諸外国を比較して、以下の特徴があることを述べてます。
- 以前は短かった女性の有償労働時間が伸び,男性も女性も有償労働時間が長いが,特に男性の有償労働時間は極端に長い。
- 無償労働が女性に偏るという傾向が極端に強い。
- 男女とも有償・無償をあわせた総労働時間が長く,時間的にはすでに限界まで「労働」している。
このデータは日本の働き方の様々な課題を投影してますが、課題を解くためには複雑すぎる連立方程式があるようです。
わたしが気になったのは「男性の有償労働時間は極端に長い」という事実です。
これは男性社員の残業時間が長いことを示していますが、この残業時間を減らすことが方程式を解く鍵に見えます。
残業について、わたしは製造業にいたのですが、工場と本社では社員の残業に対する考えがかなり違うと感じてました。
端的には、工場の勤務に於いて残業は通常ではありません。一方、本社では残業に対してのしばりが緩いと思います。
工場に従事している社員の人件費は製造費用として区分され、製品の「製造原価」に含められています。これに対して、本社の各部門に従事している社員の人件費は「一般管理費」に区分されます。
工場システムでは、製品の原価率を厳密に管理することが求められました。利益の拡大を達成するため、製造原価を1円でも安くするべく、原材料費の削減や、製造設備の見直しをしてました。工場勤務の労務費も原価に含まれるので、業務の無駄を極力排除し、効率化する取り組みをしました。
工場勤務の社員の残業が少ないのは、原価低減という会社としての明確な KPI があるからです。
対して、本社部門の人件費にあたる「一般管理費」は、明確に抑える基準がありません。
いまは、2019年 の労働基準法改正に伴い、月45時間、年間360時間を超える残業は違法となるので、もちろんそこは残業のしばりとなります。しかし、会社が独自で「一般管理費」を削減するための取り組みは、「製造原価」の削減にみられる厳格さがないと思います。
ですので、本社勤務の社員は、残業することにどこか無頓着で、仕事も自分のペースでだらだらとやりがちです。
そういうのは、たとえば、上司が部下を仕事中に別室に呼んで、小話のような説教をしたり、休憩スペースに社員が集まって、先週のゴルフコンペの出来事で盛り上がったりするような態度に現れます。
当然ですが、仕事には優先順位があります。下図は優先順位を考えるためのマトリックスです。この図では A>B>C>D と、仕事の優先度が下がるのですが、本社で勤務する社員は意外に DやCといった、優先順位の低い仕事に時間を費やしてます。結果として「男性の有償労働時間は極端に長い」という OECDの調査データに反映されてると思います。
ただ、わたしは D に分類される「無駄話」や「雑用」を完全に無くすことがあるべき姿だとは思いません。特に上司と部下の関係に於いては、「仕事の指示と進捗確認」だけのコミニュケーションだけでは、部下の組織に対する愛着は芽生えません。
同じ仕事を指示する場合でも、部下が組織に愛着を持っているか、持っていないかで、部下の仕事を引き受けるスタンスは大きく変わると思います(下記のイメージ)。
部下のひとりひとりが「喜んで仕事を引き受ける」と、自発的に問題解決に取り組む強い組織になります。
その為には、上司と部下のコミニュケーションは、仕事の範囲に限定させない方がいいと思います。
一見、取るに足らない無駄話でも、それが社員の組織への愛着につながり、組織力の強化につながるかもしれないと思うからです。
問題なのは、だらだらと時間を気にせず、無駄話をすることです。
無駄話も業務のひとつと決めます。そして、たとえば2週間に一回、30分という時間をとって、上司と部下が無駄話をするというイベントをするイメージです。この打合せ時間は「仕事の指示や進捗や評価」の話はしてはいけないルールとします。そして、上司が無駄話をするのでなく、部下が無駄話をするよう、旗振りをするのが上司の役目です。