【「選択と集中」は「人々」の想いや、「社会」の影響を無視している - 叡智の三猿】 のつづきです。
いまもなお、安定した人気を維持するガールズグループ
Apinkは2011年にデビューしたK-POPのガールズグループです。新陳代謝の激しい、K-POPに於いて、現存するガールズグループのなかで最古参のひとつかもしれません。
Apinkが流行の先端を走ったと思うのは、2013年~14年です。この期間に「NoNoNo」「Mr. Chu」「LUV」の楽曲が大ヒットを連発しました。日本デビューもこの期間に果たしています。
いまはメンバーの多くが30代を迎えてます。妖精のイメージは、いまでは安定感のある大人のアイドルとして、人気を維持しています。
直近(2023年4月)での MelOn に於けるガールズグループの検索ランキングは10位です(下記)。昨年の紅白歌合戦でおなじみの IVE や LE SSERAFIM など、10代から20代前半のアイドルグループが多いなかで、30代のアイドルグループが10位にランクインするのはすごいことです。Apink に対する世間的な関心がいまもなお高いことの証です。
Most Searched Girlgroups on MelOn in April
#1 IVE 719,109
#2 NewJeans 342,735
#3 BLACKPINK 285,767
#4 FIFTY FIFTY 270,030
#5 LE SSERAFIM 202,766
#6 aespa 145,724
#7 NMIXX 143,451
#8 TWICE 122,321
#9 STAYC 118,362
#10 Apink 115,993
Apinkの歌を知らない方は、4/11 の Killing Voice でメドレー動画を披露しているので、観てみてください。メンバー全員の歌唱力がとても高いことが分かります。
ソン・ナウンの脱退で地に落ちた事務所の信頼
Apinkの人気は安定していますが、残念ながら Apink の所属する事務所(ISTエンターテインメント)のファンからの評価は散々です。
事務所の評価が悪い最大の要因は、2022年4月に、元メンバーのソン・ナウンが脱退したことでしょう。
ソン・ナウンはアイドルとして誰から見ても非の打ち所がない容姿が強みです。Apink のビジュアル面での中心でした。
ソン・ナウンの脱退には布石があります。ソン・ナウンは2021年5月に、IST(当時はPlay M)から YGエンターテイメント(韓国の3大芸能事務所のひとつ) に移籍しています。その際、ナウンは女優としての飛躍を誓うとともに、Instagramでこうも発言しています。
「いつでも心を一つにして、再び集まり、Apinkとしても良い姿をお見せするので、これからもっと輝く Apink を応援していただきたいです」
ソン・ナウンは、所属事務所を離れても、Apinkとしての活動は続ける意気込みを語ってました。
Apinkのファンは脱退でないことに安堵しながらも、本当にApinkが 6人 の完全体で活動できるかを疑問視してました。
しかし、ファンの疑問を吹き飛ばすかのように、2021年の大晦日に「Pink Eve」という Apinkのファン・ミーティングが開催され、ソン・ナウンも参加しました。ファン・ミーティングはオンラインで観れたので、わたしは紅白歌合戦はそっちのけで、ライブ配信に釘付けされました。
ファン・ミーティングで、来年2月にカムバックすることがアナウンスされ、2022年2月に「HORN」というアルバムがリリースされました(下図)。このアルバムにも、ソン・ナウンは参加しています。(注:下の写真に写っているタレントは、ソン・ナウンではなく、ユン・ボミです)
「ソン・ナウンは、Apink で居続ける!」
ファンは安心しました。
しかし、雲行きが怪しくなります。
双方の事務所から「ソン・ナウンはHORNの楽曲には参加するが、プロモーション活動に参加しない」ことが伝えられました。その理由は「スケジュールの調整がつかなかった」・・・。
そして、5月に脱退します。
これこそ、ちゃぶ台をひっくり返す騒動です・・・。
スケジュール調整も出来ない事務所の信頼は地に落ちました。顧客から信頼を獲得するのは、何年もかかるけど、信頼が壊れるのは一瞬という例です。
どうせ脱退するなら、ナウンが YG に移籍した時点で、脱退した方が良かったと思いました。
わたしは「スケジュール調整がつかなかった」のではなく、「はじめからプロモーション活動にソン・ナウンを参加させる気はなかった」と想像してます。
たとえば、飲み会に誘われた際、その飲み会に行きたくないと思っても、正面から「行きたくない」とは言いませんよね??「残念だけど、別件があるから行けない」というのが、大人の断り方です。
事務所は、プロモーション活動にソン・ナウンを参加させることで発生するであろうコストをケチったと想像します。楽曲には参加はしてもらうも、プロモーションは、専属のアーティストで回した方が、少ない宣伝費で済みます。
ただ、そうだとすれば、これは取り返しのつかないミスだと思います。
ソン・ナウンが、事務所を移籍しても、Apink の活動を続けると発言した趣旨を見誤ったとしか思えません。
ソン・ナウンは、特別にApinkで歌ったり、踊ったりしたいのではないはずです(だから事務所を移籍したのです)。ナウンは、Apink というプラットフォームを通じて、ファン(PANDAといいます)との交流を続けたいと思っていたんだと思います。
プロモーション活動に参加しないということは、ファンとの握手会などのイベント活動に参加しないことを意味します。ソン・ナウンにとって、これでは Apink に居続ける意味がないと考えても不思議ではありません。
だから、ナウンは移籍からわずか 1年 で、Apink を脱退する決断をしたんだと思います。
事務所は目先のコスト優先主義に囚われ、ファンから信頼を失いました。
SNSでは事務所に対する、批判、不満が多く書き込みされてます。「もう、倒産すればいい」「Apinkのメンバーは全員、独立した方がいい」・・・
繰り返されるファンの厳しい声は、事務所が Apink の将来を真剣に考える方向に動いたと思います。
正当な批判と誹謗・中傷には境界線がない
ネット上での批判は、よく「誹謗・中傷」問題として、情報セキュリティの脅威として挙げられます。IPA(情報処理推進機構)による情報セキュリティ10大脅威ランキング2023年版で、「ネット上の誹謗・中傷・デマ」は、個人編の 2位(下記) です。
順位 | 脅 威 | 昨年 順位 |
---|---|---|
1位 | フィッシングによる個人情報等の詐取 | 1位 |
2位 | ネット上の誹謗・中傷・デマ | 2位 |
3位 | メールやSMS等を使った 脅迫・詐欺の手口による金銭要求 |
3位 |
4位 | クレジットカード情報の不正利用 | 4位 |
5位 | スマホ決済の不正利用 | 5位 |
6位 | 不正アプリによる スマートフォン利用者への被害 |
7位 |
7位 | 偽警告によるインターネット詐欺 | 6位 |
8位 | インターネット上のサービスからの 個人情報の窃取 |
8位 |
9位 | インターネット上のサービスへの 不正ログイン |
10位 |
10位 | ワンクリック請求等の 不当請求による金銭被害 |
圏外 |
情報セキュリティでは、「正当な批判はいいが、誹謗・中傷はよくない」と、いいます。
ただ、批判と誹謗・中傷の区別は曖昧です。発言する人は、多くの場合、自分の正義感から言葉を放ちます。その言葉を受け取る人が、それを批判と捉えるか、誹謗・中傷と捉えるかは、人によりけりです。
「正当な批判はいいが、誹謗・中傷はよくない」というのは、正論ですが、それを言ってもセキュリティ上の効果はあまりないと思います。
ネット上での「誹謗・中傷」問題について思うのは、個々の発言が「誹謗・中傷」にあたるかの考察はよく目にしますが、その発言を誰に放っているのかをあまり考慮していないことです。
わたしは、発信される言葉そのものが「誹謗・中傷」なのか「正当な批判」かを分析するより、誰に向けて発信したかに注意を向けた方がいいと思います。
端的には、権力を持った人や組織に対する「誹謗・中傷」は、ある程度、許容していいと思います。そうでなければ、権力者の思うつぼです。それでは、社会全体としてよい方向には進まないと思います。
一方で、権力を持たない個人に対しての発言は、たとえそれが「正当な批判」だったとしても、ものすごく慎重になるべきだと思います。
【ブランドは心のなかのアイデンティティ - 叡智の三猿】 へつづきます。