SNSの利用が一般化して長い年月が経過しましたが、誹謗・中傷問題(特にイーロン・マスク氏が辞任かで揺れるTwitter)は相変わらずです。
匿名性の高いSNSでは、被害者が加害者を特定するのに手間がかかります。
被害者が加害者を特定しようとした場合「プロバイダ責任制限法」の定めにのっとる必要があります。
被害者は加害者が書き込んだ誹謗・中傷の記録から加害者のIP アドレス(インターネット上の住所)を入手する必要があります。IP アドレスから加害者が使ったインターネットサービスプロバイダーを割り出します。そして、インターネットサービスプロバイダーに対して加害者の個人情報の開示請求をすることで加害者を特定します。
すなわち、裁判の手続きが2回必要となり煩雑で時間がかかることが課題でした。
2022年は、インターネットに悪質な投稿をした人の身元の開示手続きを簡略化する「改正プロバイダー責任制限法」が施行されました(2022年10月1日)。
「改正プロバイダー責任制限法」では、被害者が裁判所に発信者情報の開示命令を申し立てすれば、裁判所がー
- SNS運営事業者にプロバイダー情報の提供を命令
- プロバイダーに開示を命令
するので、2回だった手続きが1回になります。
被害者が加害者を特定するまでの手続きが簡略化されるのは、いいことです。
ただ、このことでSNSでの誹謗・中傷が減るとは思えません。
わたしは、コミュニケーションが成立する前提は、お互いに信頼感があることだと思ってます。同じ会話でも信頼感がある相手と無い相手では、言葉の受け取られ方が違います。
誹謗・中傷とは、信頼しない相手から投げつけられた心ない言葉で、受け取った側は、その言葉に傷つき、感じる解釈だと思います。
匿名性のあるSNS には、ベースとなる人と人との信頼関係がありません。SNS 上での誹謗・中傷は生まれべくして生まれた「功罪の罪」だと思います。
幼少期(昭和40年代!)に見た「ウルトラセブン」は、いま見ても心を揺さぶるような言葉が潜んでいる名作ドラマです。
そのなかに「狙われた街」という作品があります。そこでは、アパートの一室のちゃぶ台に向かい合うように、モロボシ・ダン(ウルトラセブン)と宇宙人・メトロン星人が座る場面があります。
メトロン星人は、ダンにこのようにいいます。
教えてやろう。我々は人類が互いにルールを守り、信頼しあって生きていることに目をつけたのだ。地球を壊滅させるのに暴力をふるう必要はない。人間同士の信頼感をなくせばよい。人間たちは互いに敵視し傷つけあい、やがて自滅していく。どうだ、いい考えだろう。
SNSに投稿され拡散される誹謗・中傷や、そこから発生する「分断」がもたらすなりの果ては、メトロン星人の言葉に通じるものがあると感じます。
SNSの利用が拡大した15年前、どれだけの人がこの想像が出来たのでしょうか・・・
もちろん、SNSは大きな効果をもたらしました。
個人としては、SNSを通じて気軽に情報発信をすることで、その情報に共鳴をしてくれる知り合いが増えたり、他人の投稿を読むことによる気づきもあります。
ビジネスに於いても、SNSを活用したマーケティングは重要な営業戦略です。
下記はAISAS(アイサス)モデルと呼ばれる消費者の購買行動を図でしめしたものです。
- Attention:注意
- Interest:関心
- Search:検索・情報収集
- Action:購入
- Share:共有
商品やサービスに興味を持った消費者がインターネットで商品を検索し、商品の詳細情報を入手します。そしてネットで購入します。購入したら口コミをSNSに投稿して共有します。そこから共有と検索のループが生まれます。
SNSのメリットを最大限に享受しながら、誹謗・中傷を減らすことを意識しなければなりません。
- SNSでも、ルールやモラルに反したことはしないようにしましょう。
- SNS上の情報は必ずしも正確ではなく、嘘も多いことを意識しましょう。
SNSの書き込みに対して過剰な反応をせず、知らない人の言葉・意見を鵜呑みにしない能力が必要です。これは、個人個人が持つべき情報セキュリティのリテラシーだと思います。