今年、国内で起きた事件でもっとも衝撃が大きかったのは、間違いなく安倍晋三元首相の暗殺事件でしょう。
日本史に刻まれるであろう重大な事件です。
国内でもっとも影響力のある政治家が白昼の演説中に暗殺されるのは、世界でもそんなに例あるとは思えません。結果として日本はセキュリティ管理体制が甘いことが露呈した事件だと思います。
一方で日本は世界のなかでも安全な国として知られています。2022年のBounceという旅行関連会社の調査においても、女性がひとりで旅をしても安全な国として上位に挙げられます。
セキュリティ管理体制は甘いのに「安全」なのはなんか矛盾してます。
矛盾が成立するのは、日本という国はセキュリティの事件・事故につながる「脅威」が少ないと思われているからだと思います。
「脅威」とは損害の可能性が発生する事象で、脅されることで感じるおそれです。
日本はアメリカのような銃社会ではないし、街中の至るところに交番もあります。
確かに「脅威」は低そうです。
脅威は心理的なものを含みます。
必ずしも実際に事件・事故が発生する頻度と脅威は一致しません。
たとえば、飛行機に乗るのとバスに乗るのでは、バスに乗る方が交通事故にあう可能性が高いはずです。しかし、心理的にはバスより飛行機に乗る方が事故への脅威を感じます。
実際、日本は安全なのかを考えると、結構、危険な国だと思ってます。
なぜなら、日本は大規模な自然災害が頻繁に起きるからです。
日本は太平洋をぐるっと囲んでいる環太平洋造山帯の範囲にすっぽり入ります。そのため、世界的にも有数の火山や地震が活発な地域です。
火山の多い日本は、いつ命の危険につながる大地震や津波が起きてもおかしくありません。でも、わたしたちの日常生活で、その脅威に脅えることはあまりありません。
むしろ、地震の脅威よりも火山による自然の恵みを享受し、日本の豊さを実感することの方が多いと思います。
① | 美しい風景や温泉に恵まれているため、観光地化がみられる。 |
② | 地熱エネルギーが豊富であるため、地熱発電による電力供給がみられる。 |
③ | 噴火直後の火山灰に有機物が多く含まれるため、穀物生産に適している。 | ④ | 豊富な地下水が存在するため、生活用水としての利用がみられる。 |
セキュリティの「脅威」を少ないと感じることで、概して日本人はセキュリティに対する危機意識が低いと思います。そのことが、セキュリティ管理体制やシステム上の欠陥を生んでいると思います。
このようなシステム上の欠陥を「脆弱性」と呼びます。
「脅威」と「脆弱性」は、リスクマネジメントでよく使われる言葉です。リスクとは損害などマイナスの影響を受ける可能性ですが、それは脅威と脆弱性のかけ算的な意味合いです。
リスクマネジメントはリスクをコントロールすることで、リスクの発生可能性や影響度をさげる活動です。
下図は「リスクマップ方式」と呼ばれるリスクマネジメントの手法です。リスクがコントロールがされていない場合のリスクを「固有リスク」、コントロールをした結果として残るリスクを「残余リスク」といいます。
安倍晋三元首相の暗殺事件を風化させず、リスクマネジメントを根本から見直す契機になって欲しいと思います。