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待機児童最少

2023年10月18日
◆保育の質向上が次の課題だ◆

 希望しても認可保育所などに入れない待機児童が、4月1日時点で2680人と調査開始以降で最少になった。県内の待機児童数はゼロ。全市区町村の86・7%に当たる1510自治体で待機児童がゼロとなった。

 保育所整備が進んだことと、急激な少子化が要因とみられる。今後は、保育の受け皿を増やすことから、地域ごとのニーズに合わせた「保育の質」向上に、少子化対策の軸足を移す必要がある。

 政府の少子化対策は、待機児童解消が長く柱になってきた。小泉政権当時の2001年、「待機児童ゼロ」を目標に掲げた。だが17年度末までとしたゼロ目標は達成できず、期限を20年度末まで延長。

 それでもかなわず、21年度からの4年間でさらに14万人分の受け皿を整備する「新子育て安心プラン」を進めている。

 ところが待機児童問題が解消する前に、出生数は国の想定を上回るペースで減少するようになった。もはや少子化対策は現状に十分マッチせず、軌道修正を迫られている。

 地域により保育所の定員割れも出ている。全国の定員充足率は0・6ポイント減の89・1%で低下傾向が続く。東京や大阪、沖縄などは90%超えだが、全国平均を大幅に下回る所もある。地域差を踏まえた対処が必要だ。

 施設があっても保育士確保が進まず、利用定員を減らした地域もある。多くの保育士に働いてもらうには処遇改善を一層進めるべきだ。資格があっても働いていない「潜在保育士」の復職支援も政府が先頭に立って取り組んでほしい。

 保育所利用には通常、親が月48時間以上就労しているなどの要件がある。だが政府は、親の育児負担軽減や孤立防止のため、要件に関係なく利用できる「こども誰でも通園制度」の創設を打ち出し、26年度にも全国で実施する方針を示す。

 若い世代が働きながら子育てしやすい環境を整えることは経済成長にも欠かせない。それでも現場負担が増えて保育の質が落ちることになれば、虐待を含む「不適切な保育」にもつながり本末転倒だ。この点でも保育士の配置を手厚くすることが合わせて必要になる。

 一方、共働きやひとり親家庭の小学生を預かる放課後児童クラブ利用の待機児童は依然多い。5月1日時点で、前年より約1600人増えて1万6825人。小学校入学後に子どもの預け先が見つからず、保護者が離職を迫られる「小1の壁」を放置してはならない。

 施設整備が間に合わないなら、放課後には使わない小学校の特別教室を活用するなどの工夫も早急に具体化したい。

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