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教団の解散命令請求

2023年10月14日
◆政府調査の真価が問われる◆

 高額な寄付や霊感商法などが長年、社会問題化してきた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について、政府は宗教法人法に基づいて解散を命じるよう東京地裁に請求した。昨年来の調査で、教団の活動は解散命令の要件に該当すると最終判断した。その当否は今後司法が審査する。

 解散命令は「宗教法人の死刑宣告」であり、教団側は徹底的に争う構えだ。「信教の自由」を侵害することがないように命令の要件は極めて厳格だ。一方で被害者や支援の弁護士らは、一刻も早い解散を求めている。

 争点の一つが「法令違反」の解釈だ。政府は命令請求に関する発表で「民法上の不法行為なども含まれる」としたが、教団側は「刑罰法令違反に限定される。当法人に該当の刑事事件はない」と主張している。

 岸田文雄首相も国会で当初、オウム真理教など過去2例の解散命令事案を基に「刑事事件に限る」と答弁し、翌日「民法も入り得る」と一転させた。首相は当時「政府として考え方を整理した」と釈明したが、不十分だろう。裁判官を納得させる説明をしなければならない。

 政府は、民法上の不法行為であっても「組織性、悪質性、継続性」が立証されれば、解散命令の要件を満たすとしている。これも争点だ。

 過去に献金などを巡り教団の法的責任を認めた民事判決は多数あるが、大半は信者の使用者責任を認めたもので、教団の組織的不法行為を認定したのはごく一部だった。このため政府は訴訟記録に加え、宗教法人法に基づく教団への質問権行使で回答を得たほか、170人超の被害者らの直接証言も収集した。

 これらを総合した結果、全国の事案に共通性があり、勧誘などマニュアルも作成されていたことが分かったとしており「組織性」の立証が可能と判断したようだ。生活困窮や家庭崩壊に至った事例も把握。「悪質性」を証明する方針とみられる。

 問題は「継続性」だ。教団側は「2009年に『コンプライアンス宣言』を出して信者の指導を徹底し、トラブルは激減した」としている。一方で被害者支援の弁護士団体は、宣言後も140件、総額約19億円の被害が出たと指摘する。今も解散命令が必要な状況だと立証できるかは、こうした被害を裏付けられるかにかかっている。

 解散命令請求の裁判は非公開だ。政府は今回の発表に際して説明文書を配布したが、内容は概略にとどまり、具体性に乏しかった。今回の請求は宗教法人を巡る重要な前例となり、いずれ制度の検証も必要になろう。政府には適時に国民に十分な説明をするよう要求したい。

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