yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ - 長塚 圭史 - TOKYO FM 80.0MHz-

yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

STORY

ストーリー

第494話 失意の日々を、希望に変える
-【福岡県にゆかりのあるレジェンド篇】儒学者・本草学者 貝原益軒-

Podcast 

江戸時代の福岡藩士、儒学者で本草学者の賢人がいます。 貝原益軒(かいばら・えきけん)。 本草学とは、薬草だけにとどまらず、自然界にあるもの全てが対象。 病の効能に役立つものを扱う学問です。 貝原は、さらに本草学だけではなく、当時まだ広く知られていなかった「健康」という概念を哲学的に説き、人生論にまで高めました。 江戸時代、平均寿命が50歳と言われていましたが、彼は84歳まで生き、82歳の時に書いた『養生訓』には、現代に生きる我々にも当てはまる、心と体の健康術が記されています。 貝原は言いました。 「体が健康だと、とかく無茶をする。 睡眠時間を削り、暴飲暴食、体を気遣うことは後回し。 病気になってから急に養生しだすが、時すでに遅し。 それはまるで、お金がなくなって貧乏になってから節約を始めるのに似ている。 お金があるうちから、抑えるところは抑え、節制に励めば、貧乏にならずに済むものを…」 貝原の銅像は、福岡市中央区の金龍寺にあります。 その銅像は、正座して机に向かっています。 彼は生涯、努力のひとでした。 書物を読み、調べる。 そしてその一方で、全国を歩き回り、現地におもむくことを大切にしていました。 貝原は、最晩年になって、執筆に勤しみ、多くの著作を残す偉人になりますが、若い頃は、挫折の連続でした。 特に20歳の時に、藩主の怒りを買い、およそ7年にわたる浪人生活を余儀なくされました。 何もできぬ失意の日々。 でも、その7年間の過ごし方こそ、彼がのちに花開くきっかけを作ったのです。 彼は、失意の日々を、いかにして希望の明日に変えたのでしょうか。 日本のアリストテレスと言われるレジェンド、貝原益軒が人生でつかんだ、明日へのyes!とは? 江戸時代の儒学者、本草学者、貝原益軒は、1630年、寛永7年、筑前国、福岡藩士のもとに生まれた。 幼い頃は、病弱で一歩も外に出られない生活が続く。 物心がつくと、父の書物を開いた。 ただ家族の誰も、実際に読んでいるとは思わなかった。 父は書を好み、医学書、中国の四書など、蔵書はふんだんにあったが、幼い子には難しすぎる。 おそらく眺めているだけだと疑わなかった。 あるとき、兄が算術の本を探していた。 5歳にも満たない益軒が、その本を持っていた。 「こら! 父上の本で遊んではいけない」と、たしなめる。 まさかと思って、いくつか算術の問題を出してみた。 全問正解。 驚いた兄は、父や母に報告する。 父は、我が子が天才かもしれないと感じたとき、涙を流した。 なぜなら、天才は短命だと信じられていたから。 「益軒、おまえは、長生きしなくちゃいかん、私が医学のことを教えてやるから、よく聞くがいい」 父は言葉どおり、毎日、貝原に医学の本を読んで聞かせた。 蘭学、漢学。手に入る本は、全て取り寄せた。 6歳のとき、母がこの世を去る。 命に限りがあることを、哀しみの中で知った。 江戸時代の偉人、貝原益軒は、幼少期、孤独だった。 体が弱く、一日中、家にこもる。 書物だけが友だちだった。 ただ救いだったのは、誰かとつるんだことがないので、たったひとりがあたりまえ。 近所で遊ぶ子どもの声を聴きながら、ひたすら本を読んだ。 その甲斐があり、18歳で福岡藩 二代藩主、黒田忠之(くろだ・ただゆき)に仕えることになった。 父は喜び、知り合いに自慢した。 藩の学問所に通う同年代に負けない息子を誇りに思う。 貝原は、心に決めていた。 どんな状況になろうとも、己の志だけは高くあろう。 己が腐れば、未来も腐る。 気持ちの持ち方ひとつで、明日は見える。 藩主のもと、誠心誠意尽くす。 ひとと接してこなかったので、伝える術は劣っていたが、それを引いてあまりあるほど、博識で、鋭い判断力を持っていた。 ところが…2年が経ったある日。 藩主黒田が貝原を怒鳴りつけ、退職を命じた。 なぜ黒田が怒ったか。史実には明記されていない。 それからおよそ7年間、貝原は浪人生活をおくることになる。 完全に藩から見放された、長い月日…。 それは、この世の終わりに思えた。 貝原益軒が過ごした7年にも及ぶ何者でもない日々。 彼は以前決めたとおり、志だけは高く設定する。 相変わらず書物は読むが、行動を重視した。 幸い、住まいは長崎の近く。 当時、長崎には、西洋の文化や技術が押し寄せていた。 何度も、長崎に通う。 歩く。ひたすら歩いて学ぶ。 知りたいことがあれば、すすんで人に会いにいった。 時間はたっぷりある。 しかも、失うものは何もない。 誰に気をつかうこともなく、知らないことを知らないと言えた。 父も含めて、まわりからは、「天才も地に落ちた」と哀れみの目で見られた。 気にしない。もともと自分には、何もなかった。 27歳のとき、三代藩主、黒田光之(くろだ・みつゆき)に認められる。 ただ、貝原の気持ちは、京都に向いていた。 翌年には、藩の命を受けて、京都に滞在。 ここで生涯の学問、本草学に出会った。 全ては、浪人生活で描いた未来予想図だった。 「志を立てることは大にして高くすべし。 小にして低ければ、小成に安んじて成就しがたし。 天下第一等の人とならんと平生志すべし」 貝原益軒 【ON AIR LIST】 ◆50% / Official髭男dism ◆わが母の教えたまいし歌(ジプシーの歌 作品55-4) / ドボルザーク(作曲)、ジュリアン・ロイド・ウェバー(チェロ) ◆The End Of The World / スキーター・デイヴィス ◆ルキンフォー / スピッツ ★今回の撮影は、「曹洞宗 耕雲山 金龍寺」様にご協力いただきました。ありがとうございました。
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RECIPE

レシピ

霜降りひらたけと大根の蒸しスープ

今回は、冬が旬の野菜、大根を使った料理をご紹介します。

材料 (2人分)
  • 霜降りひらたけ 1パック
  • 大根 長さ3cm分(100g)
  • 白菜 大1枚
  • 鶏もも肉 1/2枚
  • 【A】干し海老 10g
  • 【A】塩 小さじ1弱
  • 【A】水 400ml
  • ごま油 小さじ1
写真 カロリー / 185kcal(1人分)
調理時間 / 15分
使用したきのこ / 霜降りひらたけ
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。大根は皮をむき、食べやすい大きさに切り、白菜と鶏肉は一口大に切る。
  • 2.
  • 深めの器に半量ずつ(1)と【A】を入れ、蒸し器で30分ほど蒸し煮にする。
  • 3.
  • 最後にごま油を回しかける。

yesとは?

番組概要

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』今週あなたは、自分を褒めてあげましたか? 古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。あなたの「yes!」のために。

語り:長塚圭史 脚本:北阪 昌人 ▸ Profile

放送時間
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
  • TOKYO FM…SAT 18:00-18:30
  • FM大阪…SAT 18:30-19:00
  • FM長野…SAT 18:30-19:00
  • FM軽井沢…SAT 18:00-18:29
長塚 圭史

PROFILE

長塚 圭史
語り: 長塚 圭史
1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。 また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。
北阪 昌人
脚本: 北阪 昌人
1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。 TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。 『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。 主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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