- 板橋キャンパス
医療技術学部 臨床検査学科
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専門的な知識・技術、
豊かな人間性、国際性を備えた
臨床検査技師を育てる
医療の進歩によって、現在ではウイルス抗原・抗体、遺伝子などの測定も可能になりました。臨床検査は病気の正確な診断や早期発見に重要な役割を担っており、これからの先端医療において臨床検査技師への期待は高まるばかりです。診断や治療を行う上で必要な臨床データを迅速かつ正確な結果として情報提供できるだけでなく、他職種とのコミュニケーション能力が十分なチーム医療に貢献できる人材を育成します。
「臨床検査技師にとって顕微鏡は目」
臨床検査技師の仕事の1つは、患者さんの身体から得られる血液や細胞などの検体からウイルスやがんなどを検査・分析することです。検査により、病気の診断だけでなく、遺伝子疾患の予防や早期発見、感染症などの治療において実用的に生かすことができるようになります。臨床検査技師は、医師と同じレベルの人体に関する知識と、医師よりも卓越した検査技術を身につけなければいけません。本学では、優れた教員による生きた知識を学べる授業や、一人につき1台用意された顕微鏡を用いて、高度な知識と技術を身につけていきます。
高い知識と技術はもちろん、医療の安全性を確保するため、リスクマネジメント教育にも力を注いでいます。また、近年増加している、国際的な規模で流行する感染症についても、予防医学的な対処法も含め、医療の国際化についても学べます。
視能矯正学科、看護学科、診療放射線学科、臨床検査学科、スポーツ医療学科救急救命士コースの履修要項
人体の構造と機能
臨床検査分野で習得すべき医学の内容・知識の量は、基本的な部分だけでも膨大なものになってきました。本授業は、解剖学・生理学・生化学を1年次に広く浅く学ぶことによって、基本的な用語を覚えたり、知識のつながりや枠組みを頭の中に作り上げることを目標にしています。教養科目として化学や生物などの自然科学も従来どおり履修するわけですが、自然科学から医学・臨床につなげていくというのが難しい面もあります。たとえば化学から積み上げて生化学、医化学に到達するというボトムアップのやり方だけでは労力の割になかなか成果があがらない面もあります。早期から病気の話を取り入れ、医学の全体像や卒業時点での「完成像」をイメージしながら基礎医学の知識を身につけます。
微生物検査学総論
地球上の生態系も、そして私達の人体でさえも、目に見えない小さな微生物たちとの共存あるいはせめぎ合いで成り立っています。これらの微生物たちの一部は、発酵や分解作用などで私達の暮らしに役に立ったり、あるいは身体の表面や内部に棲みつき悪玉菌から守ってくれる働きもしています。ところが、身体の抵抗力が弱くなってしまうと、そのような微生物と生体とのバランスを欠いて逆に健康に悪影響が生じる場合もあり、ほとんどの人間に深刻な病気を引き起こしたり、生命を脅かすような病原体も存在します。本授業では、そのような微生物と人間とのかかわりや個々の微生物の性質などを学びます。
免疫検査学、輸血・移植免疫検査学
免疫は微生物やウイルスなどによる感染に対しての生体防御機構です。一方、がんや自己免疫疾患など内部からの破壊に対する生体反応に対しても免疫応答が引き起こされます。自己と非自己を識別して非自己を排除する生体の仕組みは、裏を返せば自己に反応しないという免疫寛容という原則が成り立っています。免疫検査学ではこのような免疫系の仕組みを理解し、免疫学的検査が有用な疾患と検査の基本原理である抗原抗体反応に必要な知識を学びます。輸血・移植免疫検査学では実際の感染症、アレルギー、自己免疫疾患等の検査法を学び、検査結果を判定できるスキルを身につけます。また、輸血・移植関連検査である血液型検査、HLA検査についても学び輸血療法の目的と特性について理解を深めていきます。
病理学
病理学とは病気の原因を学ぶ教科と定義されますが、その今日的意味は国家試験に出題される病理学の出題範囲に限定されるものではありません。本授業ではいわゆる国家試験対策用の病理学だけでなく、病理学の他にも臨床病理学ⅠとⅡ、病理学特論などの教科を設けて、学生が臨床的事項や他教科知識との関連において広く人間の疾患を理解できるような講義を目標としています。病理学は先天異常、血管障がい、炎症、腫瘍などの疾患の起こるメカニズムを学習する病理学総論と、それらのメカニズムが循環器、呼吸器および消化器などの各臓器や器官にどのように作用して疾病をもたらすかを学習する病理学各論に分けられますが、さらに応用的な付帯教科を設けるとともに、実践的な病理組織標本を観察する病理検査学実習を平行させて、将来臨床検査技師として現場に立った時に医師と同じ視点で患者さんや疾患を診て、検査方針の立案などに寄与することのできる素養を磨きます。
遺伝子・染色体検査学
遺伝子解析技術が急速に進歩し、研究分野だけでなく遺伝子疾患の予防や早期発見、感染症の診断や治療において実用的に生かされるようになりました。遺伝子検査は、いまや臨床検査の重要な位置を占めています。講義や実習では「お酒に強い体質か」「性格の形成に係る遺伝子は存在するのか」、「インフォームドコンセントを含めた遺伝子診断に関するガイドライン」といった身近な事例や、遺伝子診断にかかわる時事問題などを織り交ぜながら遺伝子解析の原理・理論に対する理解を深めていき、そのうえで実習を通して遺伝子検出の手法を習得します。
医用工学概論
本授業では検査機器を正確な技術で安全に使用するための知識を学びます。検査機器は採取した血液や尿を検査する「検体検査」、身体に検査装置を装着して心電図や脳波を検査する「生理検査」などさまざまな業務で使われています。いずれの検査機器も多くの電子部品から組み立てられていて、部品の特性や原理を習得することで、検査値がどのような物質や身体の変化をとらえているのかを理解します。また近年は検査結果を電子カルテ上で取り扱うことが一般的になってきていますので、情報ネットワーや情報処理についても学習します。
血液検査学Ⅰ
血液はさまざまな成分から構成されていますが、大きく分けると血球成分(細胞成分)と血漿成分に分かれます。血球成分としては赤血球、白血球、血小板があります。これら血液細胞の腫瘍化、血球の数的・質的異常により、さまざまな病気が発症します。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄増殖性腫瘍、骨髄異形成症候群、鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、出血性疾患などです。これらの検査・診断を行なうためには血液の基本的事項として、血球の働きや血球が造られる過程、血球のかたち、生体内での調節機構を知ることが必要です。また病気が発症する原因についても理解していなくてはなりません。血液情報解析学では血液学の基礎的事項を学びます。
1・2年次に臨床検査の基礎を固めます。専門科目の基礎である化学・生物・医学の知識を身につけた後、学内実習を通して検査の実践的な手技を習得します。3・4年次に行う病院での臨地実習でそれらをさらに発展させ、実践力アップをめざします。医学部附属病院が隣接しており、常に最新の医療・研究を肌で感じながら学ぶことができます。学内で学んだ基礎的な検査技術とコミュニケーション力をもとにして、将来、実際に活躍する病院での適切な検査の実施、患者さんや家族への対応、態度などマナー面を含む実践力を習得します。チーム医療における他部署との連携など、病院での役割についても学びます。
生命科学実験
1年次の生命科学実験は、解剖学・生理学・組織学および分子生物学などの基礎となる実習で、事前に生命科学の授業で扱った内容について、実際に観察して、理解を深めています。生物顕微鏡と実体顕微鏡が1人1台ずつあり、グループで相談しながら進めるため、初心者でも顕微鏡の使い方を学べます。内容は、大腸菌の形質転換やバクテリア鞭毛のエネルギーの確認から、鶏卵を用いた初期発生とアポトーシスの観察まで多岐に渡ります。たとえばマウスを用いた各組織の観察・実験では、膵臓のランゲルハンス島、腎糸球体および尿細管、耳小骨および内耳の観察や、眼筋の神経筋接合部のアセチルコリンエステラーゼの活性染色など、細胞や組織を生きた状態に近い形で観察して生命のつくりとしくみを学習します。
生化学検査学実習
本授業では健康診断などでよく目にする生化学検査項目について学びます。生化学検査項目は、血液中に存在するいくつかの物質量の変化を読み取ることで病気を知ることを目的としています。そのため、細心の注意を払い、正確に、そして迅速に測定することが重要です。器具や機械の仕組み、正しい操作法、検体の取り扱い、測定法の原理をしっかりと理解し、実際に触れたり操作を行うことで、信頼される検査値を求めるために必要なスキルを養います。また、検査値を測定するだけではなくその数値の意味を理解することで、そこに込められた身体からのメッセージを読み取る力を身につけます。正しく測定する、得られた数値を読み取る、それを正しく伝えるといった検査業務において重要な流れを、学生同士が積極的に話し合いながら体験し学習しています。
解剖学実習
江戸時代の明和年間の小塚原刑場における日本最初の解剖は、オランダの医学書『ターヘル・アナトミア』と対比させる経験がなければ西洋医学の導入も、その後の生化学、生理学、微生物学および遺伝学へと続く現代医学の道も開けなかったはずです。人体の実物を観察することは、医学・医療を習得するために最も基礎となる必須事項であることは言うまでもありません。しかし詳細で緻密な系統解剖実習が義務づけられている医学部に比べて、他の医療従事者養成校における解剖実習は、なかなか人体の実物に触れる機会を確保するのが困難です。本学科では人体の骨格標本や大型の心臓の模型などを駆使して本物の人体をシミュレーションする実習とともに、医学部学生の解剖実習室で実際の御遺体を観察したり、病理解剖や外科手術で摘出された人体臓器の肉眼的および顕微鏡的観察を最大限に取り入れ、座学の知識と照合させる訓練を行なっています。
生理検査学実習
心臓がドキドキしたり、胸の辺りに痛みがあると病院に行き心電図検査を受けますが、心電図っていったいなんでしょうか。心臓に電気が流れているのでしょうか。生体は精緻な調節機構を有しており、外界からの刺激に対して適正な反応を示します。これらの反応は生命維持のためであり、生体の恒常性に寄与しています。生体情報のうち主に電気的な信号は心電図、脳波などで計測しますが、生理学実習では正常者の心電図と脳波の記録法と波形の読み方、さらに負荷を加えた記録法を行ないます。また画像診断では人間の体内の状態を表現しますが、生理検査学実習では超音波を用いて直接臓器の状態を観察します。がんや炎症、出血などが画像診断の主な対象となりますが、映し出された画像は病気のすべてではありません。診断に欠かせない検査方法ではありますが、CTやMRIなどとの描出方法の違いにより結果の判断は大きく異なります。超音波画像の特性と限界を病態と合わせて学びます。
病理検査学実習
形態学的検査の1つである細胞診検査について学びます。細胞診検査とは、顕微鏡を用いて細胞を観察し、感染症、がんになる前(前癌病変)の細胞、がん細胞など細胞の良悪性を判断する検査法です。実習では細胞診検査に必要な基礎知識を、典型的な細胞診標本(婦人科、呼吸器、泌尿器、体腔液領域)を用いて、一人ひとりが顕微鏡で観察することで身につけていきます。実習の特色として、バーチャルスライドを使った細胞の説明、毎日の症例検討会があげられます。症例検討会はディスカッション顕微鏡を用いて1枚の標本を班ごとに供覧し、学生同士で症例の細胞像に関する意見交換を行います。最後に細胞所見と考えられる診断名、鑑別疾患を発表していきます。この実習では細胞診に関する形態学的な知識を身につけるとともに、人の意見に耳を傾けディスカッションを通して班の意見をまとめていく力を養うことを目標にしています。
学生が実際に病院に行き、実際の検査業務やその他の領域を学ぶ実習が、臨地実習です。本学科では、大学に隣接する帝京大学医学部附属病院などの病院や検査センターなどで臨地実習を行い、実践的な臨床検査技術を身につけます。また、基本的な臨床検査技術だけでなく、臨床検査技師の役割と責任を学び、医療人として将来あるべき姿を明確化し、個々の患者さんに合った検査技術を身につけます。
おもな実習内容
帝京大学医学部附属病院、帝京大学医学部附属溝口病院、千葉大学医学部附属病院、横浜市立大学附属病院、筑波大学附属病院、東京慈恵会医科大学附属病院、埼玉医科大学総合医療センター、聖マリアンナ医科大学病院、東海大学医学部付属病院、上尾中央総合病院 ほか
(2024年4月現在)
年次別進級条件と卒業・修了要件は、履修要項に明示し、年度はじめのガイダンスで学生に周知・徹底しています。年度末に進級判定および卒業査定判定会議を開催し、査定資料をもとに進級・卒業査定が厳格に運用されており、履修要項に明示した進級・卒業要件を満たさない場合、原級留置きとなります。
すべての科目の評価基準が毎年学期はじめに配布される履修要項に明示されます。評価尺度は科目によって異なりますが、一般的には、定期試験の成績、レポートなど提出物の成績、出席状況、学習態度などを按分して総合計で評価しています。
区分 | 評価 | GPA | 成績評価基準 | 評価内容 |
---|---|---|---|---|
合格 | S | 4.0 | 90点以上 | 特に優れた成績を表します。 |
A | 3.0 | 80点台 | 優れた成績を表します。 | |
B | 2.0 | 70点台 | 妥当と認められる成績を表します。 | |
C | 1.0 | 60点台 | 合格と認められる最低限の成績を表します。 | |
不合格 | D | 0.0 | 60点未満 | 合格と認められる最低限の成績に達していない(授業への出席日数不足および試験の未受験などを含む) |
GPA(Grade Point Average)制度とは、学修の成果を客観的な数値で評価するものです。この制度は、米欧の大学で採用している成績評価制度に概ね準拠しています。
基礎分野科目においては必修科目20単位および選択科目から4単位以上、合計24単位以上、専門基礎分野科目においては必修科目20単位、専門分野科目においては必修科目81単位、総合計125単位以上を修得しなければなりません。