観測的宇宙論
天体物理学
白崎 正人[所属期間 令和5年4月-令和6年3月]
SHIRASAKI Masato
2023年度採用
自然科学研究機構国立天文台
研究力強化戦略室
助教
専門分野
キーワード
宇宙大規模構造
暗黒物質
宇宙加速膨張
N体シミュレーション
データサイエンス
所属学協会
日本天文学会
主な研究内容
現代の天文学者は、宇宙の進化を理解する上で二つの大きな謎に直面しています。それは、(1) 観測される銀河を宇宙で形成するには光で観測できない物質が必要であること、(2) 約70億年前から宇宙は加速膨張しているということです。光で観測できない物質は、通称暗黒物質と呼ばれ、現代物理学の枠組みの範囲ではその存在を説明できません。また、宇宙に万有引力しかない状況では、宇宙の膨張速度が加速していくことはありません。宇宙加速膨張は、万有引力に逆らう斥力が宇宙に存在することを示唆していますが、何が斥力をつくるのかはよくわからないままです。
私はこれまで数値シミュレーションと観測データを使って、暗黒物質と宇宙加速膨張の物理的な性質を特定するための研究を進めてきました。特に、重力レンズ効果と呼ばれる現象を使って、宇宙に遍く存在する物質分布の地図を作成し、地図の統計的な情報を手がかりに天文学の二大未解決問題に取り組んでいます。最近では、画像解析の分野で進展著しい畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network; CNN) を取り入れて、重力レンズ効果で描くことのできる宇宙地図の精密化に従事しています。これまでの対象は天文学に関するデータでしたが、 CNNの手法自体は天文学に限らず様々な学術分野の研究に応用できます。CNNに代表される深層学習と呼ばれる研究手法は、観測・実験データが豊富にある状況で威力を発揮し、その高い近似能力は、自然界の複雑な現象を予測するための数理モデルを構築するときに役立ちます。 T-GExフェローの方との交流を通じて、天文学以外の分野での共同研究の可能性を模索していきます。
論文
Masato Shirasaki, Kana Moriwaki, Taira Oogi, Naoki Yoshida, Shiro Ikeda, Takahiro Nishimichi, “Noise reduction for weak lensing mass mapping: an application of generative adversarial networks to Subaru Hyper Suprime-Cam first-year data”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, Volume 504, 2021, pp.1825-1839
Masato Shirasaki, “Probing Cosmic Dark Matter and Dark Energy with Weak Gravitational Lensing Statistics”, Springer Singapore, 2016, 136
研究紹介
researchmap https://researchmap.jp/masato_shirasaki?lang=ja
本事業を通じて解決を目指す世界的課題
暗黒物質- 観測量の高速変換アルゴリズムの開発
暗黒物質は自ら光を発しませんが、主要な重力源として宇宙の構造形成に重要な役割を果たしています。暗黒物質の空間分布は重力によって決まるため、シミュレーションを用いて精密に予言可能であるのに対し、実際の天文観測で検出できる星やガスについては確立した理論がなく正確に予言することが困難です。我々は、正確に予言できる暗黒物質の分布から準解析モデルと機械学習を利用して、観測量の空間分布を高速に予言できるアルゴリズムの開発を目指します。このアルゴリズムは、将来の多波長天文観測から、暗黒物質や宇宙加速膨張の情報を引き出す際に重要です。特に、星やガスの形成進化に起因する不定性を準解析モデルのなかのパラメタを変えることで考慮でき、将来観測におけるロバストな解析を可能にします。
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