近年スマホやモバイルバッテリーなどに広く使われているリチウムイオン電池の出火件数が増えています。
「自分には関係ないんだろうなあ」と考えている人は要注意。普段、何気なくやっている行動がスマホに内蔵しているリチウムイオン電池の発火原因になり得るんです。リチウムイオン電池の発火原因、正しい廃棄方法を解説します。
スマホやリチウムイオン電池を含む製品の処分に関する啓蒙活動
令和5年、東京消防庁管内におけるリチウムイオン電池を搭載した製品から出火した火災の発生件数は昨年を上回り、近年急激に増加。リチウムイオン電池搭載製品を処分する際に、誤ったごみの分別によりごみ収集車から出火する火災も増加しており、それを受けて東京消防庁が呼びかけを行い、ソフトバンク、ドコモ、KDDI、楽天モバイルの通信キャリア4社共同でスマホの事故(火災)について注意喚起を行っています。
教えてくれた人
ソフトバンク株式会社
テクノロジーユニット デバイス技術本部 IoTデバイス統括部 デバイス品質部
木村 文紀(きむら・ふみのり)
モバイル端末を中心とした開発検証におけるハードウェア品質保証、仕様策定、PL・法令の適正な品質確保や業界連携による安心安全活動などを担当。
目次
なぜ起きる? スマホのリチウムイオン電池発火の原因
スマホのリチウムイオン電池の発煙・発火、破裂といった事象について調査を行うこともありますが、以下のように明らかな外部要因と見られる痕跡のあるものが多数発生しています。
- 踏んだり、尖った(とがった)壁や物に押し付けるなどの行為で局部的に非常に強い荷重がかかったり、落としたりぶつけたりするなどの衝撃を受けた痕跡があるもの
- 電池交換やスマホの異常を感じて分解しようとして、電池を損傷させてしまったもの
- 電子レンジなどの過熱調理機器で過熱したり、高温の発熱物の側に置かれていた痕跡があるもの
電池の発火につながる、やりがちなスマホのNG行動例
- ポケットに入れて座ってしまい、圧力が加わる
- ぶつけるなどの強い衝撃を与える
- スマホを分解する
スマホ本体に内蔵されているためリチウムイオン電池の状態はわかりにくいですが、非常に繊細な部品ですので強い荷重や衝撃などにより電池内部がショートを起こすと発煙・発火、破裂につながります。特に、スマホの分解はリチウムイオン電池を損傷させる可能性があるため、絶対に避けましょう。
- 携帯カイロなどの発熱物と一緒にポケットやカバンに入れる
- 熱がこもってしまう布団やタオルなどの中に入れる
- コンロ、ストーブなどの火のそばに置く
- サウナに持ち込む
- ぬれたスマホをドライヤーや電子レンジで乾かす
リチウムイオン電池がゴミ収集車の中で出火するケースも
スマホをはじめ、リチウムイオン電池を内蔵した製品が一般ごみと一緒に捨てられ、ゴミ収集車で収集中に出火する火災も発生しているとのこと。家庭でリチウムイオン電池を処分する場合、電池は一般廃棄物に分類されるため、リチウムイオン電池をプラスチックごみとして不燃ごみに出すことはできません。
ソフトバンクのケータイリサイクルへの取り組み
ソフトバンクショップとワイモバイルショップでは、不要になったスマホやリチウムイオン電池を無償で回収を行っています。
また、家電量販店やホームセンター、市役所、大型のスーパーなどに設置してある、リチウムイオン電池のリサイクルボックスへの持ち込むこともできますので、そちらについての詳細は各店舗および自治体のホームページなどを確認してください。
充電器も発火する!? その要因と、非純正充電器の落とし穴
充電器においても以下のような異常がある状態で充電すると、充電コネクタ内部の端子ピンでショートが発生し、発熱・発煙・発火する場合があります。それによりスマホのリチウムイオン電池の発火まで広がる場合もあるので合わせて注意が必要です。
充電器の発火要因① 充電コネクタ内部に異物が付着
充電コネクタの内部端子ピンやシェル(金属の外郭)との間に飲料水や汗、ホコリなどの異物が付着したまま充電することでショートが発生し、充電コネクタの発熱・発煙・発火が起こります。
充電器の発火要因② 充電コネクタが変形
充電コネクタの金属部分がゆがんでいたり、曲がっていたりするなどの変形を起こしていると、内部の端子ピンやシェル(金属の外郭)も変形により接触を起こしている可能性があります。その状態のまま充電することでショートが発生し、充電コネクタの発熱・発煙・発火が起こります。
リチウムイオン電池は熱に弱く、電池膨張や発煙・発火、破裂にいたる場合があります。万一の事故を防ぐためスマホ本体には熱に対するさまざまな保護機能が備わっていますが、NG行動例としてあげた環境だと製品の推奨温度を超えて放熱ができない状態が続くことで電池の熱暴走が起こり、スマホ発火につながる危険性があります。
一見、安価でお得な非純正充電器の落とし穴って?
非純正充電器は、安価で購入しやすい利点がありますが、正直おススメできません。各通信キャリアの純正/公式充電器には、充電コネクタ内の端子接触不良や異物侵入(ゴミや液体など)で発熱した場合にその熱を検知して、いざというときに電力供給をストップしてくれる『異常温度対策』機能が搭載されており、充電コネクタ発熱による事故やけがのリスクを最小限にすることができます。
非純正充電器にてモバイルバッテリーを充電した際の発火
携帯電話を充電するための充電器として、いろいろな安全対策を施した、通信キャリア純正の充電器のご利用を強くオススメします。非純正/非公式の充電器との組み合わせによる事故も発生しているのでご注意ください。
各通信キャリア販売の純正充電器やMCPC認証(モバイル充電安全認証)品の安全対策
①通信影響対策:スマホ/タブレットへの通信影響を抑えるように設計
②異常温度対策:コネクタやアダプタ内部に温度検出機能を搭載し、温度異常を検知した場合、被害を最小限に抑えるために充電を停止する
③過電流・ショート保護機能:負荷電流が過電流を検知した場合、保護機能が働き出力電流を停止する
④PPS機能:電圧/電流を状況に応じて最適値に調整することで電池の発熱を抑え、ムダなく短時間で充電することができる
正しい使用方法を守って、安全で快適なスマホ生活を送りましょう。
ソフトバンクはNTTドコモ、KDDI、楽天モバイルと連携し、安心、安全にスマホをご利用いただくための情報をご案内しています。こちらの記事も参考にしてみてください。
(掲載日:2022年3月25日、最終更新日:2024年3月14日)
文:ソフトバンクニュース編集部