【開発の裏側】from STAFFキャンプ場ができるまで -栃木県鹿沼市-

Prologue

スノーピークの直営キャンプフィールドは、現在全国で6か所にあります(2023年3月時点)。そして2024年には栃木県鹿沼市に、関東エリアでは初の新たな直営キャンプフィールドが開業します。

私たちスノーピークが手掛けるキャンプフィールドは、どのようにして作られるのか。

今回は、鹿沼市とともに開業準備を進めている担当スタッフの岡本(スノーピーク地方創生コンサルティング)が、そのストーリーをご紹介します。

◇地域の想いを受け止めて

栃木県の中西部、宇都宮市と日光市に隣接する鹿沼市。

岡本:
「のどかな農村風景が広がり、静かな里山の雰囲気が残る、栃木県鹿沼市上南摩町(かみなんままち)。ここにスノーピークのキャンプフィールドをつくる計画が本格始動したのは、2021年のことです。

思川開発事業の南摩ダム建設に伴い、鹿沼市が整備する水源地域振興拠点施設の指定管理予定者の公募に参加しました。

そこで『この豊かな自然を活かし、地域とのつながりを大切にしたキャンプフィールドを中心としたプラットフォームをつくる』という私たちの提案を選んでいただきました」

2024年度の完成に向けて工事が進む南摩ダム(2021年撮影)。

「この施設の背景には、南摩ダムの建設にともない慣れ親しんだ土地や住まいから離れることとなった住民の歴史があります。

ダム建設の影響を受ける対象地域となった80世帯が住居の移転に協力され、その建設が実現することとなったのです。

この施設の計画は『ダム建設の影響を受けた地域住民や市民の皆さんための交流の場にしたい』という鹿沼市の想いから始まりました。

私たちは、鹿沼市や住民の皆さんの想いを第一に実現しつつ、キャンプを通じて人を呼び込み、もう一つの命題である『地域活性化』につなげようと、施設の実施設計を固めていきました」

◇キャンパーの視点で、魅力を深掘る

「最前線で地域の方々とつながって、鹿沼らしい拠点をつくりたい」と話す。

岡本:
「拠点開発では建築物などハード面が先行し、体験などのソフト面がおざなりになるケースは珍しくありません。私たちは鹿沼ならでは特色を生かした滞在を実現するために、体験開発にも注力しています。

そのプロセスを象徴するのが『モニタリングキャンプ』。キャンパーとして地域と向き合い、検証を通じてその土地の魅力を掘り下げる取り組みです」

モニタリングキャンプは、地域の人々やユーザーの皆さんにも施設開発プロセスに参加してもらえる貴重な機会。

「1回目には実際にキャンプフィールドの建設予定地でキャンプをして、鹿沼市の職員やランドスケープの専門家、関係者や住民の方々と『この地の植生と地形を調べる』という目的のもと、自生している植物を採集し、調理して実際に食べてみるという企画を行いました。

2回目は、ポタリングで地域を巡り、里山の魅力に触れながら、提供コンテンツの可能性を検討。

3回目を実施した昨年は、地元事業者とともに『木のまち鹿沼』をテーマにしたツアー化を検証。スノーピークのユーザーの皆さんに参加いただき、さまざまな角度から鹿沼の魅力に触れていただきました。

この検証の結果を商品や体験の開発に活かすだけでなく、モニタリングキャンプを通じて地元の事業者さんたちとの関係性も年々深まっています。

参加されたユーザーさんがいち早く鹿沼のファンになってくれ、自ら魅力を発信してくださることも。担当者としては、本当にうれしいです」

◇スノーピークらしい地方創生を

完成イメージ図。新鹿沼駅(東武鉄道日光線)からもアクセス良好。車を持たない首都圏に暮らす人も気軽にキャンプ体験ができる。

岡本:
「鹿沼ではいよいよ今年、施設の建設工事が始まります。

もともとの地形を生かした91サイトのキャンプフィールドに、ストアや温泉、レストラン、多目的広場、さらに地域の特産品をつくる食品加工場などもある、市外から訪れる方々にも市民の方々にも楽しんでいただける施設になる予定です。

裏山での森林体験なども企画できたらと考えていて、ユーザーの皆さんには、キャンプフィールドとしても地域としても『鹿沼っていいよね』と、この地の素晴らしさを感じてもらえるような場所にしたいですね」

高い木工技術を象徴する「鹿沼組子」。職人の方々とともに限定商品の開発にも挑んでいる。

「開業したから終わりではなく、開業後も皆さんと一緒に作り上げていき、10年、20年先に『あのとき、スノーピークが来てくれてよかった』と地域の方々にも言っていただけるような施設を目指しています。

私たちが携わる拠点開発は、どの地域でも、その土地の自然や文化にキャンパーとして惚れ込み、その魅力を伝えるべく開発に取り組んでいます。

スノーピークを通して地域を知って、好きになって、周りに伝えたくなる――。私たちが拠点開発を全国で進めることで、そんな連鎖を生み出し、各地域をはじめ日本全体にいい効果をもたらせたら…。それが、私たちらしい地方創生だと思います」

鹿沼市は、県内有数のそばの生産・消費地。春・夏にはそばの花があちこちで見られる。

Epilogue

スノーピークのキャンプフィールドは、自治体や地元住民の皆さんやユーザーの皆さんも巻き込みながら、キャンパーならではの価値観を活かして開発されます。

そして現在、スノーピークでは「47CFプロジェクト」を全国各地で進めています。自然と人、人と人がつながるキャンプを体験できるプラットフォームを、47都道府県につくろうという取り組みです。

鹿沼市を含めた新たなキャンプフィールドの誕生を、これからもどうぞお楽しみに。