東京サイコデミック ~公安調査庁特別事象科学情報分析室 特殊捜査事件簿~
『東京サイコデミック ~公安調査庁特別事象科学情報分析室 特殊捜査事件簿~』のレビュー行くぜ!俺がプレイしたのはPS5版ね。
パブリッシャー:グラビティゲームアライズ
機種:PS5/PS4/Switch/PC
ジャンル:2D×シネマティック・リアル科学捜査シミュレーションゲーム
発売日:2024/5/30
価格:5940円
科学調査で様々な不可思議事件に立ち向かうアドベンチャーゲームだ。2Dで表現されたキャラクターたちの視点で、実写素材の証拠品を調べて真相に迫っていく。
『東京魔人學園外法帖』などを手掛けた今井秋芳 氏が脚本・監督を務めているぞ。
完全新作で実写と2Dを融合させたアドベンチャーゲーム!ということで期待したんだが、そもそも完全新作ではなく続編で、しかもゲームとしてデキが悪い散々な作りだったぜ……。キャラデザと素材の凝り方とBGMくらいしか褒めるところ無かった!
起動すると「この世界で起こるすべての事件は科学的、物理的解析で立証可能であり、それらをどう捉えるかはあなた次第です」という注意書きが表示され、プレイヤーをゲームの世界観に引き込んでくる。こういう演出は好きなんだが、クリアしてから見ると何言ってんだコイツってなるな……。そんな内容じゃなかったろ!
舞台となっているのは未知のウイルスによるパンデミックが発生した現代日本だ。
分かりやすくコロナ禍をモデルにしているが、本作ではウイルスが致死率40%という強さで、内閣総理大臣と官房長官、厚生労働大臣など主要官僚が相次いで感染して死亡。20万人の死者を出した後に、新たな総理大臣の打ち出した政策で収束したという設定だ。政府とカルト教団の癒着もシナリオに絡んでくる。
とある探偵事務所の一員である主人公=プレイヤーは、助手である秋葉巴杏と共に未解決事件を追っている。目的は解体されたカルト教団の教祖と、それに関連した「異能力者」たちを探すことだ。横流ししてもらった警察の資料を基に、人知を超えた未解決事件を調査。その事件に「異能力者」が関わっているかどうかを見極めていく。
人体発火、ファフロツキーズ、神隠しなどなど。この事件は科学的に解決できる事件なのか、それとも人知を超えた異能力によるものなのか……?真相を明らかにせよ!
基本的に秘密のアジトに籠ってひたすら科学調査を進めていくゲーム。電脳安楽椅子探偵だ。
資料を洗って手に入った証拠でエビデンスボードを埋めていき、最後に重要な疑問点をまとめて推理するパートが始まってエピソード終了。これを繰り返す構成。
本作の特徴は何と言っても実写素材を使ったこの調査パート。
監視カメラの映像などを巻き戻しやコマ送りで細かくチェックし、AIによる顔スキャンで被害者の足取りを追ったり、不審な行動が無いかを調べていく。
テレビドラマの科学調査を自分の手でやっている気分で、大勢の人が行き交う街並みや、事件と関係ないところでやり取りをしているモブなど。実写素材だからこその臨場感がある。
研究所で撮影された資料映像などを調べ、推理が実現可能かどうかを検証する場面などもあり、それっぽさ高まる!
事件現場もしっかり実写なのが凝ってる点。これは人体発火事件で足を残して焼け落ちた被害者の写真だが、この生々しさはイラストや3Dじゃ出せない質感だね。
しかし、ワクワクするのは最初だけで、監視カメラの映像を洗う地味な作業を延々続けるゲームなので早い段階でダレてくる。アップデートでかなり快適になったらしいが、それでも映像や調査モードの切り替えが煩雑でテンポ悪い。証拠映像がドサッと出てくるとゲンナリしてくる。
何枚もある書類をページ送りしてズームして証拠になる記述を見つける作業とか、面白いかこれ!?
専門知識のある仲間たちに相談して意見を聞く構成になってるが、ダークウェブに繋いで仲間のスーパーハッカーに情報を投げると、監視カメラや警察や病院のシステムにハッキングして即情報を送ってくるとか、もう全部コイツだけで良いんじゃないかな。
推理ゲームとしては調べないといけない証拠がやたら多く、その割に相棒によるガイドがチュートリアル並みに細かいからあまり悩むところが無い。
恐らく、ヒントが少ないと難易度が上がり過ぎるから親切にしたんだろうが、その結果、推理モノで描写しても面白くないから普通は省くところはしっかりプレイヤーにやらせて、でも推理モノ的なカタルシスや推理する面白さはないっていう、全然ダメなゲームになってないか……?
科学調査の種類と実写素材の多さをまとめきれてない!
シナリオも登場人物の掘り下げが無さ過ぎて、プレイヤー置いてけぼりで盛り上がってる展開ばかり。仲間のことが全然分からないし、主人公も自己主張しなさ過ぎてどういう奴か全然分からない。
事件自体も「それ警察が調査するとこじゃないの?」「そんなの普通に目撃者いるだろ」「結局これはただの偶然だったの?」と、突っ込み所が多い。
というか、超常現象としか思えない未解決事件を調べる!って話だけど、それっぽいのは1話の「人体自然発火事件」と、いきなり街にバラバラ死体が降ってきた2話の「東京ファブロッキーズ事件」だけ。後は普通に人為的な事件じゃね?ってのばかり。
普通に犯人がいる誘拐事件で唐突に神隠しとか言い出す場面があるし、4話とか強引過ぎてほとんどギャグのレベルだったぞ。
そしてたどり着いた最終話が輪をかけて酷い。
やりたいことは分かるが、そのひっくり返し方は興ざめな展開に、面倒臭くて強引で理不尽なだけでシナリオ的な盛り上がりがまるでない最後の謎解き。そして時事ネタをシナリオに活かすつもりでやってるなら、ちょっと品性を疑うぞ……?と言いたくなる大オチ。遊べば遊ぶほどにガン萎えしていくゲームだった。
更に本作、公式サイトには一切書かれていないが、完全新作ではなく2023年にサービス終了した『貞子M』の続編だ。
登場キャラも世界観もすべて引き継いでいるステルス続編!本編開始前の事件の話がやたら多いわけだよ!でも権利関係で貞子も呪いのビデオも一切登場しません!
別にこれ自体が悪いわけではなく、本編開始前に物語がある作品や、仲間との人間関係が完成したところから始まる作品はいくらでもある。推理ゲームなら『探偵神宮寺三郎』とかね。
しかし本作の場合
「前作で取り逃がしたカルト教団のボスを今度こそ倒すぞ!前作で集まった仲間たち、よろしくな!待っていてくれ……前作で導いてくれたけど今は冤罪で逮捕されてる所長!」
というノリで完全に地続きだからマジで訳が分からん!
キャラの掘り下げや回想シーンがあれば良いけど全然なく、断片的にそれっぽいセリフが差し込まれるだけ。製作側が抱えてるサービス終了したゲームへの未練に、断り無しで巻き込まれた気持ち。
貞子から逃げて。でないと――新作「貞子M」の謎解きホラー脱出アクションを例の女性と体験
『貞子M』を調べたらガチャから出たヤタガラスやアマビエを護符として装備し、追ってくる貞子や怪異から逃げる内容で、これと世界観が地続きなのに何が「公安調査庁特別事象科学情報分析室 特殊捜査事件簿」だよ!
クリアまで10時間掛からないくらい。
映像や音響、画像解析などで多彩な科学調査パートや実写素材の凝り方、エピソード終了時に毎回EDが入るドラマ的な演出に、BGMなどは評価できる。
しかし、基本的には公式の「2D×シネマティック・リアル科学捜査シミュレーションゲーム」が聞いて呆れるクオリティの低さとリアリティの低さで、このゲーム自体をサイコキネシスで爆破したくなったわ!
続編であることを伏せて発売し、それをフォローするような作りにもなってない。そして仮に面白いゲームでも、最後に予告なくこれをやられたら印象が悪くなる終わり方をする。「これを発売したメーカーのことは信用できない」という気持ちにさせられた。
俺はあんまり面白くないゲームでも続編が出たら改善に期待して買っちゃうタイプなんだけど、これは仮に続編が出ても、余程のことが無いと買わないと思います……!