攻略本も買ってPS4版でトロコンしたので『鬼ノ哭ク邦』のレビュー行くぞ……。
メーカー:スクウェア・エニックス
機種:PS4/Switch/PC
ジャンル:アクションRPG
発売日:2019/08/22
価格(税抜):5800円
完全新作のRPGを作るために設立されたスクエニの子会社。
「Tokyo RPG Factory」によるアクションRPGだ。
『いけにえと雪のセツナ』『ロストスフィア』に続く3作目となる。
世界観やストーリーはそれぞれ独立していて繋がりは無いぞ。
□PS4/VITA/Switch/Steam「いけにえと雪のセツナ」レビュー!雪とピアノでプレイヤーを殴り倒す王道RPG! - 絶対SIMPLE主義
□PS4/Switch「ロストスフィア」レビュー!粗の多さで制作スタッフの底が見えてしまった悲しきシリーズ2作目! - 絶対SIMPLE主義
完全新作のRPGを作る!突っ込みどころはあるが素晴らしい!応援するぞ!
という感じで過去作はどちらもコンプしたが、2作目の『ロストスフィア』が、
「2作目でこれならもうこのメーカー期待できないのでは…?」という内容だった。
なので、3作目かつ何故かジャンルを
RPGからアクションRPGに切り替えた本作に関しても、
とりあえず応援すると決めたので最後まで付き合うぞ!
「Tokyo RPG Factory」の滅亡を見届けるんだ!
という心境で購入したんだが、まあ実際そんな感じの内容でしたね……。
舞台は輪廻転生の考えが文化の基盤にある世界。
来世の存在が強く信じられており、
人々は死後に生まれ変わることを前提として今を懸命に生きているし、
死んだ人間が未練なく来世に行けるように、
残された人間は決して悲しんではいけないと教えられる。
しかし、人の心はそう簡単に割り切れるものではなく、
どうしても未練というものは生まれてしまう……。
この世に未練を残した死者の魂は輪廻転生が出来ずに彷徨い、
そのままにしておくと自我を失い魔物へと堕ちる。
そのために存在する職業が 「逝ク人守り」。
彷徨う死者の魂と接触し、その未練を断ち切って来世へと送り出すのだ。
主人公であるカガチもその1人だが、
死者の未練を断ち切るために、生者の命をその手にかけることも厭わない性格。
そして謎の少女との出会いから始まる運命の旅。
彼の進む道に待っているの果たして何か?!
というストーリーになっている。
こういう世界観や設定はなかなか面白そうなんだけどね……。
今回は街が一つだけ。
ワールドマップからダンジョンを選んでそこに出撃していく構成となった。
街が沢山あってフィールドを直接歩いて移動する形式だった過去2作に比べると、
かなり小規模な構成ね。
見下ろし視点のアクションRPGで、最初から最後まで主人公1人で戦う構成だ。
ダンジョンで敵を倒しながら目的地を目指して進んでいく。
セットした必殺技を使用したり、
敵との戦いで溜まったゲージを消費することで一時的にパワーアップしたりが可能。
ダンジョン内に複数あるセーブポイントに接触すれば全回復するし、
一度触ればそこにワープも可能なのでサクサク進むぜ。
カガチは「鬼ビ人」と呼ばれる仲間キャラクターを自分に憑依して戦う。
憑依させた「鬼ビ人」によって使える武器や技が変化するし、
回避アクションもガード、ジャンプ、ダッシュなどそれぞれ異なる。
敵との戦いで溜まる「鬼魂」を消費して新しいスキルを覚えさせることも可能だ。
まあ、つまり「鬼ビ人」が武器と技を使うための「ジョブ」ってわけね。
剣に槍、格闘に銃、大鎌などなど。「鬼ビ人」によって武器も性能も異なる。
4人までセット可能で、戦闘中に右スティックでチェンジすることも可能だ。
キャラの動きがかなりもっさりしているのだが、
スキルを解放していけば行動のスキをキャンセルできるようになっていくので、
少しずつ動きが良くなっていくぜ。
最初は必殺技が1つしかないのでどうしてもチマチマした戦いになる点も、
とりあえず必殺技を4つセットできるようになるまで育成すれば問題ない。
一発撃ったら一定時間経過しないと再使用出来ない必殺技だが、
「必殺技→他の必殺技→他の必殺技→他の必殺技」と繋げていけば、
ほとんど切れ目なくバンバン攻撃出来るのである。
育成していけば敵をなぎ倒していく爽快感がそれなりに出てくる作りだ。
……とはいえ、どうしても同じ必殺技を連発するような立ち回りになってしまうし、
ステージ構成も一本調子で、ザコ戦は突進攻撃がやたら痛い敵が、
ボス戦は初見殺しや見辛く避け辛い攻撃ばかり印象に残る。
10人以上いる「鬼ビ人」は全員スキルを一切覚えてない初期状態で加入するので、
新しい奴が加入してもガッツリ育成しないと使い物にならない。
使う「鬼ビ人」を1人に絞った方がよほど効率よく進むし、
無理に色んなキャラを試そうとすると、
育成が追いつかなくて敵の攻撃で大ダメージを受けるようになり、
難易度が一気に跳ね上がるバランスだ。
つまり「最大4人の鬼ビ人をセットして戦闘中にチェンジできる」
というゲームシステムがまったく機能していない……。
装備アイテムは武器1種類だけ。
新しい武器を拾うと既存の武器もそれと同じ攻撃力になるまで
簡単に鍛えられるようになる上に、
武器毎の個性が薄いため、武器を集める楽しさがほとんどない。
武器に空いた穴に「影石」をセットさせることで、
様々な効果を付けられる要素もあるんだが、
穴の数がMAXで4つしかないので、
攻撃力重視の武器にするか、稼ぎ用の武器にするかの2択。
こんな内容なのに武器も影石も無駄に種類だけは多いんだよな……。
武器を簡単に育成できるようにして、
その分色んな武器を使いやすくするというのなら分かるんだが、
結局「鬼ビ人」の方をガッツリ育成しないと色んな武器は使えないし、
ゲームのボリュームと「鬼ビ人」の育成速度が釣り合っていないので、
普通にプレイすると「鬼ビ人」は全然育ちきらない。
中途半端なゲームバランスだ……。
同じ必殺技を使い続けると低確率で「覚醒」が発動し、
一度これが発動するとその効果を必殺技にくっ付けて強化できるようになってるんだが
これも実用からほど遠いレベルで低確率なので使い物にならない。
「覚醒率アップ」のスキルや影石を活用しまくっても全然覚醒しない。
覚醒に関連したトロフィーもあるんだけど地獄のように覚醒しない。
それもそのはず……。
「ダメージを受けた時に覚醒しやすい」「ボス戦で覚醒しやすい」
「一度覚醒するとしばらく覚醒しない」という条件があるので、
連続攻撃で大ダメージを喰らいやすく、
マメに回復したくなるこのゲームだと必然的に覚醒し辛くなるのだ。
何が酷いってこの情報、
ゲーム中に説明が無くて定価2000円の攻略本にしか書いてないんですよ!正気か?
そのせいで攻略サイト見ても「とにかく根気!」みたいなことしか書いてない。
PS4版でトロフィー狙う人がいたら注意してくれ!
他にも、ボタン1つで生者の世界と死者の世界を行き来できるシステムがあるが、
移動してもマップの作りはまったく同じ。
「どちらか片方でしか会話出来ないキャラがいる」
「どちらか片方にしか扉を開けるスイッチが無い」
みたいな使い方で無理矢理感が強い。
死者の世界に移動するとカガチとモンスター共通で
「接近するほどダメージアップ」「状態異常だと大ダメージ」
「吹っ飛びやすくなる」といったマップ毎に異なる特殊な効果が付くんだが、
これも普通に遊んでいるとほとんど意識する必要はない。
土屋 俊輔とマリアム・アボンナサーが担当しているBGMも良曲は多いんだが、
ゲーム中はほとんどBGM無しで進行する場面が多いので淡々としてる……。
とにかく詰めの甘いゲーム内容だわ!
ストーリーの方もさっぱりで、描写があまりにも薄いので全然盛り上がらない。
ロクに出番がなくてよく知らないキャラが大変なことに!
さっき出て来たばかりのキャラが大変なことに!の連発で、
遊んでいて物凄い勢いで置いてけぼりにされる。
中盤くらいで「おっ、あのキャラが再登場か!」と思ったら、
ちょっと顔出しただけで出番終わったり、
チラ見せした後に家に帰るようなキャラがあまりにも多すぎる。
「輪廻転生の理が根底にある邦」という部分もまったく描けていない。
来世が信じられてるから安楽死が制度化されているとか、
そういう小手先の描き方だけで、文化や民衆の描写があまりに薄い。
カガチ=プレイヤーの手で、
ショッキングなことをしなければならないシーンもあるんだが、
「そもそもなんでこんな急展開になってんの…?」
って気持ちの方が強くてまったく入り込めなかった。
あえて語らずプレイヤーの想像に任せてるつもりかもしれないが、
これはただ薄っぺらなだけだよ!
設定や物語の構図など、ちゃんと描写すれば面白そうではあったんだけどなぁ。
10人以上いる『鬼ビ人』は仲間キャラかと思いきや、
戦闘中にちょっと喋るくらいでメインストーリーには一切絡まない。
加入方法も、新しいダンジョンに行くとそこら辺に突っ立っており、
話しかけると無言で仲間になるというヤツが大半だ。
一応、スキルを解放していくと「鬼ビ人」たちの過去話を聞くことができるが、
キラキラした空間で棒立ちのキャラを見ながら独白をただ聞くだけ。
過去話も「悲しい話ですね」で終わって特にコメントのしようがないものばかりだ。
こんなんで思い入れが生まれるかよ!
ただ、槍キャラであるザーフのエピソードだけは良かった。
本編のあるシーンに登場する名も無きキャラクターが実はザーフだったという作りで
最後まで話を聞くと、今主人公と一緒に戦っているのも縁だな……と納得できる。
こういうのがあと10倍くらいあれば大分印象変わったんだが。
街やダンジョンには本筋と関係ないサブクエストが色々とあるんだが、
いかにも魅力的なサブクエを作れそうな世界設定にも関わらず、やる気の無さが凄い。
「〇〇に会いたい」「〇〇を見たい」とか言われるので、
そこまで連れていくと勝手に納得して成仏するとか、
「攻撃力〇〇以上の武器が見たい!」とか言われるので見せると成仏とか、
そんなのばかりでまったく面白くない。軽い未練多いな……。
これはまだ凝っている方で、酷いのになると話しかけた瞬間に
魔物(そこら辺のザコと同じ)に変身して襲い掛かって来て、
倒したらサブクエスト完了!みたいなのが複数ある。
「さすがにこれはサブクエストではないだろ?」と思ったら、
ちゃんとリストに掲載されて目を疑いましたね……。
『ロストスフィア』も、
消滅した人間を元に戻すには対象への強い記憶が必要という設定がありつつ、
シナリオにまるで活かせていなかったんだが、あれから何も成長していない……。
クリア後に「輪廻の聖域」という101階の隠しダンジョンが出現するが、
本編の使いまわしの敵と地形で構成されたマップを進むだけという虚無仕様。
しかもザコ敵をある程度倒さないと次の階に進むゲートが出現しないという、
もはや嫌がらせのような構成である。
敵は強くなっていくし、5階毎にセーブポイントがあるのが救い。
10時間くらいかけて101階まで行くと、やっとここだけの隠しボスが登場するが、
特別なイベントがあるわけでもないし、倒しても特に隠しエンディングとかは無いぞ!
無言で倒して無言で終了!これには俺も無言になりました!
クリアまで20時間ほど。PS4版でトロコンまで遊べば40時間くらいかな。
前作の『ロストスフィア』で、
「このスタッフ、RPGを作る実力が不足しているのでは……?」という印象だったが、
そこから何故かジャンルをアクションRPGに変更し、
『クロノトリガー』の戦闘システムをベースにした「ATB2.0」を捨てた結果、
「本当に実力がなかったんだ!」という納得と事実だけが残ってしまった。
『ロストスフィア』の方がよほど面白かったぞ。
メインビジュアルやキャラ絵は文句無しに美しいし、
ちゃんとカメラをアップにしてキャラの顔を画面に映すなど演出も進化している。
キャラを成長させていく楽しさが無いわけじゃないし、
ボスの動きなどはそれなりに凝っていて、攻撃パターンを見切る楽しさも少しはある。
隠しダンジョンなどを除けば、苦痛な要素や理不尽な要素は無いため、
普通に進めることができるゲームにはなっているんだが、
それにしたってこの完成度の低さはあまりにも酷い。
3作付き合った結果がこれとはな!
長いようで短い付き合いだった……。
俺の涙と共にさらば!「Tokyo RPG Factory」!