東北の天然素材を使ったアロマオイルやディフューザーなどを販売している株式会社greedy(グリーディー)。新商品を開発するにあたり、仙台市中小企業応援窓口の支援を活用しました。商品のアイディアをかたちにするまでの間、greedyさんは何度も「スパイシーチャンス」に遭遇したと言います。「スパイシーチャンス」とは一体何でしょう?代表取締役の浜出理加さんにお話を伺いました。
オーエン活用のポイント
- 新商品開発のチーム支援やアドバイス
- 補助金・助成金の紹介や、申請資料の書き方をアドバイス
- ギフトショーの出店をサポート
01 どんな事業を行っているか教えてください。
アロマオイル、ハーブの製造販売や、「香り」を用いた企業ブランディングのお手伝いをしています。
2010年ごろまで株式会社ピーチ・ジョンでマーケティングを担当していたのですが、そのころから「香りは、企業ブランディングやお客さまの行動に影響を与えるモノだな」と思っていて。商品をお客さまに配送するとき、段ボール箱にほんのり香りをつける、ということを企画したりしていました。会社を辞めたとき、それまで趣味だった「香り」を仕事にしたいと思い、手作りせっけんの香りをプロデュースしたり、新しくできるホテルのアロマ計画を設計したりするようになりました。
株式会社化したのは2017年。石巻の工房で、東北の素材を使ったアロマオイルやスプレー、ディフューザーなどを製造し、販売しています。コンセプトは、「香り」を通して東北の魅力を知ってもらうことです。例えば、当社のバラのスプレーは、石巻市雄勝町の「雄勝ローズファクトリーガーデン」のバラを使っています。震災後、家がなくなって寂しくなった地域に憩いの場を創りたいと、住民たちが立ち上げたすてきなガーデンなのですが、場所柄なかなか知られていなくて。「greedyの商品を通して、雄勝ローズファクトリーガーデンを知りました!」という声を聞くと、やっていてよかったと思います。
株式会社greedy 代表の浜出理加さんにお話を伺いました
02 仙台市中小企業応援窓口では、どんな支援を受けていますか?
「Made in TOHOKUの無添加ドッグケアDear Gree」というペット向けのアロマグッズを東京のギフトショーに出したくて、そのサポートをしていただいたのが最初です。その後、2019年に仙台市産業振興事業団の「新東北みやげコンテスト」に雄勝ローズファクトリーガーデンのバラを使った商品を出品し、入賞をいただきました。
このコンテストに入賞すると、百貨店などのバイヤーさんと直接商談することができるのですが、その時いただいたアドバイスはすごく役にたちました。例えば、「パッケージの表にもっと分かりやすく『東北・雄勝・ハーブ』というワードを入れたほうがいい。このままだとコンセプトがお客さまに伝わりにくい」という意見。確かにそうだと思い、それまで使っていたパッケージをすぐにあたらしいものにリニューアルしました。パッケージは、どうしても自分たちが好きなデザインにしてしまいがちなので、客観的な意見は貴重なんです。
雄勝ローズファクトリーガーデンのバラを使った商品「aroma journey」
03 greedyさんは、2021年に「新商品/新サービス開発支援」に参加なさいました。これは、中小企業応援窓口の中小企業診断士やデザイナーなどの専門家がチームを組んで新商品開発を支援する枠組みです。
実際に支援を受けてみていかがでしたか?
打ち合わせに参加するたびに「痛いところを突かれたな…」と反省して帰ってきます(笑)。greedyの社員は、全員女性です。感性も近い人が集まっているので、これはいい!と思ったら突っ走ってしまう傾向にあるんです。女子的なノリでこんなのほしい、これは良さそうと盛り上がってしまうので、どうしても現実的な視点が抜けてしまうんですよね。きちんとした土台をつくるためには、客観的な意見はすごく大事です。自分たちの足りないところを指摘されるのはちょっとキツイことではありますが、私たちはそれを「スパイシーチャンス」と呼んでいます。イタイことを指摘されたら、商品がもっと良くなるチャンスだからです。「今回の打ち合わせのスパイシーチャンスは?」なんて、社内で話しています。
辛口アドバイスは、商品が良くなるチャンス
若いスタッフにとっても、「スパイシーチャンス」はすごく勉強になるようです。何か指摘があると社内でものすごくたくさんミーティングしますし、次回の打ち合わせのために、何度も何度もシミュレーションするようになりました。中小企業応援窓口の先生方は、こっちが決めたことに決してNOとは言いません。ただ、ロジックが足りないことを指摘してくれるんです。だから、「ここはこういうふうに言われそうだけど、このデータを示せば…」とか「このストーリーをもっとふくらませば…」とか、どうすれば説得できるか一生懸命考えています。
この作業が、結局、私たちが商品をどう売っていくかということのベースになるんですよね。「新商品/新サービス開発支援」を経て販売にこぎつけた「AKIU Styleナチュラルリードディフューザー(Middle Body)」も、先生からアドバイスいただいたおかげで高価格帯にチャレンジする決心がつきましたし、もっと素材にこだわろう、もっと付加価値をつけよう、と考えることができるようになりました。
相談を経て完成した「AKIU Styleナチュラルリードディフューザー(Middle Body)」
(画像はWebサイト「暮らす仙台」から転載)
04 今後、中小企業応援窓口をどのように利用していきたいか教えてください。
2022年には、仙台市のチャレンジ補助金の事業者に採択していただき、リアル店舗をつくることができました。補助金に応募するときも応援窓口にお世話になったのですが、なるほど、こう書けば私たちのやりたいことが伝わるのか、と驚くことがたくさんありました。
補助金や助成金は使わないほうがいいという考え方の人もいますが、私は実際に使ってみて、これはいいシステムだなと思いました。補助金の資料をつくることで、自分たちが進むべき方向を明確化できますし、締め切りがあるので、自分のおしりを叩くこともできます。支援も補助金も、まずは気軽に使ってみたらいいと思います。皆さんも「スパイシーチャンス」をモノにして、ぜひ自分の成長につなげてください。
仙台市のチャレンジ補助金を活用してつくった店舗兼ショールーム
マーケティングプロデューサー
大志田 典明
支援担当者から支援制度のご案内
社内のアイディアはとても大切です。これをビジネス化するためには、発想=ひらめきから、着想=おとしこみへの転換が必要になります。感覚的なビジネスアイディアに、ヒト・モノ・カネを組み込んで文字・数字的なビジネスプランにすることです。これによって、自分だけでなくスタッフも・取引先も、同じ言語と数字の共有によって具体的に検討・検証できるからです。
その際、最も重要なのが「誰が買って・使うのか=ターゲット」の確定です。グリーディーさんのように最初は“ふんわり”したイメージでも、ステップを踏みながらビジネスモデル化をサポートしますので、まずはセカンドオピニオンとしてご相談ください。
インタビュー・ライティング/沼田 佐和子
撮影/渡邉 樹恵子
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