ライター山口絵美菜
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。
ライター: 山口絵美菜 更新: 2019年09月24日
毎月初級の方向けに女流棋戦を解説するこのコーナー、今回は7月20日に行われたマイナビ女子オープン一斉予選より、村田智穂女流二段VS谷口由紀女流二段戦をご紹介します!
まずは第1図をご覧ください。先手の谷口女流二段が三間飛車に構え、村田女流二段が居飛車・左美濃で応戦しています。ここから▲7四歩△同歩▲同飛に△6三金と上がったのが注目ポイント。「玉の囲いは金銀3枚」というように、金は守りに働くことが多いもの。ですが本局では右辺に対応させ、陣形全体でバランスを取る方針です。
【第1図は△1四歩まで】
数手進んで第2図。後手は次に△3二金と上がれば銀冠のような形で陣形が安定します。将棋では、指し手を考えるときに「相手のしたいことをさせない」ということがポイント。そして「相手が最善形になる一手前に仕掛ける」のも大事な考え方です。実戦は後手陣が不安定なこの一瞬を突き、▲6五歩と角道を通して開戦しました。
【第2図は△2三銀まで】
さらに数手後の第3図。後手は一手の余裕ができれば△3二金と安定させたいところ。「そうはさせない!」と先手は攻めの継続手を放ちました。どこに手を付けますか?
村田女流二段(第13期マイナビ女子オープン予選)撮影:常盤秀樹
【第3図は△6四同銀まで】
実戦は▲7二歩と手裏剣を放ちました。次に▲7一歩成とと金を作られてはたまりません。以下△7二同飛と払いましたが、▲6一角と畳みかけます。飛車がどこに逃げても、次の角成は受かりません。
戻って第3図では▲6五歩と銀にアプローチする手が思い浮かんだ方もいるのではないでしょうか。△6五同銀と取ってくれれば▲5五角と打って教科書に出てくるような王手飛車が決まります。しかし現実はそううまくはいきません。▲6五歩に△7三銀とじっと引かれたり、場合によっては△5五銀~4四銀と自陣に引き付けられたりという順も考えられます。先手はあまり歩を豊富に持っているわけではないので、慎重に有効に使っていきたいところです。
先手が馬を作って第4図。ここで皆さんにぜひ覚えていただきたい手筋があります。後手の気持ちになって考えてみてください。
実戦は△9四角と打ちました。6七の銀取りかつ8三の馬取りで、先手は▲同馬と取るよりありません。こういった「馬に角を合わせて馬を消す」という手筋はいろいろな形でよく出てくるので、ぜひ実戦でも応用してみてください。
【第4図は▲8三角成まで】
谷口女流二段(第13期マイナビ女子オープン予選)撮影:常盤秀樹
局面は進み、第5図は先手が優位に立っています。飛車が歩の裏側に入り込んでいるのが大きく、△1三歩と受けることができません。先手からは▲1一銀や▲3四桂などいろいろな手段があるというのもポイント。複数の狙いを持った「一石二鳥」の手を指すのがリードを握る鍵です。実戦は△3四歩と打って▲3四桂を阻止しましたが、後手は歩切れに。それをみて先手は▲1五香と走りました。後手は歩切れのため△1三歩と受けられず、先手は1筋を見事突破。右辺に逃げだしての攻防戦が続きましたが、第6図までの投了となりました。
【第5図は▲1四同飛まで】
【投了図は▲6三銀まで】
ライター山口絵美菜