観戦記者はどんな1日を過ごしているの?知られざる観戦記者の1日を山口絵美菜女流1級がご紹介!|将棋コラム|日本将棋連盟
観戦記者はどんな1日を過ごしているの?知られざる観戦記者の1日を山口絵美菜女流1級がご紹介!

観戦記者はどんな1日を過ごしているの?知られざる観戦記者の1日を山口絵美菜女流1級がご紹介!

ライター: 山口絵美菜  更新: 2019年01月31日

「観戦記」シリーズ第二弾!第一弾ではその読み方や楽しみ方についてお話ししましたが、それから観戦記を読む機会はありましたか?私はアマチュア時代、小学生の頃に毎夜新聞の将棋欄をクリッピングして、一局分揃ったら棋譜を並べていました。いろんな楽しみ方がありますね。今回はその「観戦記」を書いている「観戦記者の1日」についてご紹介したいと思います!

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撮影:飛龍

「観戦記者」は各棋戦を主催する主催社の記者(主に新聞社の)の方や、依頼を受けたフリーランスの記者、棋士、女流棋士が務めます。私は毎日新聞の観戦記者として、順位戦を担当しています。棋戦によって観戦記者のスケジュールは様々。そこで今回はA級順位戦の観戦記者の1日について、私の場合を例に書いてみます。

〈午前中のスケジュール〉
9時前:会館の最寄駅に到着
9時半:対局室入室
10時:対局開始
11時前:退室

これが午前の流れです。対局開始時にはその場にいる必要があるので、電車で遅れたりしないように早めに移動します。また、対局者が入室するより前に対局室に入るようにしています。対局室には記録係の横に「観戦記者席」があるのですが、順位戦の場合、毎日新聞、朝日新聞の2社が共催していますので、対局によっては「観戦記者席」が2つ設けられることがあります。これにも「上座」「下座」があり、記者歴等を鑑みて席に着きます。ちなみに対局室には「対局者用」「観戦記者用」「記録係用」でそれぞれ座布団が分かれており、厚みなどが違っているというのは豆知識です。

対局開始してからいつ退室するかは記者それぞれ異なるところで、「お互い一手ずつ指したら」「手が止まったら」「戦型が決まったら」と、独自のタイミングで部屋から出る方が多いそうです。

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撮影:八雲

〈午後のスケジュール〉
17時頃:将棋会館に戻り検討
18時〜18時40分:夕食休憩
19〜21時:検討、時々対局室に入る
24時前後:終局〜感想戦
1時〜2時頃:終了

A級順位戦は深夜に観戦記者の本番がやってきます。それは感想戦です。もちろん対局室にいるときや控室での検討も細かくメモを取りますが、感想戦は直接対局者の読みを聞くことができる貴重な時間です。その時間に体力が残っているように、読みの早さについていけるように、昼間は体力を温存して過ごします。対局室にいない間も控室で検討をしたり、指し手を確認したりし、夕食休憩後は時折対局室で観戦。対局室と控室を行き来します。最終盤の一歩手前に入室してからは終局まで盤側で観戦し、その後の感想戦までしっかりと聞いて、1日が終わります。

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撮影:夏芽

そこから締め切りに向けての執筆が始まるわけですが、これはまた次の機会があればお話ししたいと思います。観戦記者の1日はいかがでしたか?「観戦記」は記者による密着取材のようなもの。観戦記者によっても目の付け所や書き味が違うというのも醍醐味です。ぜひ色々な観戦記を読んでみてくださいね!

観戦記の魅力

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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