令和4年度の賃貸不動産経営管理士試験は、出題形式面では、個数問題(※1)、及び組合せ問題(※2)
の出題数が大幅に増加したため、令和3年度と比べて非常に解きにくかったと考えられます。特に、個
数問題出題数の「13問」は、本試験史上最も多い数であり、難度上昇の要因の1つになると考えられます。
一方、内容面では、各編(項目)の問題順は概ね令和3年度と同様であったものの、令和3年度から試験範
囲となった新法(賃貸住宅管理業法)に関する内容が令和4年度はさらに多く出題され、細かい知識を問
うものも散見されました。
新法への対応が合否の鍵を握る試験であることがより鮮明となったと言えます。
賃貸住宅管理業法に関しては過去問の数がまだ少ないため、今後も新法への対応力を身につけることが重要であると考えられます。
その他、令和2年度の改正民法(請負、時効、保証等)や宅建業者による人の死の告知に関するガイドラインといった、近時の法改正点等も多く出題されており、例年通り、新規出題に対する対応力も問われる内容となりました。
以上から、過去頻出項目からの出題を確実に正解した上で、新法や新規出題への対応力をどれだけ身につけていたかが重要であったと言えます。
<第1編:賃貸管理総論>
賃貸住宅管理に関する国の政策等について1問出題されました。国の政策に関して、基本的なコンセ
プトや理念を確実に押さえておく必要がありました。
<第2編:賃貸住宅管理業法>
前述のとおり、非常に多くの出題がありました。「賃貸住宅管理業者の登録制度」や「特定賃貸借契約の適正化のための措置等」等から満遍なく問われて、また、ところどころこれまでに出題のない選択肢が見られました。そのため、苦戦した受験生も多かったのではないかと考えられます。今後も、管理業法の習得が合格のためには必須であると考えられます。
<第3編:管理受託契約>
請負について1問出題されました。令和2年度の改正民法の内容が問われており、このあたりまで手が回らなかった受験生にとっては、解答が難しかったと考えられます。
<第4編:賃貸借契約>
令和3年度と同様に5問出題されました。定番の「定期建物賃貸借契約」は令和4年度も問われており、こう
いった問題を確実に正解できたかが重要と言えます。
<第5編:金銭の管理>
令和3年度から1問増加し、4問出題されました。金銭の分別管理に関して、テキストに新掲された「会計の基礎」から新規で出題されており、今後も会計に関して一定数の問題が出題されると考えられます。
<第6編:賃貸住宅の維持保全>
令和4年度も、令和3年度と同様に、維持保全、建物、設備といった様々な分野から多く出題されました。こ
れまでの本試験では個数問題が少ない分野でしたが、令和4年度は個数問題が多数出題され
ており、その点で出題傾向に変化があったと言えます。
<第7編:管理業務の実施に関する事項>
毎年、必ず出題される「原状回復ガイドライン」からの2問を含む8問が出題され、そのうち4問
は5問免除の問題となりました。「原状回復ガイドライン」は、例年と比べて細かい点が問われており、
解答が難しかったと考えられます。
<第8編:賃貸不動産経営管理士>
「賃貸不動産経営管理士の役割」から1問出題された他、5問免除のうち1問について、コンプ
ライアンス等が出題されました。いずれも確実に正解したい問題であったと言えます。