「論理的思考力」とは? 幼児期・小学生別の取り組みでロジカルシンキングを鍛える4つの方法
「論理的思考力(ロジカルシンキング)」という言葉を聞いたことがありますか?
最近よく目にしたり、耳にする言葉だと思います。
でも、実際には具体的にどんな力のことをいうのか、また、子供に「論理的思考力」を身につけさせるには、どんなことをしたらいいの?と疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「論理的思考力」を鍛えるためには、ある程度の知識が身についていることが前提なので、5~6歳、小学生向けの内容になりますが、今回は、「思考力」と幅を広げて、幼児期から考える基礎を身につける取り組みについてご紹介します。
目次
1.「論理的思考力(ロジカルシンキング)」とは?
2.子供の論理的思考力を鍛える4つの方法
3.【幼児向け】すべての考える力の基礎!「10の基礎概念」とは?
4.【幼児向け】知育系のおもちゃで”考える力”を育てよう!
5.【5~6歳、小学生向け】「論理的思考力」へ結びつけるためには?
6.【5~6歳、小学生向け】家族のディスカッションで積極的に意見交換の場を!
7.【4~6歳、小学生向け】タブレット学習で楽しく取り組む!
8.まとめ
1.「論理的思考力(ロジカルシンキング)」とは?
「論理的思考力」とは、ごく簡単に説明すると、「物事を筋道を立てて考えて理解する問題解決力」のことです。
「ロジカルシンキング」といわれることもあります。
ただ、これだけ聞いても、具体的にはどんな力なのか、わかりにくいですよね。
国立教育政策研究所では、〈論理的に思考する過程での活動〉として、6つの項目を挙げています。
①規則、定義、条件等を理解し適用する
②必要な情報を抽出し、分析する
③趣旨や主張を把握し、評価する
④事象の関係性について洞察する
⑤仮説を立て、検証する
⑥議論や論証の構造を判断する
この時点で、「論理的思考力」はかなり複合的な能力であることがわかります。
自己主張ができたとしても、事実に基づいていなかったり、論点からズレてしまっていては、能力があるとはいえません。
テーマを正確に捉えて、客観的に物事の本質を把握し、明確な根拠を元に解決策を導き出し、さらに相手を納得させられる説明ができるところまで求められます。
ここまでの説明だけでも、とても難しく感じますよね。
どうやって子供たちに身につけさせたらいいの?とますます不安に思われてしまうかもしれません。
しかし、紐解いていけば、幼児期に大切なことは1つだけ!
それは、自分で考える力を育てることです。
小さいころから自分で考えるクセをつけておくことが大切なのです。
失敗すると面倒だから・・・
時間がかかるから・・・
大人がやった方が楽だから・・・
などと言って、親が手を出したり、代わりにやってあげたり、子供が質問することに対して、すぐに答えを教えてしまうと、お子さまは自分の頭で考えたり、試行錯誤したりする機会を失ってしまいます。
「自分の頭で考えること」=「思考力」
幼児期はそれをテーマにして、おうちでできることから始めていきましょう。
2.子供の論理的思考力を鍛える4つの方法
では、具体的にどんなことから始めるとよいのでしょうか?
「思考力」を伸ばすための、思考の深さは語彙の多さに比例するともいわれています。
百の言葉で考えることと、三百の言葉で考えること、どちらがより深い思考になるかは明らかですよね。
つまり、考える力を伸ばすためにはまず、「頭の中で考えていることを言葉に変換できる力」を身につけておく必要があります。
幼児期は特に、「論理的思考力を一気に伸ばそう」とするのではなく、それ以前に思考の源となる土台づくりが不可欠なのです。
焦らず、じっくり取り組んでいくことで、ロジカルシンキングは確実に身についていきます。
ここからは、ご家庭でも取り組める論理的思考力を鍛える4つの方法(3.~6.)についてご紹介いたします。
幼児期のうちから適切なステップを踏んで、楽しく鍛えていきましょう。
3.【幼児向け】すべての考える力の基礎!「10の基礎概念」とは?
幼児の間に身につけておくべき10の概念があります。
七田式では、それを「10の基礎概念」と言っています。
①色
②形
③大小
④数
⑤量
⑥空間認識
⑦比較
⑧順序
⑨時
⑩お金
これらが身についていないと、そもそも人とコミュニケーションを取ることすら難しい、とても大切なものばかりです。
「ピンク色のボールを取って」
「一番大きいのをあげるね」
「〇時に△階のお店の前で会おう」
私たちは意識せずとも、このような指示を出したり、誰かからの指示に従ったりすることができますが、それは10の基礎概念がしっかり身についているからです。
幼児期は、特にこの10の基礎概念を教えることで、コミュニケーションの幅が広がりますし、知識を得たことで、自分で考えることができるようになります。
それぞれの内容と取り組みのポイントを簡単に説明しましょう。
①色
色の基本は、赤・青・黄の三原色です。
「何色?」と聞いて、「赤」と答えられることを目指します。
まずは、カラーボールなど身近なものを使って、「これは〇色だよ」と、それぞれの色と名前を教えてあげましょう。
生後半年くらいすれば、徐々に色も見えるようになりますから、1歳前からでも始められます。
少しずつ色を増やして、「赤・青・黄・緑・橙・紫・紺・水色・桃色・茶色・白・黒」と段階的にわかるようにしていきましょう。
覚えたかどうかをチェックするときのポイントは、「〇色はどっち?」と二択から選ばせること!
まだ言葉を話せなくても、指差しなら確認できます。
あまり正解数にこだわらなくてもいいので、クイズのような気持ちで遊んでみましょう。
②形
形の基本は、丸・三角・四角です。
色と同じような要領で、「これは丸」「これは三角」と一つひとつの形と名前を教えてあげましょう。
形も徐々に難易度を上げて、ハート、星、長四角、ひし形、だ円形、五角形、十字形など、いろいろな形があることを教えてあげましょう。
チェックするときも、色と同じように、二択や三択から始めましょう。
色も形もある程度で覚えて完璧になったら、「赤いハートはどれ?」「緑の三角はどれ?」というように、色と形を合体させた選択肢を入れた問題を出して、難易度を上げてみましょう。
③大小
大小の基本は、大きい・小さいです。
「こっちが大きいね」「こっちは小さいね」と、おもちゃや人形などを使って、大きいと小さいを教えてあげましょう。
大小には、応用がいくつかあります。
大きい・小さいを理解できるようになったら、レベルアップしてみましょう。
まず一つ目は、「中くらい」です。
2つのものを比べるときには、大小の二つしかありませんが、そこへのもう一つのものが加わると、さっきまで大きかったもの(小さかったもの)が、中くらいの大きさに変わったりします。
二つ目は、「何番目に大きい(小さい)?」です。
ものが3つになったら、「いちばん大きい」「2番目に小さい」といった考え方ができるようになります。
三つ目は、実際の物の大きさです。
イラストでは、ライオンとゾウが同じ大きさで描かれていても、
実際の大きさは全く違います。
実物がどれくらいの大きさなのかは、絵本やテレビ、写真などで理解することはなかなか難しいものです。
実際に動物園に出かけて、自分の目で本物を見ることが、お子さまにとっては何よりの学びになります。
④数
数の基本は、1~10までの数が数えられることです。
普段から、お子さまと一緒に数を数える習慣をつけましょう。
数のポイントは二つ!
まず一つ目は、数字の形がわかるようになること。
「3=サン」「8=ハチ」と、数字の形を見て読めるようにしましょう。
二つ目は、実数がわかるようになること。
実数とは、実際のものの数のことです。
「★★=2」「★★★★★★=6」などのように、
実際のものを見て数を数え、それと数字の形を一致させることができるようになることを
目指しましょう。
⑤量
量の基本は、多い・少ないです。
大小と同じように、多い・少ない・中くらいを教えてあげましょう。
量の応用編は二つ!
まず一つ目は単位です。
「g」「L」「cm」など、さまざまなものを表す単位を教えてあげましょう。
重さを表すものだけでも、「mg・g・kg・t」などと種類があります。
対象物の重さを表すとき、4つのうちどれが適切かも教えてあげましょう。
二つ目は実際に体験すること。
新しい砂糖や塩の袋を持たせて、「1kgってこれくらい重さだよ」とか、料理をするときに、「小さじ1杯は5mL(cc)だよ」と、実際に見たり持ったりして体験することで、単位を身近に感じることができますよ。
⑥空間認識
空間認識の基本は、上下・左右・前後・内外・遠近です。
指示の中でよく出てくるものばかりなので、特に左右は難しいですが、何度も繰り返し教えて、すぐにわかるようになることを目指しましょう。
「ベッドの上に置いて」「右の〇〇を取って」「外に出して」など、意識的に使うようにしてみましょう。
⑦比較
比較の基本は、長短・高低・強弱・明暗など、反対の関係を教えることです。
実際のものを見せながら教えるのがいちばんわかりやすいと思いますので、身近にあるものを使ったり、やって見せたりして、反対の関係にあるものを教えてあげましょう。
反対語はたくさんあるので、「高いの反対は?」「寒いの反対は?」などのクイズを出して、反対の関係が正しく結びつけられるようになることを目指しましょう。
⑧順序
順序の基本は、前から〇番目、右から〇番目などの位置関係です。
人形やミニチュア、ミニカーなど同じようなものをいくつか縦横に並べて、「上から4番目は?」「左から2番目は?」などと聞いて、指定されたものがわかるようにしましょう。
それができるようになったら難易度を上げて、「上から〇番目、右から〇番目」と上下と左右が混ざった座標もわかるようにしていきましょう。
知育系のプリントではおなじみの問題ですが、しっかり理解できるようになるためには、これもやはり実際に見て触って理解させることが大切です。
みかんを食べる前に並べたり、格子状のロッカーなどがあれば、お子さまが自分で考えられるような声かけをしてみてください。
⑨時
時は文字通り、時計が読めるようになることです。
小学校入学までに、〇時△分が読めるようになることを目指しましょう。
それまでは、〇時ちょうど、〇時半から始めます。
時計の針を正確に読むことよりも、
時計を見て行動することに重点を置いて、
「〇時になったら」「〇時までに」を守って行動できるようにしましょう。
時計を見る習慣が身についていると、本格的に取り組み始めたときに、スムーズに入れます。
時計は5分おき、10分おきなど、特別な数え方をするので、焦らず繰り返し教えてあげましょう。
⑩お金
最後のお金は、それぞれの硬貨、紙幣がわかることが基本ですが、それ以外にも、組み合わせて支払いができること、正確にお釣りや両替の計算ができることも含まれます。
キャッシュレス時代になっても、現金を全く使わないことは不可能です。
お金について学んでおくことで、お金に対する価値観も育まれます。
何も知らない子供にとっては、1,000円も10,000円も同じただの紙です。
ですが、大人になれば、10,000円は1,000円札10枚分の価値があることを知っています。
それは、お金に対する価値観が育っているからですよね。
そうした価値観は、お金のことをちゃんと知り、買い物をしてお金のやりとりをする中で自然と育ちます。
キャッシュレスでしか支払いをしていないと、そうした価値観を育てるのは難しくなります。
最初は、めちゃくちゃな計算のお買い物ごっこでかまいせん。
お金のやりとりをすること、馴染みのお店で支払いをさせてあげることなどを通して、お金の計算ができるようにしていきましょう。
以上が、10の基礎概念の基本です。
どれも、生活の中で学ぶことができるものばかりですが、おうちの方の意識次第で、お子さまの学びになるかどうかが決まります。
将来の「思考力」を育てるには、まずはこの基本からです。
全てを同時にではなく、お子さまの年齢に合わせて、できることから始めましょう。
4.【幼児向け】知育系のおもちゃで”考える力”を育てよう!
パズルやつみき、ブロックなどは、子供の考える力を育むために、とても良い教材です。
さまざまな知育玩具が販売されていますから、年齢やお子さまの興味がありそうなものを探して、積極的に遊ばせてあげましょう。
おうちの方に気を付けていただきたいことは、一つだけ!
それは、手も口も出しすぎないことです。
正解にたどり着くことも大切ですが、その過程で、自分の頭の中でどうしたらよいかを考える時間が最も大切です。
最初は上手くできなくて当然です。
そのとき、やり方を教えてあげる必要はありますが、その後も手や口を出しすぎると、自分で考えることを放棄して、早く完成させたい気持ちが大きくなってしまいます。
たとえ時間がかかっても、じっくりと付き合って、自分の力でできたという達成感を得られるように手助けをしてあげてください。
つみきやブロックなどは、パズルと違って正解がありません。
自分が思い描いた通りに作るにはどうすればよいかを考えるだけでも、
「宙に浮かせることはできないんだな」「片方が重くなると倒れてしまうんだ」など、できることとできないことを見つけられるようになりますよね。
「それならどうしたらいいだろう?」と、試行錯誤することが学びにつながるのです。
将棋、囲碁、オセロ、トランプなど、世代を超えて一緒にできるもの、反対に新しいボードゲームなど、子供たちの”考える力”を育てるものは意外とたくさんあります。
「思考力」=「勉強」と結びつけるのではなく、
そうした知育玩具も上手に使って、柔らか頭を育てたいですね。
5.【5~6歳、小学生向け】「論理的思考力」へ結びつけるためには?
ここからは、5~6歳、小学生向けのお子さまへおすすめの取り組みをご紹介します。
「論理的思考力」は、自分の中で問題解決して完結するものではありません。
自分で考えたことを他者に説明し、納得してもらうことまでが求められます。
そのためには、”考える力”だけでなく、”伝える力”を育てることも大切です。
そこでご紹介するのが、「作文」です。
「作文」は、まさに自分の考えを他者に伝えるための1つの方法です。
どのような文章を書けば、相手に正確に伝えられるのか、5~6歳になったら、簡単な作文にも挑戦してみましょう。
では、良い作文とは一体どんな作文なのでしょうか?
考え方はたくさんあるでしょうが、七田式ではその一つとして、
「読者がその情景をありありと思い浮かべることができる作文」が良い作文だと考えています。
例えば、パターンAとB、二つの文章を見比べてみましょう。
パターンA
「昨日、お父さんと公園に行きました。たくさん遊んで楽しかったです。また行きたいです。」
パターンB
「昨日の夕方、お父さんと川の近くの公園に行きました。最初にブランコに乗って、お父さんに背中を押してもらいました。その後、砂場で大きな山を作りました。たくさん遊んで楽しかったです。今度はお母さんも一緒に行って、みんなで鬼ごっこをしたいです。」
パターンBは、Aに比べて詳しく書かれているので、何をしたのかがよくわかりますよね。
作文はまだ簡単な内容が多いですが、小論文ともなると、いかに相手を納得させられるかが重要です。
これは、大きくなれば自然と書けるようになるものではなく、小さいころからの積み重ねによるものです。
七田式では、作文を書くときに『ダ・ヴィンチ・マップ』を使って、一つのテーマから多角的に物事を考えるトレーニングをしています。
また、作文の中に、色、形、音、数、思ったことなどのエッセンスを加えると、他の人とはひと味違った、表情豊かな、とても素敵な作文が仕上がります。
小学生になるころには、「人に伝える」ことも意識して、作文トレーニングをしてみてはいかがでしょうか?
6.【5~6歳、小学生向け】家族のディスカッションで積極的に意見交換の場を!
他者に伝える方法はもう一つあります。
それは、スピーチです。
日本人は、海外の人に比べてスピーチが苦手な人が多い傾向にあります。
あまり経験を積んでこなかったからでしょう。
小学生になったら、親子の間でディスカッションする時間を取ってみてください。
スピーチはある程度考えをまとめて話さなければなりませんが、ディスカッションであれば、話し合いの中で自分の考えがまとまってきたり、他の人の意見を聞くことで新たな発見が得られます。
ディスカッションと聞くと、難しく思われるかもしれませんが、テーマは何でもいいのです。
「犬と猫ではどちらが好き?」
「夏と冬はではどちらが好き?」など、
身近で考えやすいテーマから始めてみましょう。
大事なのは、テーマが何かということではなく、自分の考えをわかってもらうための客観的な理由を考えることです。
どうすれば、多くの人に自分の考えをわかってもらえて、同意を得たり、納得してもらうことができるのか、それを考えるクセをつけることがポイントです。
少し慣れてくれば、そのときのニュースなどの時事ネタや、「勉強はした方がいいか」「海外には行くべきか」など、大きなテーマでじっくり話し合うのもいいでしょう。
最初は上手くできなくても、
「お父さんはこう思うけど、〇〇くんはどう思う?」
「そう思うのはどうしてかな?理由を教えて」
「〇〇ちゃんはそう考えているんだね。じゃあ、別の立場に立ってみたらどうなるかな?」
など、少しずつ会話の中で意見を引き出しながら進めてみましょう。
家族の中で、自分の考えを伝えることに慣れておくと、学校など発表の場面で役に立ちます。
何より、物事を多角的に考えるトレーニングになるので、今後のさまざまな場面で間違いなく活かされます。
親子のコミュニケーションのひとつとしても、ぜひ取り入れてみてください。
7.【4~6歳、小学生向け】タブレット学習で楽しく取り組む!
タブレット学習は、音と映像を使うことで、子供たちの興味・関心を引き出し、楽しく取り組ませることができます。
特に空間認識力の問題などは、プリント教材では表すことのできない、奥行きや立体的な表現をすることができ、とても効果的に取り組むことができます。
また、楽しく取り組むことで、継続的な学習を促すことができるため、学習習慣を作ることができます。
七田式教材の中にもタブレットを用いた学習教材『七田式デジタル学習プログラム ~ with LOGIQ LABO ~』があります。
8.まとめ
いかがでしたか?
今回は、「論理的思考力」を幅広く捉えて、幼児期から育てる「思考力」から、小学生に取り組んでいただきたい「論理的思考力」を鍛える取り組みについてご紹介しました。
「論理的思考力」は一朝一夕に身につくことではなく、自分の頭で考える、多角的に物事を捉える、他者に正確に伝えるなど、さまざまな力が必要です。
幼児期からできることから始めて、お子さまの考える力を伸ばしていきましょう。
=参考文献=
教育課程部会 言語能力の向上に関する特別チーム,「思考力・判断力・表現力等」についての整理のイメージ,平成27年10月22日,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/056/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/10/29/1363262_11.pdf(2023/11/20)
Sony Global Education,論理的思考力とは?身につけるために実践すべき3つのこと,https://www.koov.io/column/1265(2023/11/20)