適正在庫とは、適切な在庫管理のもと、欠品による機会損失や余剰在庫がなく適切な在庫数を保った状態を指します。適正在庫は取扱商品や業界によって異なるため、自社に見合った在庫数を算出する必要があります。
本記事では、適正在庫の概要を紹介した上で、その計算方法や適正在庫を保つ方法を紹介します。
在庫管理の担当者はぜひ参考にしてください。
目次
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1 適正在庫とは
適正在庫とは、在庫管理が適切にできており、余剰在庫や欠品などが発生していない状態のことです。在庫を多く抱えると保管効率や在庫回転率が下がってしまい、余計な管理コストが発生して利益が上がりにくくなります。一方、在庫が少ないと急な注文に対応できず、機会損失が発生してしまう恐れもあります。
適正在庫の基準が明確になっていると在庫管理を効率良く行えるため、コストが最適化されて利益を最大化できるようになります。
2 適正在庫を算出するための計算方法
適正在庫を計算することで、発注すべき在庫数がわかり適切なタイミングで発注ができるため、正しく算出することが重要です。
適正在庫を算出するための計算方法には以下の4つがあります。
- 安全在庫とサイクル在庫から計算
- 需要数から計算
- 在庫回転率と在庫回転日数から計算
- 交叉比率から計算
それぞれの計算方法を詳しく紹介していきます。
安全在庫とサイクル在庫から計算
計算式:適正在庫 = 安全在庫 + サイクル在庫安全在庫とサイクル在庫から計算する方法は、もっとも使われる基本の計算式であり、計算方法の概要は以下になります。
名称 | 内容 |
---|---|
安全在庫 | 変動する需要を考慮し、通常必要な在庫に加えて最低限確保しておく在庫 |
サイクル在庫 | 発注と発注の間に消費される在庫数の半分 |
安全在庫は、欠品を防ぐために保有しておくべき在庫数の下限を決める指標であり、在庫の過剰や欠品がない適切な量を指す適正在庫とは異なるため、この違いを理解したうえで算出する必要があります。
安全在庫・サイクル在庫ともに基準はありますが、季節変動やトレンドの影響などによる予測が必要です。もっとも使われる計算式であり計算がしやすい一方、予測の難易度が高く、属人化しやすいというデメリットがあります。
予測に加え、一定期間の需要をデータとして蓄積しておく必要があります。需要が安定していないと正しいデータが取れず、正確な数値を算出できない可能性もあるため注意しましょう。
需要数から計算
計算式:適正在庫 = 一定期間の需要数 + 安全在庫数
店舗を始めとした現場で多く使われているのが、需要数から適正在庫を算出する方法です。この計算方法は、適正在庫が算出しやすく在庫切れしにくい一方、予想に反して売上が落ちると余剰在庫になりやすいというデメリットがあります。
1週間などの決まった期間における需要数に、欠品が発生した際に対処するための安全在庫を足した数が適正在庫数となります。この計算によって適正在庫を算出する際には、前年度以前の需要数や直近数ヶ月の売上などのデータ収集が必要です。需要の平均を算出した上で適正在庫の算出をしますが、市場の動きも考慮する必要があります。
在庫回転率と在庫回転日数から計算
一定期間で在庫がどのくらい入出庫するかを示す在庫回転率と、入出庫にかかる日数を把握するための在庫回転日数から適正在庫を算出する方法です。
計算式:在庫回転率 = 年間又は月間の売上原価 ÷ 平均在庫金額計算式:在庫回転日数 = 日数 ÷ 在庫回転率
商品によって在庫回転率は変わるため、商品別に算出する必要があり、在庫回転率が高い商品は需要が高く、よく売れていることがわかります。
在庫回転日数が短いと短期間で売上をあげられるていることがわかります。つまり、在庫回転率が高く、在庫回転日数が短いほど在庫が適正であるといえます。
会社全体として適正在庫が明確にしやすい一方、業界や会社規模で平均値が異なり、明確な基準がなく計算式が難しい点がデメリットです。
交叉比率から計算
計算式:交叉比率 = 在庫回転率 × 粗利益率
商品への在庫投資がどれだけの粗利益をあげているかを見る指標である交叉比率から、適正在庫を算出する方法です。この交叉比率の数値が高いほど利益を出しやすい商品となります。
交叉比率から適正在庫の金額を計算する場合は、以下の手順で行います。
②適正在庫金額 = 売上目標 ÷ 在庫回転率
まずは目標とする在庫回転率を把握することが必要です。目標にする在庫回転率を算出したら、適正在庫の金額を把握できます。
交叉比率からの計算は、小売業界でよく使われる手法であり、利益を出しやすい商品を明確化できる一方、計算方法が複雑というデメリットがあります。
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3 適正在庫を計算する際の注意点
適正在庫を計算する際には以下の2点に注意しましょう。
- 1年間の平均在庫を計算する
- 定期的に適正在庫を計算し直す
1年間の平均在庫を計算する
適正在庫は需要数や在庫数から計算しますが、1ヶ月〜数ヶ月などの短期間ではなく、1年以上の長期間で計算しましょう。
在庫は季節やトレンドの影響により、1年を通じて大きく変動することもあり、数ヶ月程度の集計期間では変動を考慮できない恐れがあります。正しい平均在庫を把握するためにも、長期間で計算し、変動も考慮したデータを蓄積しましょう。
定期的に適正在庫を計算し直す
適正在庫を定めたら一定期間は運用し、算出した適正在庫が正しいか検証しましょう。運用した結果、余剰在庫や欠品が発生してしまう場合は、適正在庫を見直す必要があります。
問題が発生しなかったとしても需要は毎年変動するため、何年も同じ適正在庫で運用し続けていると値のズレが発生します。また、会社の方針変更や、取扱商品が変更したタイミングは適正在庫を見直す良いきっかけになります。適正在庫は同じ数値を基準に長期間運用せず、定期的に算出して最適化していきましょう。
4 適正在庫を維持する方法
適正在庫の計算方法を知り、注意点に気を付けていても、適正在庫を維持し続けることは簡単ではありません。適正在庫を維持し続ける方法は複数ありますが、ここではおすすめの4つの方法を紹介していきます。
- 発注点の管理を徹底する
- 会社全体で適正在庫を設定する
- リードタイムを短縮する
- 需要予測の精度を上げる
発注点の管理を徹底する
発注点とは発注をかけるタイミングのことを指します。発注点が曖昧になっていると適正在庫が安定しないため注意が必要です。適正在庫を算出した際に、発注点を明確にして徹底的に管理すると、余剰在庫や欠品を未然に防ぐことが可能です。
また、発注には以下の通り定期発注方式と定量発注方式の2通りの方法があるため、自社に適した発注方式を選択しましょう。
発注方式 | 概要 |
---|---|
定期発注方式 | 毎月1日など決まった日程で毎回発注数を計算して発注する方法。柔軟に発注量を決めることができる一方、毎回計算する手間がかかる。在庫回転率が高いメイン商材の発注に使われることが多い。 |
定量発注方式 | 在庫数が発注点を下回った際に発注する方法。発注タイミングが毎回異なるので手間がかかる一方、発注点が管理されていれば、発注量が一定になるメリットがある。需要が一定であり、売上が安定している商品に使われることが多い。 |
適正在庫を保つには、発注点の管理を徹底し、用途にあわせて2通りの発注方式を使い分けることがおすすめです。
会社全体で適正在庫を設定する
会社規模にもよりますが、複数部門を保有している企業の場合は、部門ごとに適正在庫に対する考え方が異なる場合があります。
それぞれの部門が抱えているリスクを考慮し、全社共通の基準を設定することで、適正在庫を維持しやすくなります。
リードタイムを短縮する
在庫管理に関わるリードタイムには以下の3種類があり、それぞれを短縮することで、適正在庫を維持する方法があります。
名称 | 内容 |
---|---|
発注リードタイム | 発注から納品されるまでに必要な日数 |
製造リードタイム | 着手から生産完了までに必要な日数 |
出荷リードタイム | 出荷から消費者に届くまでに必要な日数 |
これらのリードタイムを短縮すると、機会損失を減らし在庫管理にかかるコストを抑えられることに加え、抱える在庫数を減らせることから適正在庫を維持しやすくなります。
3種類のリードタイムの中でも、特に製造リードタイムを短縮すると適正在庫を維持しやすくなります。製造リードタイムを短くすることによって、欠品時の対処がスムーズとなり、機会損失を起こさないために在庫を多く抱える必要がなくなるため、適正在庫の維持が容易になります。
一方発注リードタイムと出荷リードタイムは外部の影響もあり、簡単に短縮できない企業も少なくありません。自社で改善しやすい部分である製造リードタイムの短縮に力を入れ、適正在庫を維持しやすい環境を作りましょう。
需要予測の精度を上げる
適正在庫を維持する手段の1つとして、需要予測の精度を上げる方法があります。そのためには、通年の適正在庫を把握することに加え、消費者の動向や直近のトレンドなどの分析が必要です。
人力で予測している場合、精度を100%にするのは難しいですが、システムの導入で予測精度を向上できます。システムにより需要の分析が属人的ではなくなり、経験に依存しなくとも精度の高い分析が可能です。現状、需要予測の精度が低かったり、ベテランの経験に依存していたりする場合は、システムの導入をおすすめします。
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5 まとめ:在庫管理のアウトソーシングを検討してみませんか
適正在庫とは、適切な在庫管理のもと、欠品による機会損失や余剰在庫がなく適切な在庫数を保った状態を指します。適正在庫を保つことで、余計なコスト発生のリスクを減らすことができます。
適正在庫を保つためには、正しく算出するだけでなく、維持する工夫もしなければなりません。業務過多や人手不足などにより、適正在庫を保つための設備投資やリソースを割けない企業も少なくありません。自社で完結することが難しい場合は、在庫管理のプロにアウトソーシングを検討してみませんか?
当社スクロール360は、実店舗・EC通販における在庫の一括管理を始めとした在庫管理に対応いたします。適正在庫に関するお悩みの際には、お気軽にご相談ください。
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