発達障害グレーゾーンの部下たち
あなたの職場にモヤッとする人はいませんか?もしかしたら発達障害グレーゾーンかもしれません。
発達障害に関する情報は多いですが、職場にいる彼らと共に仕事をすることについては、必ずしも正確な情報が広がっているとは言えません。本書のテーマである「グレーゾーン」は、発達障害の傾向がありながら、その診断が付いていない人たちです。なおさら正確な情報は、みなさんに伝わっていないのではないでしょうか。
グレーゾーンには、発達障害の人とは少し違った特性があります。
筆者はカウンセラーやアドバイザーとして、これまで行政機関・民間企業・病院などで、約1万人の悩みを聴いてきました。その中には、グレーゾーンの人たち、さらにその上司や部下に当たる人たちもたくさんいました。
グレーゾーンの部下を持つ上司が、部下の言動に振り回され、管理能力がないと評価されて悩んでいる。グレーゾーンの上司を持った部下が、上司の指示がコロコロ変わり、ストレスで会社に行くことが嫌になっている――最近では、職場でのこんなケースに対する相談が増えてきました。
本書は、主にグレーゾーンの部下を持った人に向けて書いていますが、グレーゾーンの上司を持ったときの対応法についても書いています。部下に関する相談は以前からたくさんありましたが、上司に関する相談は、国会議員や首長などのパワハラ報道をきっかけに増えてきた印象があります。
発達障害グレーゾーンは、社会に出てから発覚するケースが多く、職場のサポートには課題が多く残されています。本書は、発達障害グレーゾーンの特性から、彼らとの関わり方まで、職場で起こりうる事例をもとに分かりやすく解説しています。一方で、グレーゾーンの人たちが持つ特性をいかすことも組織全体の成長のチャンスにつながります。第6章では、組織としてできることについて具体例を挙げてご紹介しています。
違和感を抱く部下や上司を持った人、職場のストレスマネジメントに関わる人の必読の一冊です!
はじめに
第1章「診断名」がつかないグレーゾーンの人たち
発達障害グレーゾーンとはなにか
・「定型発達」と「発達障害」
・発達障害はグラデーション
・環境の変化によって症状が現れたAさん
職場でのサポートはどこまでできるのか
・障害者手帳がなくてもサポートは可能?
社会に出てから発覚するグレーゾーン
・就職を機に発覚するケース
・「学生時代は上手くいっていたのに……」と悩むBさん
・部署異動によって発覚するケース
・異動により症状が現れたCさん
部下がグレーゾーンかも? と思ったら
・診断名にこだわらない
・ほぼ毎回、会議に遅刻してくるDさん
・曖昧な指示が理解できないEさん
第2章 発達障害グレーゾーンの主な特徴
グレーゾーンが抱える「生きづらさ」
・「生きづらさ」の根底にあるもの
・適応障害になったFさん
特に発見が難しいASDとADHD
・発達障害とは何かを理解する
自閉スペクトラム症(ASD)
・ASDが持つ特性
・ASDの得意・不得意
注意欠如・多動症(ADHD)
・ADHDが持つ特性
・ADHDの得意・不得意
女性と発達障害グレーゾーン
・発見が遅れる女性のADHD
・不注意優位型
・ADHD(不注意優位型)が疑われるGさん
・多動性・衝動性優位型
・同性との関わりが苦手なHさん
・女性のASD
・職場での人間関係で相談にきたIさん
第3章 職場での発達障害グレーゾーン
職場で起こりうること
・社内の人間関係で起こりうること
・ASDの傾向があるJさんの場合
・ADHDの傾向があるKさんの場合
・能力の凹凸が大きいことで起こりうること
・ASDの傾向があるLさんの場合
・ADHDの傾向があるMさんの場合
・社外の人と関わるときに起こりうること
・ASDの傾向があるNさんの場合
・ADHDの傾向があるOさんの場合
・勤務態度に起こりうること
・知覚過敏があるPさんの場合
うつ病などの二次障害
・発達障害と二次障害
・なぜ二次障害を発症しやすいのか
第4章 グレーゾーンとのコミュニケーション
発達障害グレーゾーンに気づき、対応するプロセスとは(気づき編)
・疾病性と事例性について
・ミスが多く期限も守れないQさん
発達障害グレーゾーンに気づき、対応するプロセスとは(対応編)
・発達障害かどうかではなく、困りごとがあるかどうか
・改善策を考える際に留意すること
・事例性への対処のポイント
・医師の受診をするメリット
・困りごとを共有する
ハードスキルとソフトスキル、メタスキル
・求められる3つのスキル
・ハードスキルはあるがソフトスキル・メタスキルが苦手なRさん
・1人の社員にすべてのスキルを求め過ぎてはいけない
グレーゾーン社員を活かす
・発達障害は能力の凹凸
・突き抜けている人の活かし方
第5章 グレーゾーンをサポートする
サポートしていくうえで押さえるべきポイント
ポイント①ハラスメントにならない注意の仕方
・グレーゾーンの部下を持った上司の悩み
・発達障害だと決めつけることはNG
ハラスメントにならない伝え方
ポイント②モチベーションを維持してもらう褒め方
・グレーゾーンの背景にあるもの
・褒めるときは具体的に
ポイント③コミュニケーション能力を高める声掛け
・雑談が苦手な人は多い
・ASDのコミュニケーション上の悩み
・ADHDのコミュニケーション上の悩み
カウンセリングでよく聞く悩み
・グレーゾーンの人からよく受ける相談
・上司からよく受ける相談
・よくあるパターン別の指示・指導方法
上司がグレーゾーンだった場合
・上司がグレーゾーンではないかと疑う声が増えている
・パワーハラスメントの背景にあるグレーゾーン
・ASD特性のグレーゾーン上司Sさん
・ADHD特性のグレーゾーン上司Tさん
第6章 組織としてできること――サポート側の心を守る
サポート側の心が壊れることも
・つらいのは本人だけじゃない
ほかの部下の心を守る
・サポートを頼むとき任せっきりにしないためには
・グレーゾーンの部下を持つUさん
上司自身の心を守る
・よくある悩み
・共通の悩みが起こる原因
・認知行動療法と首尾一貫感覚
組織としてどう動くか
・4つのケアを押さえる
・4つの基本的なケア以外の重要なケア
・上司に相談できないVさん
ピアケアの重要性
・ピアケアサポートとは?
・ピアサポーターの役割
・ピアケア制度導入に際して気を付けること
おわりに
参考文献