知的財産で収益「ＩＰライセンス」事業　住宅業界初　シャレた店のような家が実現！？

オシャレなお店みたいな家に住みたい…。そんな夢が実現する！？　１７４店舗（うち３２店舗は海外）を展開するライフスタイルショップ大手「ニコアンド」が、ＩＰ（知的財産）ライセンスによる住宅事業に参入した。自社の知的財産を提供することでライセンス使用料を得るビジネスで、アニメやゲームのキャラクターグッズなどが代表的だが、住宅業界では初の挑戦となる。全国のハウスメーカーから加盟社を募集中だ。知的財産をどのように住まいに反映させるのか？　展示場を訪ねた。

イメージ伝えるモデルハウスで集客４倍

幕張ハウジングパーク（千葉市）の一角に、スタイリッシュな黒い三角屋根の家があった。扉を開けると日の光が差し込み、広い土間に吹き抜けのリビング、キッチンまでがひとつながりの空間だ。オークの床材と青いタイルの壁面や黒いスチールの手すりなどが調和し、温かみとクールさが融合している。

「仕切りや廊下をなくすことで、限られたスペースを広く見せている。１階と２階で話ができますし、大人数のパーティーも開けます」。住宅事業「ニコアンド　エディットハウス」を展開するアダストリア（東京都渋谷区）の好村有平シニアマネージャーが説明した。ここでの知的財産とは、商標権（ニコアンド）、意匠権（建物や内装のデザイン）、著作権（カタログなど）となる。

効率的でしゃれた空間コーディネートは、店舗運営で培ってきた「編集力」によるものだ。手が届く価格帯と遊び心が効いたインテリア、家具、衣料が３０歳前後を中心に人気のニコアンドは、平成１９年の１号店を端緒に成長を続け、今年２月発表の国内売り上げは前年比１割増の２９８億円。

旗艦店は東京・原宿にあるが、全国の大型ショッピングモールに多数出店し、津々浦々に都会の風を届けてきた。イメージターゲットは「学生時代を東京で過ごし、結婚や夫の転勤などで郊外や地方に移った３２歳女性」という。

住宅事業へは、第２次安倍政権下の異次元金融緩和などによる住宅ローンの超低金利を好機とみて、参入準備に着手。「住宅購入層の年齢が下がり、顧客層と一致してきた」と好村さん。

一昨年。住宅販売会社のリブワークとコラボして、福岡県にニコアンド監修のモデルハウスを建てたところ従来の４倍の見学客を集め、１年間で４５棟もの注文を受けた。この成功に勢いを得て今年５月、リブワーク子会社との協業で、ＩＰライセンスによる住宅事業がスタートした。

加盟社にはニコアンドが監修した仕様書が提供され、ブランド力による集客や販売促進の付加価値が見込めるという。現在、募集開始１カ月で３０社以上のハウスメーカーから申し込みがあり、商談や審査に当たっている。合意に至れば、２２０万円の加盟料プラス月額６０万５千円のライセンス使用料が発生する。

「料金は固定し、フランチャイズ方式のようなロイヤルティーは発生しません。加盟社の建築設計や価格設定の自由度も高い。ニコアンドらしいデザインは住まう方の意向で、提案から選んでいただける」。購入者には２０万円分の同店商品券が贈られ、家具やインテリアの購入に使える。

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都市部で需要が高い集合住宅のリノベーション事業への拡大も計画しているが、「それには、ブランド価値の維持が必須の課題」（好村さん）。確かに、ＩＰライセンスビジネスは人気稼業そのものだ。陳腐化すれば一気に価値を失う。

引き合いに出してすまないがニコアンド初期のＣＭに起用され、爽やかな魅力で貢献した広末涼子さんが今、極めて私的な騒動で女優生命の岐路に立たされている。イメージを売ることの強（したた）かさと儚（はかな）さを教わる、示唆に富む出来事である。（重松明子）